48、「これください」
ウニはその日、街をブラブラと歩いていた。
ユウマに、今日は訓練は休みにしましょう!と突然言われ、特にすることがないので散歩をしていたのだ。
シェラール王国の街は、ニーコン王国とほとんど同じような造りだった。さすが元一緒の国だっただけある。文化がよく似ていた。
「ふーん、ふふんふーん、ふん」
ウニは鼻歌を歌う。最近ユウマに教えてもらった歌だ。
本当は母国であるニーコン王国の称賛歌を日頃歌っていたのだが、ユウマから、反感を受ける可能性がある、と指摘され、仕方なくシェラール王国の曲を歌う羽目になった。
ウニは音楽が好きだ。本好きの人が読書をするように、運動好きの人が走るように、ウニも音楽が好きなので歌を歌う。ただそれだけのことだ。
「ふんふーん、ふんふん、、、、、ん?」
ウニは道行く人の群れの中、立ち止まった。そこには本屋がある。
「ふふん、ふんふん、ふふふーん」
ウニはなんとなく、店の中に入った。
***
扉の鈴がチリンチリンと鳴る。
「いらっしゃい」
本屋の奥にあるカウンターには、片眼鏡をかけた初老の男性が読書をしていた。
男は少し驚いたように読んでいた本から顔を上げ、片眼鏡を少し持ち上げる。
「、、、、、おやおや、こりゃまためずらしい。ここには物好きしか来ないものにねぇ。こんにちは、お嬢さん、何をお探しかな?」
ウニは、なんとなく入りました、なんて言えるはずもなく、なにか欲しい本はないか、と記憶を掘り起こす。
(そういえば、最近魔術が楽しくなくなってきた気がする)
最初のうちはそれなりに出来たので面白かったし、楽しかった。だが、最近になってあまりうまく扱えなくなってしまったのだ。
それを聞いた店主は、なにやら本棚をゴソゴソと漁った。
「なるほど、、、、、それなら、魔術に適正がないのかもしれない。だったら、、、、、ああ、あったあった」
そう言って、男は丁寧な手つきでウニに一冊の本を差し出す。
本の題名は『はじめての体術〜護身術〜』
ウニは困惑したように男の顔を見上げた。
店主はシワで彫られた顔に笑顔を浮かべ、優しく言う。
「きっと、お嬢さんには頭を使うより体を動かすほうが向いているんだね。だったら、体術が良いかもしれない。そしたら、、、、、お嬢さんの未来に、少しまけてあげよう」
ウニはその一言で買うことを決めた。
ウニはお嬢さんはお嬢さんでも、お金に厳しいお嬢さんだったのだ。




