13、料理人の仕返し
ウニはもじもじしながらミーアに尋ねた。
「あの、ミーア様、、、、、着てみてもよろしいでしょうか?」
ミーアは笑って答える。
「ええ、良いわよ。汚さないように気をつけて」
ウニはワクワクしながら広げ、その目を見開いた。
ドレスは半分のところで2つに割れており、キュロットのようになっていたのだ。
「ミーア様、これ、、、、、」
「ああ、あなたって、護衛よね?動きにくくては困るから、わざとスカートじゃないものにしてみたの」
ウニはすっごく嬉しくなった。そこまで気を使ってくれただなんて、、、、、と感動していると、ミーアが着方を教えてくれる。
「ほら、背中にチャックがあるでしょう?コルセットを普通は中に付けるけど、動いたとき食い込んだら大変だから、いらなくても良いようにデザインしたの」
すごい、、、、、と感心しつつ、ウニは制服を脱いでドレスに足を通す。
すぐにミーアが背中のチャックを締める。これで終わり。これならウニも簡単に着ることができる。
レースが肌にあたって少しかゆい。クルリとその場で回ると、ドレスも宙に舞った。
「ほら、こっちにいらっしゃい」
ミーアがウニを呼ぶ。その前には美しい装飾が施された姿見があった。
失礼します、と断ってから姿見の前に立つ。目の前には海色の目を大きく開いているドレス姿の少女がいた。
水色のワンピースドレスはよく似合っていた。あとは髪をまとめれば完璧だろう。
だが、髪の毛の結び方などポニーテールしか知らない。どうしよう、、、、、とウニが困っていると、ミーアが口を開いた。
「当日は、私が髪をセットして差し上げるわ。心配しないで」
ええ!?ドレスだけでも十分なのに、恐れ多すぎます!と声を荒げるも、ミーアはすでに、あの髪飾りが良いかしら、、、、、と思考に没頭していた。あの調子では、聞こえていないだろう。
ウニは、これじゃあわたしが主人みたいじゃん、、、、、と頭を抱えた。
***
「そうか」
ノアはそっけなく相槌を打つ。そんな彼に向かって、ウニはため息をついた。
「そうか、じゃないですよ。結局、髪を結ってもらうことになっちゃったんですから」
わたしの立場がわかんなくなってきたよぅ、、、、、とウニは俯く。
対してノアはどうでもいいように茶をコクリと飲んだ。
「そんな深刻にならなくても、順調じゃないか」
は?とウニは聞き返す。
「だって、それだけ信用してもらっているということだろう?普通、仲の良くないものに『髪を結ってあげる』なんて言わない」
あ、とウニは声を出す。
「確かに、言われてみれば、、、、、」
「じゃあ大丈夫だ。そのままやってもらえばいいだろう」
そう言って、またノアはカップを持ち上げる。
そんな彼を、ウニはジッと見つめた。
「、、、、、なんだ」
「いやあの、、、、、ノアも、舞踏会では礼服?みたいなのを着るんですか?」
「ああ、、、、、まぁ、準備はしている」
「え、動きにくくないんですか?」
「俺をなんだと思っている。魔術師だぞ?お前みたいに跳ねたり蹴ったり殴ったりしない」
「そっちこそわたしをなんだと思っているんですか。そんな喧嘩みたいなことしませんよ。せいぜい気絶させたり動けなくしたりするだけです」
「いや、ほとんど同じだろ」
「全然、まったく違います」
今度はウニが茶を飲む。ノアは、はぁ、とため息をついた。
「あんまり顔を出したくないんだが、、、、、やむを得ないか」
「え!ノア、ついに正体を明かすんですね!」
「そんな犯人みたいに言うな。あと声がでかい」
「すみません。でも、今まで一度も顔を見せてくれなかったじゃないですか、、、、、わぁ、なんかちょっと楽しみかも」
「どこがだ」
「えー、なんとなく」
「理由になってない。語学をもう1度学び直せ」
「ひどっ!そっちこそレディーへの言葉を学んで来てください」
「お前をレディーだと認識したことはない」
「なにをー!」
そのとき、前におっさん呼びされた料理人がお盆の角を二人の頭に当て、口論は収まった。
料理人はとても満足したような表情で、厨房の奥へ帰っていったという。




