26、珍しき魔術について
その日のうちに、ウニとノアは王宮へ帰った。
隊長には無言で『貴族社会を生き抜くための方法』と書かれた教本を渡され、ナイラには「今度任務が被ったら一緒に頑張ろーね」と言われ、エラには「なんですぐ帰っちゃうのよおぅ!」としがみつかれたので蹴りを入れた。
休みは今日1日しかないのだ。それに、帰りに寄りたいところもあった。
「本屋?」
ノアに行き先を言うと、怪訝な顔をされた。
ウニは読書家だ。だから暇つぶしにと思って王宮に本を持っていったのだが、全て読み終わってしまったのだ。なので本屋に行こうと前々から決めていたのだ。
「わたしだって読書はするんですよ」
「以外だな。『本』って言葉すら知らないと思っていた」
ウニは頬を引きつらせながら言った。
「黙れ。腹黒野郎が」
***
歩いていると、前の方に古びた店が見えてきた。
薄汚れた看板のプレートには、『ラミス本屋』と書かれている。
ウニは迷わず扉をくぐった。それに合わせてベルがチリンチリンと鳴る。
ウニは本屋の匂いを思い切り吸い込む。古い紙、インク、糊などの独特な香りが好きだった。
「よし!さっがすぞー」
小声で言い、ウニは面白そうな本を探す。
ノアは不服そうな顔でそれを追いかけた。
――それから数十分後。ウニは一つの本に目を留めた。
腕に抱えているのは数冊の本。それら会計に持っていこうとしたときだった。
独特な色味。古びた金の装飾。そして怪しげな文字。
――正確に言えば、その珍妙なデザインよりも著者名に目がいった。
『ユウマ・カミア』
師匠の名前だった。
ウニはユウマから本を出したことは聞いている。だが本人が恥ずかしがって、題名を教えてくれなかったのだ。
純粋に興味を惹かれたウニは、背表紙に指をかけ、本棚から抜き取る。
本の題名は『珍しき魔術について』。
ウニはそれもまとめて会計に持っていった。




