1、無血の戦士
はじめましての方ははじめまして。森 真心です。初投稿なので、文章がヘッタクソだったり、構成がヘッタクソだったりと、至らない点がありまくりだと思いますが、どうぞ温かい目で見守ってください。よろしくお願いします。
この国では、どんな理由があっても人間を傷つけてはならない。
だから刑罰にも処刑はないし、それ自体禁じられている。
今から500年ほど前、当時の国王はそれはそれは臆病だったそうだ。
必要な争いでも、進んでやろうとはしない。人を傷つけることも法で禁じる、完全なる平和主義者だった。
なので当時は、王を支持する声が多かった。
しかし、それは思わぬ方向へと進む。ついに処刑自体が廃止されたのだ。それは、どんな犯罪を犯した者でも、生かしておくことへの意思表示でもあった。
当然、反発が起こったが、その者達はほとんどが幽閉されてしまった。
現在でも犯罪を犯す者は減るどころか増え続けている。しかし、それらを倒してはならない。
そこで王国機密戦闘部隊“戦士”は、血を流さずに犯罪者を牽制できる方法を編み出した。魔術である。
光の縄で拘束する、靴を地面から離れられなくして逃げるのを防ぐ、など、さまざまな技術を生み出し、戦士は暗躍していった。
だがある日、戦士の一人は思った。
――わたしたちがやっていることは、戦士ではない。魔術師ではないか。
そこで唯一、彼女は体術を武器とし、次々と手柄を上げていった。いつしかそれは“無血の戦士”と呼ばれ、恐れられた。
――これは“無血の戦士”、ウニ・シェルムの物語である。
***
「へ?わたしが、ですか?」
ウニはその大きな瞳をゆっくりと開閉させた。
「ああ、なぜだかわからんが、、、、、お前が選ばれた」
目の前の男―部隊長、ヘンリー・ラクアスは深いため息をついた。
ここはヘンリーの執務室。ウニは食堂で夕飯を食べたあと、彼に大事な話がある、とここへ呼びだされていたのだ。
そして、部屋に呼び出されたウニは、話の内容に拍子抜けした。
ここから北東の方にある王宮の警備兼王族の護衛を、ウニは任されたのだ。
彼女は王国機密戦闘部隊“戦士”に所属している数少ない部員である。そして、執務机に座るこの白髪交じりの髪を撫でつけた男こそが、戦士の部隊長であった。
“戦士”とはいっても、部員のほとんどが魔術を扱う、魔術師である。しかし、ただ一人、体術を武器にしている者がいた。それこそが彼女、“無血の戦士”ウニ・シェルムだ。
ここシェラール王国は約500年間戦争をしていない平和な国であるため、行う任務といえば要人の護衛か歴史がある建物の警備であった。
今回も例に漏れず、警備兼護衛の仕事なのだが、、、、、
「どうして、“無血の戦士”である私が選ばれたんですか?」
そう、問題はそこにあった。
ウニは結構な武闘派戦士である。魔術はそれなりに使えるが、体に馴染んでいるのは体術の方なので、普段使うのは後者の方であった。
その点、上品で美しいものを好む貴族では、魔術師のほうが護衛や警備などの仕事が入ってくる。王族は、その最たるものであると言えるだろう。
、、、、、ならなぜ、ウニに、王宮の警備兼王族の護衛を任されたのか?
ウニが不思議に思っていると、隊長が口を開いた。
「俺もよくは知らされていない、が、今回お前が主に護衛する王族は末のミーア姫だ。噂では、姫はシャイな性格らしい。そこで、戦士の中でも一番年が近い女のお前が選ばれた、のかもしれないな」
それを聞いてウニは、なるほど、と思った。戦士は全員で11人だ。そのうち女性はウニを含めて3人しかいない。他の二人はウニよりも年上で、どちらも現在長期間の任務中だ。それなら、納得がいく。
それから、任務開始の日付などの詳しい話をしたあと、ウニは仕事先の王宮に思いを馳せながら寮の自分の部屋へ戻った。