第二十九話 その空っぽの瞳の中に
申し訳ありません
本来の二十九話と三十話を取り違えてしまいました
こちらが本来の二十九話になります
年度が変わった。新しい学校、新しいクラスメイト。案の定、わたしは馴染めずにいた。
女子の話に合わせようとするのは難しいし、男子とは目を合わせただけで気持ち悪くなる。
朝の通学路では挨拶をしあう女子生徒に思わず手を振りそうになって、自分にはそんな友達がいないと気づく。
保健室で食事を摂っていると、どこからか笑いあう声が聞こえてきて、寂しさに身を裂かれた。
帰り道のグラウンドでは、野球部のピッチャーが目にも止まらぬ速さで球を投げている。きっとわたしが投げても相手に届くかどうかわからないだろう。
どれもこれも、わたしにはできないものだった。
わたしには……どんなに願っても得られないものだった。
下駄箱を開けると、そこには恋文が残されていて。どうやったら相手を怒らせないように断れるだろうと考えているうちに、教室でぼうっと時間を費やしていた。
そんな時に、ある男子が教室に入ってきた。
知らない男子と二人きりはやだなぁと、急いで帰り支度を整えていると、その子と目があった。
その人の瞳には、わたしが写っていた。
そのクラスメイトの瞳には。
まるで石ころを見ているかのような。
全ての事柄に興味がない瞳には。
わたしが、ただ何者でもないわたしが写っていた。
たぶん、彼は誰に対してもそうなんだと思う。
後から聞いた話だと、昔辛い目にあったみたいで。
他人のことをなんとも思えないくらいに精神が摩耗していたのかもしれない。
けれど、それがわたしにとっては救いだった。
彼にしてみれば、迷惑な話だろうけども。
浅海くんと話していると、本当にわたしに興味がないことがわかって、気が楽になった。
浅海と遊んでいると、まるで自分にもはじめての友達ができたようで、小躍りしたい気分になった。
祐介に優しくされると、あの空っぽの瞳の中に自分だけが写り込んでいる気がして、心から嬉しくなった。
態度では嫌がりつつも、結局はわたしをいつも受け入れてくれる。優しくて、無愛想な人。
祐介になら、わたしの、いや……
ぼくの、ありのままを受け止めてもらえる。
ぼくの……友達になってくれる。
でも。
最初はそれで良かったけれど……今はそれだけじゃ物足りない。
ぼくは、もっと、祐介と──。




