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「太陽の赤ちゃん」

作者: ごんべん
掲載日:2023/04/07

眠る君をおぶって、坂を駆けあがる。

夕陽が照りつけて、汗が止まない。

てっぺんに着くなり君をベンチに座らせて、

芝生に倒れこむ。

陽が沈む。空にはいくつかすじ雲、(むら)雲が

黄昏色に浮かぶばかり。

向かいの山から滝の音が届く。


空から暖色が失せ、浅い紺が雲を塗る。

とんと眠りこむ君を、このまま寝かせてあげたいな

と思いながらも、肩を揺すって起こす。

「朝だよ。」

細くうめいて瞼が(ひら)く。

その長い欠伸一つで、僕の息は詰まる。

「もうじき、さ。」僕が言うと、

君は眼をぱちくりさせて、ふぅと微笑む。

「座りなよ。」君が言う。

言われなくとも、僕が予約したファーストクラスは

ここです。


手をつないで辺りを見回していると、

東の夜空に彗星が現れる。

西の夜空に流星が現れる。

握りあう手と手が力む。

君の頭をくしゃっと撫でると、

君の口元が(ほころ)ぶ。

僕の口元も綻ぶ。

彗星と流星は引き合うように落ちてゆき、

君の頭と僕の頭は引き合うように傾いてゆき、

一点で交わる。

光が点から放射する。光景を目に焼きつける。

10秒もしない内に光は闇に飲まれたが、

確かにそれは輝いた。

「太陽の赤ちゃん見たい。」僕が言う。

おもむろに、君が抱きつく。

君の頭を、ゆっくり、ゆっくり撫でる。

大丈夫。きっと涼しい夜風が涙を乾かしてくれる。

眼をつむりきこえるのは、滝の音と、風の囁きと、

あまりにも愛しい嗚咽。

(6/25 土)

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