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忍リクルート  作者: 枝久
十一、

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79/90

戻りし者、帰らぬ者①

 稽古場の集会に、その者達は姿を現した。


 ざっざっ……じゃらん……


「はぁ……はぁ……」

「……うぐっ」


 体力の限界か……忍び足は叶わずに愛用の鎖の音を鳴らしてしまった忍びと、腹を抑えて足を引き摺る忍びの二名が、暗闇から出づる。

(まと)った装束からは血がぽたぽたと(したた)っていた。


 ざっ……


 構えていた忍び達が皆、二人に道を開けるように両側へと開き、里に戻りし両名を花道で迎え入れるような形となった。

皆、里長より先に言葉を掛けることが(はばか)られ、ただ無言で傷だらけの仲間を見守る。


鏑矢(かぶらや)! 鎖紅(さく)! 里長の御前(ごぜん)だ、その場で止まれ!」

「よい、よい……おい、他の亥ノ組はどうした?」


 里長が制し、二人に話を促す。

満身創痍(まんしんそうい)で帰還したのは、里長の指示で任務に出ていた亥ノ組の五名のうちの二名。

がくっと、膝を大地に付き、二人は荒い息を上げながら、言葉を発する。


「も、申し上げます! 亥ノ組の井蔵、右近、左近は……敵衆に捕縛される寸前で……じ、自害致しました……」

「っ⁉︎」


 ざわっ!


 皆の不安が波紋のように伝播(でんぱ)し、その波は瞬く間に大きくなる。


 ざりっ……


 鏑矢の言葉で、群衆の中、一人の忍びがその場に崩れ落ちた。

だが、両膝が地面に落ちる寸前で周囲の者達が拾い、彼女を両脇から支える。

花鳥衆長の芽吹……目は(うつろ)い、完全に血の気の失せた顔は、重力に抗うことなく下を向いていた。


 ぎりっ……


 もう一人、己の拳を強く握り締めている青年は……丑ノ組の千鳥だ。

亥ノ組の右近、左近の両名は彼の実の兄達。

まだ未熟な弟とその仲間達を里に留まらせたくて、随分と手厳しい扱いを繰り返していた。


「そうか……」


 報告に対し、そう一言だけ呟き……里長が沈黙した。

頭の中で言葉を選ぶ為、眉間を指でつまみ、目を閉じている。




 それは……刹那……




 ひゅんっ……じゃらんっ‼︎


 突如、鎖紅の手から鎖分銅(くさりふんどう)が目にも止まらぬ速さで爆ぜ、一直線に獲物の元へと飛び出した!


くいっ! かくんっ!


 伸び切る手前で、反対方向に力を掛けられた鎖は急直角に曲がり、分銅は(あやかし)のように対象を捉え、ぐるぐるとその身体を絡め取る‼︎


「えっ?」

「なっ⁉︎」

「鎖紅っ⁉︎ 貴様、な、何をっ⁉︎」


 驚きの声が上がるのと、鎖の反対に繋がれていた鎌が、重なる樹丸と泉丸の身体を貫いたのが……同時だった。


 ざしゅっ‼︎‼︎


「ぐがっ……」

「ごぼぉっ……」


 小さな二人の口からは苦悶の言葉と血が吐き出され、ぼたぼたと大地が紅く染まる。


「はっ!」


 じゃらんっ!


 いつの間にか彼等の傍らに立った鏑矢が、その突き刺さった鎌の()にそっと手を掛け……それを一気に動かし、二人の身体を縦に引き裂いた‼︎


 ぶしゅぅっ‼︎‼︎


「「ぎゃぁーーっ‼︎」」


 小さな身体に似合わぬ縦穴が空いた二人の胸からは、多量の鮮血が空に向かい勢いよく吹き出した!


「八郷城の若殿……泉寿……ここに討ち取ったり……」


 じゃらん……


 鎖に巻かれたままの二人を粗雑に掴んだまま、鎖紅と鏑矢は、にやりと笑った。

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