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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第三章 狼との出会い
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人形惨歌3

「動くなよ。下手に動いてもうて気いついたとにゃすでにあの世に行ってもうた後、なんてこともあるかも知らんからな」


「うん」


あのカナという少女の力は未知数。先ほど何の所作もなく糸を寸断されてしまった時は、正直を言うと少し焦った。けれど、あの男の指示無しでは満足に動くことの出来ない、いわばあの男にとっての操り人形だ。


それにあたしの近くに張っていた糸は斬られていなかった。いや、あの少女の周辺以外の糸というべきか。


仮にあたしを殺す気があり、距離の離れたあたしを殺すことの出来る能力を持っていたのであれば、すでにあたしは殺されているだろう。しないということは出来ないととっていい。あの場所から近づけさせなければ問題はない。


まだ見えていない部分はあるけれど、この場はそれで通す。


それに一番の問題は――


「なあ、もう一度。最後の忠告ちゅーわけやけども。たぶん自分じゃ俺には勝てへんよ。ええの?一歩踏み出してもうたら後には引けへんよ」


「ふん」


あたしは時矢の言葉に無視を決め込み、他の指で隠しながら小指を動かす。それと同時に二体の人形たちが時矢に特攻する。もちろん、そんなあからさまな攻撃で倒せるとは思っていない。


あたしは二体の人形で姿を隠し、時矢の斜め後ろの死角を位置取る。糸を応用した高速移動だ。


あの女の周辺の糸は全て斬り落とされてしまっているが、その反対側に仕掛けた糸は機能している。駆け引きはいらない。相手が攻撃態勢を取る前に首を落とす。いつもの服じゃないからそこまで殺傷力のある武器は無いが、人一人の首を落とす程度なら問題ない。


あたしは残っている糸を操り、首を跳ね飛ばすように巧みに操作する。


「ん」


「っち、面倒くさいな」


あの少女の刀がブレるのが視えた。今度は見逃さなかった。何が起きたのか眼で追うことこそできなかったが、時矢の首を刈るために動かした糸を全て斬り落としたのだろう。


人形たちはあたしの身を守る様に前方に移動する。


カナとの距離は目測約十二メートルぐらいだろうか。近くはないが、離れているともいえない距離だ。仮に異能(アクト)であれば開示をすることで、ここまで攻撃範囲を広げる事が出来るかもしれない。いや、開示をしないということは出来ないということか?


(あのカナって子は近づかない限りはそこまで脅威じゃない。けど)


カナは自発的に動きはしないものの、時矢の身に危険が迫るとそれから守る様に動く。こうなると彼女から潰さないと延々と後手を押し付けられることになる。今は時矢も目立った動きを見せていないが、同時に掛かられると厄介この上ない。


こうなると糸は機能しない。人形たちに抑えを任せてその隙に本人を直接叩くというやり方も難しい。なぜなら今見せてしまったからだ。


あたしの戦い方は悔しいがこの男の言った通りマジシャンと同じ。種も仕掛けも分らせないまま戦闘不能まで追い込む。


知性の無い魔獣(マインドイーター)相手ならどうとでもなるが、理解し学ぶ人間の前では厳しい展開になる。ひとまずは二人の距離を離さない事には詰めることが出来ないだろう。


なら、これしかない。


あたしは位置的に時矢たちの背後となった、残りの二体の人形たちを使って奇襲を取ることにする。


「七宮」


時矢に襲い掛かろうとした二体の人形を、カナはその大きすぎる太刀の鞘で防ぐ。


(気づかれてたってワケか。けれど)


目の前に手をかざそうとした。その瞬間。


「歯ぁ食いしばれや」


その声に気が付いたときは、時矢はあたしの目の前で足を振りかぶっていた。


「っぐ」


ブルドーザーが突っ込むような重い蹴りに後方の大木まで吹っ飛ばされる。幸いどこから攻撃が来てもいいように糸の防陣を張っていたので痛くはないが、衝撃で脳が揺さぶられる。これを何度も繰り返し食らったらさすがに不味い。


(種無しの瞬間移動って相変わらず何でもありって感じよね)


二体の人形があたしを守る様に目の前を固めるため動く。しかし、あそこまでの移動技術の前に後手に回る人形では何の役にも立たないだろう。あたしが指示を出して組み立てなければこのまま負ける。


「ん?死んでへんな。内臓破裂もんやったと思うんやけど」


「ったく、早漏よね。せっかちな男って嫌われるって教わらなかった?」


「別に死んでまうんやから嫌われてもええやん?」


そう時矢が言った時には既にあたしの頭の上に踵が下りようとしていた。理外の壁(アドベントフィールド)を張る時間もない。理外の壁(アドベントフィールド)を張られることを恐れて矢継ぎ早に攻撃を繰り出しているのだろう。動かなければ殺される。頭を直接蹴られればあたしの負けは確実だ。


グチュリ


耳を塞ぎたくなるような不快な音を立てて脳漿がぶちまけられる。その衝撃はすさまじく、ゾンビですら再生不可能なほどに中身ごとあたしを飛び散らせていた。

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