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19、真犯人

 ウニがその話を聞いたのは、朝、食堂に行ったときだった。

 朝食を食べに行くと、ノアが先に来ていたので、食事を受け取った後当たり前のようにノアの前に座った。

 彼は案の定嫌そうな顔をしたが、すぐに表情をもとの無表情に戻した。

「ノア、フードはいいの?」

 今日は彼はフードを被っておらず――正確には、ローブは着ていたがフードを頭につけずに食事をしていたのだ。

「べつに、、、、、、もうバレたからな」

 そう言って不機嫌そうにグリーンピースを皿の端へ寄せる。どうやら苦手のようだ。

 ウニは反対にグリーンピースがたっぷり乗ったスプーンを口の中に突っ込みながら、ノアを見る。

 透き通った翡翠の瞳を、長いまつ毛が飾る。光を程よく反射し光る金の髪。人間離れした整った顔。

「うわぁ、、、、、人がどれだけ倒れるんだろう」

「おい、人をたちの悪い殺人道具みたいに言うな。だから嫌だったんだ。顔を明かすのは」

 食堂の人たちはうっとりするような、もしくは嫉妬で彩られた視線を向けている。言うまでもなく、ノア1人へだ。

「いやー、でもすごい美貌ですね。顔だけでもお金稼げそう」

「さっきから何なんだ、、、、、というか、お前が言うか?」

 へ?、とウニはポカンとする。

「俺に負けず劣らず、お前も化け物みたいに整ってるぞ」

 ウニは毎日鏡を見ているが、そう感じたことは一度もなかった。なので、嬉しかった。

「やったーっ!じゃあ、一生お金に困らないですね!」

「、、、、、」

 ノアは、話にならんとばかりにグリーンピース仕分け作業を再開した。

 そして、世間話でもするように呟く。



「舞踏会の襲撃犯が殺された」

「は」


 口をあんぐりと開け、間抜けな声を出す。

「朝見張りが男の牢を見たら、毒を飲ませれて死んでいたらしい」

 ウニは呆然とする。なぜ?と。

 ウニの心が読めたと言わんばかりに、ノアは言葉を続ける。

「口封じだろう」

「へ?じゃあ、真犯人がいるって、ことですか、、、、、?」

「は?どこからどう見てもそうだろう」

馬鹿にするような物言いに、ウニはイラッときた。

「なんでですか」

「平民1人じゃ出来ることじゃないからだ」

 王宮の警備も、武器の検知魔導具の場所も、舞踏会の参加者も、、、、すべてを1市民が知るのはほぼ不可能だろうと。

「じゃ、じゃあ、、、、、貴族の中に?」

「ああ。それも、かなり大物だ」

大貴族のなかに、敵がいる――そんな恐ろしいがあるだろうか。

「まだ決まったわけじゃない――だが、今回のことで王国はかなり痛手を受けた」

 『他国の者がいる中で、警備不足により事件を未然に防げなかった。』こんなの、醜聞以外の何物でもない。

「舞踏会襲撃事件の影響で、今後貿易がしづらくなるかもしれない。信用もごっそり削がれた、、、、、だが、こんなことをして誰の得になる?」

「それは、、、、、他の国々、とか?」

「シェラール王国は軍事大国だぞ?万が一攻め込まれでもしたら、ひとたまりもない。国内でもそうだ。物価は上がり、商売は滞り、旅行へ行きづらくなる。誰もが損をするだろう」

 言われてみればたしかにそうだ。では、誰がなんの目的で今回の事件を引き起こしたのか?

「それはわからない。これからの王宮騎士団の活躍を期待するしかないな」

 自分たちはあくまで護衛で、これからのことに首を突っ込むことはできない。調査をする権利もない、と。


 ウニはノアの言葉にモヤモヤしながら、ぬるくなったお茶を飲み干した。

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