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アイルのお友達

 ランサムが驚いた出来事とは。


 それはアイルに色々な経験をさせてあげようと、ランサムがコース料理を模した料理を用意した時の話だった。森での生活は単調だ。少しでも楽しいことをしようと思ってのことだった。料理自体は助手のオーランドが来るとき以外は保存食を基本食べており、このコース料理というのもお皿だけそれらしく用意し、中身は普段のシリアルや果物などだったという。そして貴族や王族が使うようなものに似せた複数のナイフとフォークを用意しただけの簡易コース料理。


「貴族がご飯を食べているところを見たことはあるかい? それをまねして、自分が貴族だと思ってご飯を食べてごらん。そうだね。これは貴族ごっこだ」


 ランサムの話に時折うなずくアイルにそう言い聞かせる。そして食べ始めたアイルの様子を見てランサムは驚いたという。






「完璧だったんだ。マナーが。それだけじゃない。所作も洗練されていた。あれは半端な貴族にはできない動きだ」


 それを聞いたオーランドは冷や汗をかく。なぜ突然マナーができたのかはわからない。スプーンの持ち方すら怪しかったはずだ。しかし長年王族として育っていたランサムの目は確かだ。アイルは()()()()()()貴族の子である可能性が出てきた。


(貴族の生まれでマナーを身に着けていたけれど、親が亡くなったショックで幼児退行していたのか? それともその後孤児となったことで粗野な習慣を身に着けてしまっていたとか?)


 いろいろな推測をするオーランド。


 そもそもアイルは親や親戚は亡くなっていると言っていた。一族全てが亡くなった貴族というのはここ数年聞いたことがない。ということは、他国の出なのだろうか。もしくはアイルが何者かによって嘘を教えられて、親や親戚が死んでしまったのだと思い込んでいる可能性も出てきた。どちらにせよきな臭い話ではある。


「さらに」


 オーランドが猛烈に頭を回転させて様々な場合を想定している横で、ランサムがさらに話を続ける。


「アイルはダンスも完璧だ。そして、本も読める」


 マナー。ダンス。さらに本。本と言っても単純なものではない。この研究小屋にあるのは変態的な研究者であるランサムが厳選して王宮から持ち出した高度な専門書。


「その本のうちいくつかは読んだことがあると言っていた。何冊かは一般公開されていない限定図書だったよ」


「……」


 オーランドは驚きのあまり返事をすることもできなかった。


「貴族の学園でも通えると思う。どの道オーリーが保護者として連れて行くんだから、僕と関与してるとわかってしまうだろ。その時点で話題にならないわけがない。それに加えてアイルのあの容姿だよ。平民の学校に入れたらそれこそ騒ぎになってしまう。カーネリアン学園には幸い僕が通っていたころの先生がまだ何人かいるから、何かあったときの融通が利く。護衛も入れやすい」


(何者なんだ? あの子は……)


 オーランドはそう思いながらも、ランサムの言葉にうなずくしかなかった。確かに普通の学校に入れていていい子では無いだろう。王族のランサムが保護者になるには障害が多かったので、名目上オーランドが保護者ということになっている。しかし、今更ながらにとんでもないモノを引き受けてしまったのではないかとオーランドは思い始めていた。そもそも翼竜の巣の中で見つかっている時点でおかしい。


「さすがに僕も何かおかしいなと思ったよ。でも学校に行ったらすぐにお友達ができると思うよ。だって、いつの間にか僕の影とも仲良くなっていたからね」


 おまけのようにそう言うランサムの言葉にこそオーランドはこの日一番の衝撃を覚えた。『影』。それは王族と一部貴族のみに付き従うとされる裏家業の一族。王家のつまはじき者であるランサムにも未だ影は付き従っていた。ランサムが一人森での暮らしを許されていたのも彼らの存在があったからというのも大きな理由だ。


 影は王家をその名の通り陰から支える。そんな彼らをオーランドですらほとんど見たことはなかった。ランサムを支えると誓った日にオーランドのその忠誠に嘘はないか確かめるために一度影の一人と会ったきりだ。


 その影と仲がいい、と。ランサムはそう言った。


 もうオーランドは問わずにはいられなかった。無心で木の実の殻を取っているこの可愛らしい少女に。


「君は何者なんだ?」


 その問いにアイルは何も答えず、無心で木の実の殻を取り続けていた。

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