31、連合軍
避難状況が確認されている今は、しばらくシェルターから出ることはできない。もし戻れなくなったりしたら、さらなる混乱を招くことになるからだ。
みんなが一歩も動かない中、シェルターの扉が開き、王宮騎士団の者が数人入ってきた。
「この中にぃ!魔術の心得があるものはいるかぁ!?人手がほしい!手を上げてくれぇッ!」
王宮騎士団も500年前までは剣や斧などの武器を使っていたが、今では魔術を主に扱っている。だいだいは王国機密戦闘部隊“戦士”と同じ経緯だ。そのため、大衆の意識は『武器=魔術』に変わりつつあった。
だがウニは世にも珍しい体術を生業とする戦士だ。なので、この場合、体術を使っているわたしはどうなるのだろう、と疑問に思っていると、先に騎士団に手を上げていたノアが「お前、なにやってるんだ」と言ってきた。
「はへ?」
「はへ、じゃない。お前だって戦士だろう。戦わないでどうする」
するとノアは、「“無血の戦士”もいます!どうしましょうか!」と声を張り上げた。
「ちょ、ちょっとぉ!?わたし魔術使え――」
「おお、“無血の戦士”か!それは心強いッ、一緒に連れて来てくれ」
「わかりました!」
ノアはその勢いのまま、ウニの手をつなぎ強引にひっぱって行く。
「えぇ!?ノアァッ!?」
「黙ってろ、行くぞ」
「い、いだいって、手、、、、、」
そのままたどり着くと、騎士団の者らは「こっちへ来い」とだけ言ってシェルター頑丈な扉を開けた。
そこにはウニたちの他に、数名がいた。ほとんどが護衛として王宮に勤務していた者なのだろうその中にはエドワードもいて、 「よっ」と声をかけてきたので「よっ」とウニも返した。
そのあとは、ひたすら騎士達に続いて歩く、という行為を繰り返した。
人々はみんなフード付きローブ、またはマントを着ていたので、1人だけ制服姿のウニは異質だった。
ウニは黙って歩くというものが出来ないタチだったので、ついでに「おい!」と怒鳴るノアも巻き添えにしながら、騎士の一人に聞いてみた。
「あのー、、、、、」
「ああ?なんだ」
さっき、ウニを「心強い」と言ってくれた騎士とはまるで違う態度だ。きっと、ウニのような小娘がろくに戦えるわけがない、と思っているのだろう。それに驚きつつも、ウニは質問をやめなかった。
「さきほど、『人手が足りない』みたいなことを言ってましたが、具体的には、わたし達は何をやらされるんですか?」
「ああ?んなの簡単だ。戦だよ、戦」
ああ、やっぱり――しかしながらも言葉を続ける。
「敵軍が、攻めて来ているんですか?」
「まぁな。なんだ嬢ちゃん、ビビってんのか?」
そう言ってせせら笑う騎士に殴ってやりたくなりながらも――最近頭に血が上りやすくなった気がする――ウニはニッコリ笑って否定した。
「いいえ、違います、、、、、もしかして、その敵軍は、連合軍だったりします?」
騎士が驚いた顔をしたので、さらにウニは畳みかける。
「それは、、、、、ストオーム王国と、“東の大国”、、、、、ですか?」
騎士はなんだか恐ろしいものを見る目で、ウニを見つめた。
「じょ、嬢ちゃん、、、、よくわかったな」
「こんなの、簡単なことです。誰だってわかりますよ」
後ろから、ノアの「おい、俺が――」という声が聞こえてきたので、ウニは騎士からは見えない角度で脇を殴り、黙らせた。またもや後ろから呻き声が聞こえたが、無視をする。
「そうか、それは大したもんだ、、、、、」
「はい、その通りだと思います、、、、、それと、気を悪くしないでいただきたいんですが、なんで敵が王都に侵攻されるまで気づかなかったんですか?」
ウニはこの前まで“戦場の基地”にいたが、そんな話は誰からも聞かなかった。
「ヴッ」
案の定、騎士が痛いところを疲れたという風に呻く。
ウニが、答えを早く言えと言わんばかりにジィっと見つめると、騎士は観念したように言う。
「そのだな、あまり言いふらさないでほしんだが、、、、、、近隣の都市で、敵が怪しい動きをしているという通達は来ていたんだ。だがな、その間に何者から侵害があったようで、情報伝達がうまくいかなかったようなんだ」




