32、ミューレン
※この話は流血表現があります。苦手な方はご注意ください。
そう騎士が言ったとき、ウニの後ろから、やっぱりな、という声が聞こえた。ノアだ。
ウニは勢いよく振り向き、たずねる。
「やっぱりな、ってどういうことですか?」
「薄々気づいていたんだ。密偵や、王都周辺の都市がすべて敵というのはあり得ない。なら、可能性は1つ、、、、、情報伝達の上で、何者かに侵害されたということだ。というかそもそも、なにも知らなかったとは考えづらい、、、、、王族に直接関われる者に限ってくる」
ウニはノアにだけ聞こえる声量で問う。
「それって、、、、、まさか舞踏会襲撃事件の黒幕と同一人物だったり、、、、、します?」
ノアもまた、声を潜めて返す。
「今の時点じゃなにも言えない、、、、、ただ、その可能性が高いと思う」
ウニは絶句した。
「そ、そんな、、、、、なんでそんなことを」
「わからないと言っているだろう。犯人の目的なんて、本人以外はわからない」
そのとき、また王宮の外で爆音のような音がした。
鼓膜を直接揺らす大きな音に、顔をしかめながら、一同はいっそう足を早めた。
***
外は騒乱としていた。
王宮のすぐ側に敵が迫っているわけではない。もっと言えば、王都はまだ侵攻されていない。
だが、ここからでもわかる、血生臭いにおい。騎士の戦う音。悲鳴と怒鳴り声。
シェラール王国は敵を殺めてはならないが、向こうはそんなもの知ったこっちゃない。当然のように刃を使って来るだろう。
「敵はどこまで来ている!?」
護衛の誰かが言った。
「ミューレンだ!」
ミューレンとは、王都から約1kmのところだ。“戦場の基地”がある方とは正反対にある大都市でもある。
「そんなところまで、、、、、」
「ミューレンはここから1kmだぞ!?もうそこまで来ているのか!?」
「あぁ、、、、、死にたくない!」
「敵軍の足が速すぎるよ!」
騒ぎ始める護衛たちに、騎士達は怒鳴り散らす。
「静まれ!この程度で騒ぐんじゃない!ここは軍事大国だ!そう簡単に敗れはせん!」
そう言って護衛達を諭す騎士のそばで、ウニとノアは――
「ねえねぇ、軍事大国なのに人を殺しちゃいけないって、、、、、なんか矛盾してません?」
「仕方ないだろう。500年前の王にそれが禁じられたのだから」
「あ、そっか」
――などの今更な会話を繰り広げていた。
「――我々も行くぞ!」
「「「おおぉぉぉ!」」」
「え?ぉ、おー?」
「、、、、、」
まともに話を聞いていなかった2人は、慌てて掛け声に混ざった。
そうして、ウニ達は敵に向かって出軍した。




