17、人質
ウニはノアと別れたあと、ミーアを探してホールの中を走り回っていた。
その途中、何人かの男性が自分を誘ってきたので、ウニは、みんな馬鹿になったのかな、と本気で思っていた。
自らをレディと称していたにはうるさい走り方に、違う意味で色んな人が振り返ったのだが、これもまたウニは、みんな阿呆になったのかな、と本気で思っていた。
しばらく走ると、ミーアの薄紅のドレスが見えた。
(ミーア様だ!よかったー)
そのまま近づき、本人であることを確認してから壁際に行く。
ホッと息をついた、その時だった。
「きゃぁぁあああああ!」
あたりに響く、誰かの悲鳴。
声の主は来ていた令嬢の一人だった。
「うるせえぞ!静かにしろ!」
――そして、彼女の華奢な首に刃物を当てている男が1人。
その瞬間、和やかな雰囲気だった舞踏会は恐怖で包まれた。
「なに!?何が起こったのですか!」
「急げ!逃げろ!」
「きゃぁ!ちょっと押さないで!」
他の貴族は流されるようにホールから出ようともがく。
――その反対に、人の波とは逆の方向へ進む者が2人。
「おい!ウニ聞こえるか?」
「ぅわっ、、、、、ん?もしかしてノア!?」
「そうだ。合流するぞ」
合流したウニとノアは人質に取られている令嬢に向かって走る。
だがノアは人の波に足を取られ、転んだ。
「!?」
「えぇ、ノア!?運動神経悪!!」
「うるさい!お前が猿すぎるんだ」
ウニは呆れながら、ノアの手を取って走る。
「おわ!?は、速い!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
しばらく走ったとき、急に視界が開いた。そこにはあの刃物男と、人質に取られた女性がいた。
「いやぁ!助けて!!」
「黙れ!」
男はかなり興奮しているようだ。今にも暴れだしそうなくらい。
「おい、どうする。そんなに大事にしたくない」
今日は他国の貴族も来ている。ここまで来るにはツテが必要だし、お金もいる。それなりに名のある者たちのはずだ。
『王宮の舞踏会で殺人事件』なんてことが知れ渡ったら、シェラール王国は大打撃。もとの関係に戻るには時間がかかるだろう。
そもそも起こってる時点で結構やばいのだが、事件になるよりかはマシだ。できれば早めに令嬢を救出したい。
「ノアは何もやらなくていいですよ」
ウニは静かに言う。
「、、、、、舐めてんのか」
「違いますよ。ただ、ノアが出る幕じゃないってこと」
ただそう言い放ち、ウニは一歩前に出た。
「じゃあ、行きます」
「おいお前!動くな!こっち来んじゃねぇ!」
気づいた男が声を張り上げ、怒鳴る。
「こいつがどうなってもいい――」
、、、、ドサッ
――男が倒れた。
「大丈夫ですか?」
ノアは瞬時に声がしたほうを見る。
そこにはウニが令嬢を横抱きにして立っていた。
「ぅっ、、、、、うぅ、、、、、」
「安心してください。もう大丈夫ですよ」
男から離れられた安心感から来たのだろう。令嬢は声を殺して泣いた。
(この一瞬で、、、、、人質を助け出した、、、、、だと?)
ノアは女性に話しかけるウニに近づいた。
「、、、、、殺してないだろうな」
「もちろん!そんなことしたら国外追放か一生幽閉です。ちょっと気絶させただけですよ」
ニコニコして話すウニにノアはありえないものを見るような目で、化け物か、、、、、と呟いた。
ウニは真面目くさった顔で一言。
「わたしは“無血の戦士”なので!」




