表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

闇の先で目を覚ます


俺は、吉野綱義よしの つなぎ

ごく普通の高校生だ。


別に特別なことなんて何もない。

学校に行き、適当に授業を受け、昼休みに友達と話し、放課後は寄り道することもなく家へ帰る。


そんな日常が、ずっと続くものだと思っていた。

高校を卒業して、どこかの会社に就職し、淡々と日々を過ごしていくのだろうと。


友達は多すぎず、少なすぎず。

特に親しいのは幼馴染のあいつくらいなものだが、それでも近すぎるわけでもなく、程よい距離感を保っていた。


俺の人生は、きっとそんな風に無難に進んでいく。

そう思っていた。


――あの日までは。



◇◇◇




その日は、いつもより帰りが遅くなった。


理由は特にない。

少し課外授業が長引いたのと、帰る途中でコンビニに寄っただけ。


外はすっかり暗くなり、街灯がぼんやりとオレンジ色の光を落としていた。


いつも通りの帰り道。

何の変哲もないアスファルトの道路。


俺は、ただ歩いていただけだった。


なのに――


「……え?」


ズプリ。


足元が、沈んだ。


まるで沼に足を突っ込んだような感触。


アスファルトのはずの道が、ぬるりとした何かに変わっている。



俺は慌てて足を引き上げようとしたが、まるで見えない手に掴まれたかのように、逆に強く引き込まれていく。


「なんだこれ……ふざけんな!」


暗がりの中、足元を凝視するが、黒い何かがうごめいているだけで、正体は分からない。


どんどん沈む。

膝まで埋まり、次第に腰まで飲み込まれる。


焦燥が胸を締め付ける中、不意に背後が明るくなった。


――トラックのライトだ!


「助けてくれ!」


思わず声を上げようとした、その時。


そのトラックは、一向にスピードを緩める気配がなかった。


むしろ、加速しているようにさえ見える。


「嘘だろ……?」


突きつけられる現実に、背筋が凍る。

眩い光が迫る。



轟音が耳をつんざく。


そして――


俺の体は、完全に闇に飲み込まれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ