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書房店主のはしりがき

名前も知らない子

作者: 翠雫みれい

「ねえねえ、一緒にあそぼうよ」

 街はずれの公園。ぼく達が遊んでいると、入口の方から声が掛けられた。そちらを向けば男の子が立っており、ぼく達のほうを見てにこにこと微笑んでいる。「知ってる子?」と誰かが尋ねる声がするが、みんな一様に首を傾げるばかりだ。

「僕も入れてよ、一緒にあそびたいんだ」

 おねがい、と手を合わせる様子に、周りのみんなと顔を見合わせる。「どうする?」「どうしよう……」少しの間、そんなひそひそという声が行き交って、毎日公園にいる、リーダーみたいなやつが頷いた。

「ああ、いいぜ」

 それを合図に、みんなが口々に「遊ぼう!」「なにして遊ぶ?」「鬼ごっこがいい!」と言い、男の子を迎え入れる。彼は嬉しそうに笑ってぼく達の方へ駆けてきた。それからぼく達は鬼ごっこをして飯事をして、かくれんぼをして、ブランコや滑り台といった遊具で遊んだ。そうして気が付いたら、帰る時間の放送が鳴って、ひとり、またひとりと公園を後にしていく。最後に残ったのはぼくとあの男の子だった。

 「僕もそろそろ帰らなきゃ。またね!」

 「うん、またね!」

公園を出た歩道で手を振って、逆方向に走っていく。夕焼け色に染まった街に、互いの名前も知らない2つの影だけが伸びていた。


お世話になっております。

雅楽代書房の翠雫です。


名前も知らないあの子と遊んだ記憶を、ふと思い出しました。

僕がまだ幼いころは公園でたまたま居合わせた名前も知らない誰かと一緒にあそぶこともたまにありましたが、最近はどうなのでしょう。

僕が出会った名前も知らないあの子が本当は化け狐のような妖だったら面白いのになと、本人に知られたら怒られてしまいそうなことをいまだに考えます。


雅楽代書房

店主 翠雫みれい

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