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30、東の大国

 けたたましい音でウニは起こされた。

 外では警報の他になにかを促す放送の声も聞こえたが、それは召使い達の走る音、悲鳴でかき消され、うまく聞き取れなかった。

 ウニは内心パニックになりながら身支度を整え、あとは髪を結ぶだけ――となったとき、外から廊下の騒ぎ声とは比にならないほどの轟音が響いた。


 なにがどうなってるわけ!?――ウニは長い髪を振り乱しながら、自らの主がいる方向へ走る。


 西の塔も、東の塔と同じようにパニック状態になっていた。

 王宮のどこも同じなのだろう。ウニは人の波をかき分けながらミーアの部屋へと急ぐ。

 そのとき、同じ護衛の騎士がウニの肩を屈強な手で掴んだ。 

「え!エドワードさん!?」

「お前、今からミーア様のところに行くつもりだろ!」

ウニは驚きに目を丸くして肩を震わせる。

「やっぱりな、、、、、ミーア様は無事だ!他の者が避難させた!」

「本当ですか!?よかった、、、、、」

 安心して胸を撫で下ろしたウニに、エドワードも微笑む。

「おう、だからお前も早く逃げろ!いくら戦士だからってこの状況をなんとかできるはずがない!」

 そう言って、人混みをかき分け去ろうとするエドワードを、ウニは、ちょっと待ってください!と呼び止めた。

「なんだ!?」

「その!今、なにが起こっているんですか!?」

 ウニの叫びに、エドワードはしばらく考える表情を見せた後、口を開く。

「今は時間がない!どうせそのうちわかる!」

 そう言って、たくましい背中は遠のいて行ってしまった。


 ウニは不安にかられながらも、言われた通りに地下シェルターへ避難した。



***



 シェルターは王族用と来客用、そして使用人用の3つがある。ウニが入ったのは言うまでもなく使用人用のものだった。

 そこは質素な部屋で、城で働く人々の約500人が入っても余裕がある広い造りだった。

 簡易台所や水道設備、毛布も大量に準備されていたので、一時避難場所といっても、数日は持ちそうだった。


 ウニはさっそく、この状況を誰かに聞こうと知人を探した。

 するとちょうど5mくらいのところにノアがいるではないか。

 シェルターは広いが、男女共同になっているため、北の塔で働くノアもここに避難していたのだろう。

 不安と恐怖に包まれた空気をかき分け、ウニは移動する。

「ねえ!ノア!」

「うぉ!、、、、、なんだ、ウニか」

「ごめんなさい。ちょっと、この状況を教えてもらいたくてですね」

「ああ、、、、、なんでも、他国に攻められたらしい」


 はへ?と素っ頓狂な声を上げるウニに、もう一度ノアは繰り返す。


「隣国のストオーム王国が、ここシェラール王国に攻めてきた」

 ストオーム王国とは、海と平野、山のすべてが揃ったいわゆる自然大国である。農業や牧畜が盛んで、よくシェラール王国とも貿易をしていた。

 だが、大陸の中では戦争にめっぽう弱く、攻めてくるわけないだろう、と高を括っていた相手でもある。

「え!ストオーム王国って、、、、、なんで攻めてきたんですか?軍事大国のシェラール王国に勝てるはずがないのに、、、、、」

「お前、忘れてるな?前に俺が、『国がパニック状態になっていたら他国が絶好の攻め時だと思うだろう』と言ったこと」

 あ。とウニは思い出す。だが、その時とは状況が違うだろう、と考え直した。

「で、でも、今、国はパニック状態ではないはず、、、、、」

「よく考えろ、舞踏会襲撃事件、そして国王のクイルが治ったと来た。前者で警備が手薄だったということがわかるし、後者で今王国は安心している――油断していると取られるだろう」

ウニは息を呑んだ。ノアは続ける。

「だが、弱小国のストオーム王国が単独で攻めてきたとは考えづらい、、、、、今回の件、その他にどこかの国が関わっているぞ」

「ま、まさか、、、、、」

二人の声が重なる。


「「東の大国」」


 東の大国――オマリア帝国は、シェラール王国に並ぶ超軍事国家で有名である。

 人々は身分に関わらず血の気が多く、犯罪率がどの国よりも高い。

 その国とストオーム王国が手を結んだ、、、、、仮定にしては恐ろしすぎる。

「そ、そそそんなまさか、、、、、ね?」

「いや、有り得る話だ。オマリアは欲が強いことで有名でもある。昔から、この国はアイツらに狙われてきた。領土拡大のためにな。だったら、隣国のストオーム王国となにか条約を結んでいてもおかしくはない」

「ヒィィィッ!」

「だが問題なのは、、、、、なぜ今まで気がつけなかったのか、だ。他国の動向は常に探っていただろうし、なにか密偵から知らせが舞い込んできたりしそうなものだが、、、、、」

 たしかにその通りだ。なぜ王都に侵攻されるまで気がつけなかったのか?

「他の地域全部が敵というのもあり得ないし、、、、、まさか情報伝達の上でなにか障害が、、、、、?」

 なにやらブツブツ呟いているノアに背を向け、ウニはついに神頼みをし始める。

 指を固く交差させ、祈るようなポーズを取り、心で願う。



(どうか、、、、、明日がありますように)

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