表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

呪いの器


「これを見て」



アリスはケージを両手で抱え込み、まるで大切な宝物を見せつけるように顔を近づける。


ケージの中では 黒い何か が蠢いていた。


それはまるで 形を持たない泥のようなもの で、粘性のある体をくねらせている。


「この子はね、“呪い” を体に蓄積して成長するのよ」


俺は無意識に後ずさる 。


「……呪い……?」


「そう、呪い。 どんな呪いかも分からない。誰がかけたのかも分からない。そんな 得体の知れないもの が、この小さな体に ギュッと詰まってるの」


アリスはフフッと笑い、含みのある表情を浮かべた。


「君の言う通り、神を倒しても、そこからまた別の神が生まれる 。しかも、神そのものを 完全に倒すことはできない 。」


「……」


「永遠のいたちごっこ ……どころの話じゃないわよね?」


アリスは指をピンと立てると、まるで 閃いたかのような仕草 を見せる。


「じゃあさ、分け身も、神自身も、まとめて全部倒してしまえばいい ってなるよね?」


「……!」


「うん、なっちゃうよね?」


アリスはにっこりと微笑み、そして、ケージを俺の方へ差し出す。


「で、これが答え」


俺は 恐る恐る 口を開く。


「……なんで、神が死ぬって確証があるんだよ……試したのかよ?」


黄金の瞳が、揺らめく。


「どうだろうね?」


一瞬、不気味な 間 が空く。



「君が本当にその答えを知りたいなら、自分で試してみればいいじゃない? 今からこれを君に与えるんだから さ」


ケージの中で おぞましい生き物 がのたうち回る。

それはまるで、生きているのに、生きているとは言い難い存在 だった。


目を離したくても、離せない。

しかし、見るほどに 吐き気を催しそうになる 。


「……」


「わざわざそんなことしなくても、アリス。その “力” をお前自身に使うことになるぞ……!」


強気で言う。

だが、それは明らかに ハッタリ だった。


アリスはその場で ピタリ と動きを止める。



静寂。


しかし、次の瞬間――


「あははははははは!」


彼女は 大きく笑い出した 。


「そんなこと言っちゃうんだ~? ふふ、あははははは! 笑っちゃう!」


肩を震わせながら、心底 楽しそう に笑う。


その笑顔は――


どこまでも “他人事” だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ