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38、“戦場の基地”襲撃事件

 戦争が終わって半年後、その日、19歳になったウニはいつものように西の塔へ向かっていた。無論、ミーアの護衛をするためだ。

 塔へ続く廊下をテクテク歩いていると、前から誰かが走って来ているのが見えた。

 目が眩むほどに輝く黄金の髪、ルビーのような真紅の瞳、白磁のように透き通った白い肌、身につけているのは、一目で高級だとわかる薄く透けた絹のドレスワンピース――間違いようもない、護衛対象のミーア姫だった。

 彼女はどこか焦った顔をしていて、ウニを見つけるととたんに、ウニ!と叫んでかけてきた。

「ミーア様!?どうしたんですか、護衛もつけずに1人で、、、、、」

「ごめんなさい。わたくしも人がいる部屋の外に出たくなかったのだけれど、ウニがとうしても心配で、、、、、!」

「わたしを、心配、、、、、?」

 慣れない運動に息を切らしていたミーアは、呼吸を整えてから薄紅の唇を開く。



「戦場の基地が――襲撃されたわ」



***



 その頃、騒ぎとなった戦場の基地では、ヘンリーを含めその場にいた戦士達が、敵を撃退していた。

「グッ!?」

(まただ!)

 そのうちの1人――テオ・サルスは、敵の強さに舌を巻いていた。

 襲撃犯は真っ黒なローブを着ていて、顔は見えない。ただ長い杖を振り回し、光の塊を飛ばしてくるのだ。

 それがどういう魔術なのかはわからないが、さきほど光が当たった建物の箇所が一瞬で灰になったので、火属性の、さらに強力な力を持つ魔術だと思う。

 ひとまずまともに食らったら一瞬であの世行きなので、テオは防御結界を張りながらどうにか回避しているところだ。

 犯人は1人ではない。同じような格好をしたやつが数人いて、それぞれが攻撃を防いでいる。

 戦士と互角並みに強い彼ら、または彼女らは、さきほど建物内に不法侵入してきた輩だった。


 それは突然のことだった。


――いつものように、訓練をしたり、読書をしたりと、各々好きなように過ごしていたときのこと。

 外が騒がしいなー、と思った次の瞬間、やつらが来た。

 隊長が、どちら様で?と警戒して近づいたとき、そのうちの1人が魔術で応戦してきたので、みんなで戦った――そして、今の状況というわけだ。


 正直なにが起こっているのかさっぱりだったので、テオ自身も混乱していた。

 光を結界で弾き、こちらからも魔術を放って応戦し、またそれの繰り返し。

 自分はそれなりに強いはずだ――なのに、相手は攻撃をスルリスルリとかわしてしまう。

 だんだん疲弊してきたそのとき、戦っていた相手が言った。



「、、、、、これじゃあ、贄が手に入らない」



 それはごくごく小さいつぶやきだったが、生まれつき耳が良いテオには聞き取ることが出来た。

(贄?、、、、、なにか儀式でもやるつもりか?そもそもこいつらの正体がわからない時点で、なにも出来やしねえ、、、、、あぁ、この場にウニがいてくれれば、、、、、)

 ウニとは、最年少の少女戦士だ。彼女は唯一体術が使える上に強いので、隙をつけて拘束できたかもしれない。だが今は護衛任務で不在だ。そのことが悔やまれた。

 自分はあとどれくらい持つだろう、、、、、そう考え始めていたとき、この場にいないはずのやつの声が聞こえてきた。


「みっなさーん!おーげんきですかーー?」


 呑気に手を振りながら現れたには、同じく長期間任務中の戦士――唯一“祈り”が使える、小柄な少年、マイク・スコールズだった。

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