46、世界一幸せで、世界一不幸。
ウニは風呂に入ったあと、ユウマ特製のオムライスを食べた。
その白い湯気を立てる黄金の卵は、フワッフワのトロットロで、中のケチャップライスは香ばしく、鶏肉や野菜がゴロゴロ入っていた。
簡潔に言えば、とても幸せだった。
ユウマは、明日荷物を運ぶから寝なさい、と、ウニをフカフカのベッドに追いやった。
ウニは毛布を手繰り寄せながら、亡き妹ウシェミ――ウミのことを考える。
ウミは、もうシェルム家の墓に眠っている。なんでかわからないが、ウミの葬式などの準備に追われているときは、特になにも感じなかった。すべてが終わった後、ウニは家族全員が死んだことを泣き叫んで悔やんだのだ。
今思えば、、、、、頭や体を動かしていたから、なにも思わずに済んだのかもしれない。もしその前に事実を反芻してしまっていたら、ウニはもう動けなかっただろう。
ウニは目を閉じ、意識を意図的に沈める。
瞼の裏に映るのは、ウミのガーネットのような目と、黒炭の髪。片側だけに笑窪が出来る笑顔。長い髪を両端に輪っかがついたように結び、それらを揺らしながらウニを呼ぶ、あの姿、、、、、
そのとき、ウニの頬に、不思議な温度の液体が伝った。
ウニはそこで初めて気づく。自分が知らぬまに涙を流していることに。
「、、、、、んぐっ、ひぃ、、、、、えぐぅ、、、、、んん、、、、、」
涙は止まらない。
目の奥にまるで水源があるかのように、、、、、
ウニは、ひっくひっく、と喉を鳴らしながら、締め付けられるような、なんとも言えないあの痛みが響く胸を押さえる。
そして、涙と鼻水とでぐっちゃぐちゃになった顔を更に歪めて、妹の名前を呼ぶ。
「ひぐぅ、、、、ぇ、ぅぇ、、、ん、、ぅみぃ、、、、、ウミぃ、、、、、」
その日はフワフワなオムライスを食し、夜はフカフカな毛布に包まれた幸せな1日だったが、同時に、言い表せないような孤独と虚しさと悲哀に包まれた寂しい夜だった。




