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Connect☆Planet -コネクトプラネット-  作者: 二乃まど
第三章 狼との出会い
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タルトの思惑

「タルトちゃん。それ、あたしが牢屋であった女の子だよ」


夜深は千寿流が眠っている間に起きたことを簡単にだが説明した。ただ一点、爆発で体の半分以上が焼け爛れてしまったことだけは伏せることにした。それを伝えたところで何にもならないからだ。シャルもその辺りの気は遣えるようで大人しく黙ったままだった。


少女が爆発して千寿流が気を失っていたこと。


上空に飛び回っていた無数の飛竜が襲ってきたこと。


タルトレット・アニエスと名乗る人形師が現れ、窮地を救ってくれたこと。


「うぇ、ごめん、みんな。あたしが眠ってる間そんな大変なことになってたんだね」


申し訳なさそうにしゅんとする千寿流。


「でもなんでタルトちゃんがこんなところにいたのかな?あたしたちはクラマちゃんがいるかもしれないって話で来たけど、こんな何にもないところ普通は来たいと思わないよね?」


至極真っ当な疑問だった。確かに大口(おーく)には何もない。タクちゃんが言っていた通り、魔獣(マインドイーター)が住処としていただけだ。滅んでしまった都には人も、施設も、目的をもって訪れる理由が見当たらない。


いや、もしかして廃都巡りが趣味ということはないだろうか。テレビの特集でこういった荒廃的な街並みを好き好んで各地を旅する人がいたという話を見たことがある。


タルトちゃんは人形師。もしかして、それで行く先々で人形劇を披露しながら、趣味である廃都巡りを楽しんでいたというのであれば納得が行く。人形劇であれば一か所で仕事をする必要もないだろうから。


千寿流は阿呆だった。


「そんなわけないでしょ。いつ頃の話よそれ。この魔獣(マインドイーター)が彼処にいる危険な世界で廃都巡りなんて馬鹿げたことをやってる人なんているわけないって。それに目的についてはさっき言ったでしょ。ここに立ち寄ったのは興味本位、偶然らしいって」


「ありゃ、そだっけ?」


まあ、実際のところ偶然か必然か、それは定かじゃない。彼女は偶々と言っていた。それを信じるのならそれでこの話は終わり。彼女が変人だったというだけだ。


けど、彼女の千寿流ちゃんを見る眼差しは少し気になった。仮に様子を見ていたというなら必然ということになるだろうけど、それだと少し引っかかる。


必然であるのならば千寿流ちゃんが瀕死になるまでのんびりと傍観を決め込むだろうか。結局姿を見せるのであれば初めから危険な綱渡りをする必要性がない。そもそも僕が治癒の異能(アクト)を使えるのを知っていないといけないという前提になる。


彼女の表情は変わらなかった。けど、僕の治癒の能力(アクト)について知っているようには見えなかった。


じゃあ、偶然か。果たしてそんなことがあり得るのだろうか。もしかして千寿流ちゃんが適当に言った廃都巡りという、馬鹿げた趣味が当たっているとでもいうのだろうか。もし万が一当たっていたら今度何か美味しい物でも食べさせてあげようかな。


(彼女はこの子を助けなくてはいけない理由があった。それだけしか今は分からないけど、この予想は恐らく当たっているだろう)


とりあえず判っていることはこれだけ。それに今はそんなことよりも。


「クラマちゃん。だっけ?初めまして、僕は鬼竜院夜深。鬼に竜に寺院。それに夜が深まるで夜深。よろしくね?」


「はい、よろしくお願いします!夜深様!私、クラマと申します。お嬢様の侍女を務めさせていただいています」


「へえ、礼儀正しい子だね。最近自己紹介が滑りがちだから、こうしてまともに挨拶してくれるだけでも嬉しいよ」


このクラマという少女には聞かないといけないことがある。僕の口から聞いてもいいけど、ここはそうだな、シャルちゃんに任せたほうが後々もめないで済むかな?


「クラマ タクミのこと ころそうとしたって ほんと?」


直球だった。シャルは言葉をオブラートどころか何も介さずそのままぶつける。二人の関係性を垣間見るそんな近すぎる距離感。


「タクミ様。薄っすらとだけ記憶があります。周りには何もない砂の大地。なぜか私はそんな場所にいました。目的も分からず、ただ、何かに向かって」


クラマは見ず知らずの人間を殺そうとしていた。という事実に特に驚くこともなく喋り始める。誰にも頼ることができず、ここまで一人耐え抜いてきたその奇妙な物語を。

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