14、舞踏会当日
舞踏会当日。会が始まる前にウニは自室でドレスを着ようと奮闘した――が、結局チャックを締めることができすに、ミーアに恥を忍んで手伝ってもらった。
ミーアはすでに支度を整えており、綺麗にまとまった黄金の髪には桃色の髪飾りが揺れている。
ドレスを着終え、次に髪の毛を整える工程に移った。
手際よく髪を形にしていく手腕に感心しつつ、ウニはものすごく居た堪れない気持ちになった。
「本当に申し訳ございません。本来わたしがやるべきことなのに、、、、、」
「気にしなくてよくってよ。私が自らしていることですから」
話している間もその手は止まらない。
「本当に慣れていらっしゃるんですね、、、、、勉強になります」
「ふふ、、、、、よし、終わったわ。どうかしら?」
鏡を見てみると、そこには別人がいた。無論ウニである。
つややかな黒髪を頭の下で団子にしてまとめ、淡い青のリボンが揺れている。
化粧を施したわけではないが、もともとの美人がさらに際立っていた。なお、ウニは容姿が優れていることに気づいていない。
「す、すごい、、、、、これがわたしかぁ、、、、、」
「うんうん。やっぱりあなたには青が似合うわね。瞳の色も相まって」
そう言ってミーアは微笑む。
「本当はもっと着飾りたいのですけれど、、、、、今回はそうはいかないですわね。今度思いっきりドレスアップしましょっ!」
最後ボソッと付け加えられた言葉に、ウニは気づかなかった。
「今日は、どんな人が来るんでしょうか、、、、、」
「そうね。縁談とかもあるでしょうし」
ウニは目を丸くする。
「え!縁談ですか!?」
「ええ、まぁ、、、、、でも嫌ですわ。だって、あなた以外はろくに話せないんですもの」
ウニは思い出した。そうだ、ミーアは人見知りだった、、、、、と。
「だから今まで婚約者がいなかったのよ。社交の場ではなんとか乗り切れても、さぁいざお見合いへとなったら最後、二度と顔を合わせてもらえなくなるわ」
「えぇ、、、、、でも、それはひどくないですか?ミーア様が人見知りとわかっているんでしょうか」
ウニの少々棘のある言い方にも、ミーアは小さく笑う。
「そうね、でも、もうわたくしも17歳。20歳までには結婚するのが王族の女の決まりです」
そう、なぜだかわからないが、王族の女性は20歳には婚姻することが定められているのだ。
それに便乗して20歳ぴったりに結婚するのは縁起が良いと誰かが言い始め、貴族に関わらず平民の中でも20歳か未満かで結婚するという謎文化が生まれている。
ウニはこの風習を心底くだらないと思っているし、誰がいつ婚姻したって個人の自由じゃね?と感じている。
だが、現実はそこまで単純じゃないらしく、今もこの“20歳以下結婚推奨法”は続いている。
「えっとーじゃあ、ミーア様以外の王族の皆様はもうすでに婚約されているんですか?」
「えぇ、そうね。それどころかポールお兄様以外は結婚しているわ」
ええ!?とウニは驚いた。また、自分もそういうのを考えなければいけないのだろうかと思う。
その時、ゴーンと一回鐘が響いた。舞踏会開始の30分前を知らせる鐘だ。
「あら、もうこんな時間、、、、、憂鬱だけど、いかないというのは流石に駄目ね。腹を括りましょう」
自分に言い聞かせるように言い部屋を出ていくミーアに続いて、ウニも部屋を出る。
一瞬チラリと部屋の窓で見た空は、どす黒い雲で覆われており、今にも雨が降りそうだった。




