第一章 蛇龍降臨 第一話〜第八話
第一話 ある朝の竜
ある朝、変な夢を見た。
その竜は俺に「貴様を選んだ。」とだけ伝えて
消えた。
それからは何もない。今までの平凡な日常。
(っていうかそんなフラグ立てといて何も無いのかよ。)
俺は大河 隆慈
正直期待していた。俺もみんなみたいな能力が手に入るのかと。、、、。
この世界ではほとんどの人間が異能力を持っている。似通った能力があってもかぶることはない。性格が十人十色なのとおなじようにだ。無能力者もいるが遅くとも成人になるまでは能力が現れるようになる。だけど
残念だが俺は何も発現しない。
医者に聞いても 「気長にまとうよ」と言われるだけだ。
「ウィ!」
「おっす↓↓」
「なんだよ。テンション低いな?いい加減能力のことは気にするなって。」
「いや昨日夢みてさ。変な竜に選ばれたっぽいんだけどその後なんも起きないんだよな。」
「なにそれすげ~じゃん。そんだけフラグ立てて何も能力が発現しないお前の強運には言葉もないぜ」
「うるせぇよ。」
(まぁもう諦めてる感がすごいあるんだけど)
川染 敦樹は俺の友達で【空中浮遊】(エアロレビテーション)の持ち主だ。
「お前は何でエアロレビテーションがあるのにわざわざ地面に足つけて歩いてんだ?」
「隆慈と絡むのがいいんだよ。」
「おーい。 おは!」
米崎 勇斗 【高速移動】(クイックムーブ)の持ち主だ。みんな知ってる瞬間移動の下位互換だがそれでも素早く動ける。らしい。、、、。
「お前はいいよナ。学校まで一瞬だもんな。」
「お前らがちんたら歩いて学校行ってるのを観察したいからちょっとゆっくり移動してるぜ。」
「いいよなお前ら。ホント。、、、。」
夏空の下、微かな風が吹き抜ける校門には大きな巨木に青々と葉が茂っていた。
第二話 失われたもの
俺は幼い頃に大事な親友が一人いた。そいつは俺といつもどうり遊んでいた。
「隆ちゃんは大人になったら絶対すっごい能力が目覚めるよ!!もうちょっとのしんぼうだよ!」
「でもクラスの中で異能を持ってないの俺だけだぜ?お前にも抜かれちまってるし。」
「何言ってるの?僕の能力、【支配者への抵抗】(アンチルーラー)なんてただの時間系能力メタじゃん。時間系能力持ってるのって他にいる?」
「まぁそうだけど。」
そんな話をして帰り道で別れたその後だった。
「次のニュースです。中之町の路地で歩行者の少年が気絶した状態で発見されました。少年は複数ヶ所にあざがあり^_^B-);)}:‑)(^^):-$(TT)」
突如として悲劇が起こると心が無になる感覚を齢僅かで知ってしまった。
それから幾年経ってもうその事件も周囲が忘れている
今でも俺は時々思い出す。
第三話 予兆
「はぁやっと終わった。」「疲れたー。帰って寝よう。」
授業が終わっていつものメンツとつるんで帰路につく。「今日、マック行かね?」「シェイク飲みてぇ」こんな平和な日々が続くといつかこの瞬間が失われることの恐怖を覚える。ふと空を仰ぐと電光掲示板にニュースが映る。突然寒気がする。嫌な予感がする。
「夕方のニュースです。路地で30代の男性が気絶した状態で発見されました。体には複数のあざが散見され:-)B-):,-)^_^;):-D:-P」
「おいこれって、」
「あぁ。あれ?隆慈は。、、、。」
俺は走り出していた。何者にも構わず、
「おいっ、アブねぇだろ!!」
(何か聞こえるが関係ない。)
俺はとにかくあそこに向かわなければならない。あの町へ。中之町へ。
相変わらず人通りが少ない。電灯も壊れかけで暗く、道幅も狭い。
「相変わらず辛気臭えな。」
(警察が遠目に見えたのでこの近くが事件現場なのだろう。)
だが、そこに一つの影が現れた。
第四話 謎の剣士
「お前こんなところで何してる?」
(誰だコイツ?剣を持ってる。何かの能力者か?
)
「お前か?巷で騒ぎを起こしているクソ野郎は?」
「何言ってんのかしらねぇがお前の方がやばそうだ。」
「何だ?俺に喧嘩売ってんのか?伝説の魔剣フラガラッハを代々継承し、聖剣士の称号を魔術教会から賜ったこの俺に向かって?笑えるな。」
「何ごちゃごちゃ言ってんだ。さっきからわけわかんないこと言ってんじゃねぇぞ。クソッタレ!!」
「それはそうと、さっきからお前の背後に黒い何かが見える。それの正体を教えてもらおうか?」
(黒い何かってなんだ?)
「何勘違いしてんのかしらねぇが、俺はただの無能力者だ。とっとと失せろ。」
「しらばっくれるつもりか?ならその正体を暴くまでお前をぶっ潰して擦り切れにするしかねぇよなぁあああ?」
するとアイツの鞘から剣が勝手に抜き出てくる。
(何だアレは?あれはまるで、、魔剣?)
「我が魂の魔剣 フラガラッハよ。ヤツを切り裂け!!!」その掛け声とともに空を切り裂き、その剣が俺に向かって勢いよく襲いかかってきた。
(やっべ、、)ぎりぎりで右に避ける。その衝撃で倒れてしまう。
さらに宙を一周回った剣が雷鳴の如く音を立て、さらに加速してやってくる。今度は身をよじってなんとか避ける。だが微かに傷が入り、額に汗と血が流れる。
大地が揺れる。剣が地面にめり込んでいた。
「戻れ、フラガラッハ!」
すると地面に刺さった剣が揺れだし、アイツの右手へと戻っていった。
(アレは命令一つで勝手に攻撃する剣なのか?)
「すばしっこいやつだ。だが今度はこの俺自ら相手してやる!!」
すると掛け声を響かせて猛進してきた。
その瞬間だった。
「これはいいタイミングだ漁夫の利とはまさにこれだなぁあ。」
第五話 【魂の吸収】(ソウルアブソープ)
「ったくよぉさっきの奴はみっともたらしく抗いやがって、クソ時間取られたじゃねぇか。」
「何だお前?突然出てきてゴタゴタ抜かしてんじゃねぇぞ。こっちは今取り込み中なんだ。こいつ(フラガラッハ)であれをぶっ潰すんだからなぁ」
「おいおい仲間外れは寂しいぜ。俺も混ぜてくれよぉ。俺が混ざったほうがもっと楽しいことして盛り上がれるぜぇ!!!クソッタレがぁ!!!!」
「何だお前は、能力者か?」
「ん?フラガラッハにヒュドラか?こいつはいい。おい、ヒュドラ!!まずはお前からだ。じっとしてりゃぁ、楽に逝かせてやるぜ!!!
ヒュドラってのは誰のことだ?」
「おめえのことに決まってんだろ?頭わいてんじゃねぇのか?」
(ヒュドラ?俺のことか?でも俺は無能力者のハズ。でもさっきの黒い影って何のことだ?)
「おい、おれは能力者なのか?」
「舐めてんのか?変な質問ばっか しやがって、もういい。とっとと消えろぉ!!」
「なっ」
謎の男が手を伸ばして迫ってくる。すると、突然毒気がその男を襲った。その男はヒラリと躱す。「クソ。」
(何だ今の衝撃は?)あたりを見回すと黒い巨大なシルエットが現れる。
そして徐々にそのベールが剥がれていく。
するとその闇からアパート一つ分くらいの大きさの竜が姿を現した。
我の名は【不死蛇龍】(ヒュドラ)だ。そうその龍は名のった。
「お前、俺の異能と関係あるのか?」
「お前自分が取り憑かれてるって知らなかったのか?哀れなもんだなぁ。益々もったいねぇ。俺がそのちから貰っといてやるよ。俺は触れた者の意識と能力をすべて吸収できる。
つまりさぁ。俺に触れられたら意識がぶっ飛んで一生病院でおねんねってわけ、そこんとこ分かってもらえたかなぁ?クズ虫共!!!」
「意識を吸収できる?おい。、、、?それ、、、は、、、一体、どういう、ことだ?」
「分かんねぇのか?植物状態になるんだよ。オメェみてぇなちっこい頭でも理解できたか?あん?」
「俺の頭が小さいかなんてどうでもいいだろ!!
おまぇかぁああ?アンチルーラーを襲ったのは
ぁあ?」
「あぁ?何吠えてんだ??
アンチルーラーだ?、、、。
おぉおお、そんなやつもいたな、時間系能力をすべて無力化するってやつ。もしかしてお前?
そいつの知り合いかなんか?そりゃぁ悪かったな。だけどよぉ、どっちみちお前もアッチに逝くんだからぁ、二人一緒におねんねのほうが好都合ってもんだろ?」
「おいどういうことだ事件の犯人はヒュドラじゃないのか?」
「まぁ犯人はそこの吠えている負け犬じゃない。この【魂の吸収】(ソウルアブソープ)様だ。」
じゃぁお前はいった、、、「ぉおおおおぉおおおおおぉおおおおぉおおおおお」
「おいおいおっせぇなぁそれじゃ百年経ってもたどり着けないぜ。」
いつの間にか背後に回り込まれ拳を捻り上げられる。
「いっただろ?俺が吸収しているスキルは複数ある。俺には【瞬間移動】(テレポーテーション)や 【見通す目】(フォレキャストアイ) 【増強筋肉】(マッスルゲイン)がある。つまりなぁ、このままお前の腕をもってくこともできるってわけよぉ。残念だったな。クズ虫。」
「くっくそぉおおおおおおぉおおおおぉおおおおおおおおお」
その声に呼応するかのように竜が慟哭しソウルアブソープに向けて毒気を吹きかけた。
「くっそ。やっぱあの蛇龍はめんどくさいな。」
(今のもこいつが助けてくれたのか?)
俺は背後に佇む蛇龍を見返る。
それは何も言わない。
だが
獣の如く野太い声で返す。
すると今まで一本だった首が九本になるように背後の闇から首が現れ、あっという間にその全貌があきらかになった。此れが俺の異能【不死蛇龍】(ヒュドラ)。、、、。これなら勝てる。
「何盛り上がってんだ三下。今能力を知ったボンクラに俺が負けるわけねぇだろぉが!!」
「それはどうかな?やってみなけりゃわからねぇだろうが??」
蛇龍の一匹がソウルアブソープに襲いかかる。それをマッスルゲインで強化された拳で受け止める。そして怯んだすきにもう一匹が襲いかかる。流石に二匹は相手にできず、後ろに下がって距離をとった。そしてどこからか飛んできた剣が空を切ってソウルアブソープ の服を切り裂いた。
「さっきは悪かったな。くそったれ。俺も助太刀するぜ。
まぁ安心しろ。このフラガラッハがあれば一騎当千だからよぉ。」
第六話 反撃
「現在ソウルアブソープは戦闘中です。」
「それでいい。彼には能力を蓄えさせればいい。気長に待とうじゃないか?」
「分かりました。総裁。それで現在覚醒させたヒュドラの方は?」
「それにかんしてはどちらでもよい。好きにさせなさい。ただ、【伝説の獣】(レジェンドビースト)が彼をえらんだのは興味深い。しかし、統帥は自身のアップグレードと完全なる支配を目指しておられる。そのためには、アンチルーラーの特性は研究しつくしたほうがいいだろう。ただ現在進行系で進んでいる彼の復讐の物語は我々の段階で完結させねばなるまい。」
「統帥ではなく総裁の段階ということですか。」
「その通りだ。引き続き監視を続けてくれ。」
「了解。」
「お前は何回人の人生を奪ってきた?
何度その人の周りを悲しませてきた?
なんでお前のようなやつに俺の大切なものをうばわれなくちゃいけなかったんだ。
何とか言ってみろよ!!」
「いちいちうるせぇんだよボンクラ。お前だけ賢しら(さかしら)に不幸を見せびらかしてんじゃねぇぞ。お前らは大人しく、家に引きこもってビクビク震えてりゃぁいいんだ。」
「するとソウルアブソープの手から巨大な氷柱が姿を表す。」
「ほら!ほら!!」
蛇龍ヒュドラの首に氷柱が刺さり一匹が呻き声をあげる。そしてさらにもう一本別の首に刺さった。
さらにアブソープは巨大な熱風の塊を作り出す。
「とっとといきなクズ虫!!!」
辺りに強力な衝撃波が飛ぶ。俺も剣士も吹き飛ばされた。
「何勝手にぶっ倒れてんだクズ虫?
お前に今倒れられたらつまらないんだっつーの。」
その瞬間目の前にアブソープがいた。そして渾身の一発を喰らう。壁に打ち付けられ、血が流れる。
「おっせーな!反応が。さっきまでの威勢はどうした??ボンクラ!!」
(くっそ。瞬間移動で龍が反応できない。)
「終わりだな。クソ虫,」
そうして手を伸ばしてきた。
(触れられたらヤバい。)そうして身をよじるが体が言うことを聴かない。
するとそこへ
「隆慈!大丈夫か?」
向こうの方から二人組がやってくる。
「くっそ。外野か?」
(助かった。)
「チッ。消えろぉおおおおお。」
衝撃波がアブソープの手から放たれる。
「よせぇええええ!!」
(また俺はたいせつなものを失うのか。ここまで来て。)
すると同時に
衝撃波が黒い波動に打ち消された。
「何だ?今のは?」
「隆慈は?」
(今俺の手から何か出た?黒かったな。、、、。)
「チッ。ボンクラの分際で!」
アブソープの手から徐々に風の流れが生まれ、渦を巻いていく。そして少しずつ今度は波動がマンション一つ飲み込もうかというほどの竜巻となって現れた。
「くっそオオオ」
何がなんだかわかんないが黒い波動を出すしかない。今度は俺の手から吹き出すように黒い風が現れる。いや、黒紫といったところだろうか。その風が巨大な一閃となって竜巻に突き刺さる。
バランスを崩した竜巻は雲散霧消し、代わりにその勢いが分散し、車や道路標識をなぎ倒し、吹き飛ばしていった。
そして警察の車のサイレンの音が鳴り響く。
「また厄介なのが来やがる。」
アブソープが苦虫を潰したような顔をした。
「この勝負はお預けだな。
あばよボンクラ。
そういって、アブソープは消えた。」
第七話 同じ病室で
。、、、。見慣れない天井だな。この白い天井は。、、、。ここは病院?
おい目が覚めたぞ。
良かった。
「よぉ! 」
「おん?あぁああああ!!」
自分の隣り合うベッドにあの襲ってきた剣士がいた。仕切りを開けて、よっ。と手を上げる。
「お前が事件の犯人じゃなかったんだな。自分の力を隠してたから疑っちまった。悪かった。」
「俺は自分の能力を本当に知らなかったんだ。それでお前に言えなかったんだ。」
「能力?お前のもってるのは能力っていうより憑依じゃねぇか?ソイツいつもお前のそばについてるみてぇだし。」
「俺は能力じゃなくて憑依されてるのか?」
「そうだ。いわゆる守護霊みたいなもんさ。つっても、守護霊の範囲を超えちまってるバケモンだけどな。」
「良かったじゃねぇかリュウジ。」
「念願のカッコいい力が手に入ったじゃねぇか。」
「だが気をつけろ。そいつは伝説上の魔物だ。本当は危険な存在かもしれねぇ。そんときになったら、俺のバックの組織が動き出すようになる。
せいぜい手なづけておくんだな。」
「お前は異能力者なのか?」
「俺は固有の能力を持ってるわけじゃない。俺の力のみなもとは全てこの剣だ。」
その呼びかけに応じて一振りの剣がタンスからひとりでに抜け出て剣士の眼の前に現れる。
「すげぇ」
これは伝説の剣フラガラッハだ。こいつがあれば勝手に鞘から抜き出て敵を倒し、どんな装備も切り裂く。俺の命令一つで縦横無尽に宙を舞う。
「俺もこいつに選ばれたんだ。この剣に。」
そう言って宙に浮かぶ剣を手に取りこっちに見せてきた。
その剣が光を反射し鋭い刃が煌めく。
「こいつはすげぇな」
「おい。リュウジに手ぇ出すなら俺たちが許さねぇからな。」
あつきやゆうとがそう警告するが、剣士は怯むことなく、
「お前らにこの俺が倒せるなんておとぎ話さ。お前らの力は知らねぇが、格が違うんだよ。
日々幼い時から鍛錬し、日頃己を鍛える者達はお前らとは見える景色が違うんだよ。俺を倒す倒さないをほざく前にまず自分の身の程を知るんだな。」
剣士は鋭い目でこちらに目をやる。
「そういえば自己紹介がまだだったなぁ。
【死の報復者】(フラガラッハ)ことアヴナ
マクリルだ。
よろしくぅう。」
第八話 Mx.ψ(マクス、プサイ)
世界委員会能力者筆頭
【反発重力】(ダークエナジー)こと
Mx.ψ(マクス プサイ)。
ルーラーズは世界を裏で操る組織で23人の総裁と1人の統帥によって構成されている。
俺はルーラーズ下部組織の下っ端がやらかした
事件によって能力を得た。
能力事変によってこの世界では異能を持つことが当たり前になったが、ルーラーズのメンバーがその現実に持っている権威と同様に強力な異能を手にしたわけではない。
そこで統帥の意見によって、強力な異能を持った俺が総裁に選抜されたってことだ。
ただルーラーズの中には突如として得た能力を理由に総裁に君臨した俺を妬むやつも多い。
何度か襲撃されたこともある。まぁ、
全員返り討ちになったから、ザマァない。
他のルーラーズはクソッタレだ。
自分たちの利益のことや現状維持しか考えてない。
そのくせこの俺を舐めてやがる。
本当はぶっ殺してやりてぇところだが世界を敵に回すのはやめといた方がいいからなぁあ。いくら最強でもなぁあ。
さてと、俺様はとある国に渡航して、ルーラーズの下部組織に顔を出しに行くがてら観光に来ていたんだが。そこでおもしれぇもんを見つけちまった。
(コイツはソウルアブソープか?哀れなもんだ。Mx.φ(マクス、ファイ)の手の平で踊らされても気づいてすらねぇ。それよりも何だアイツは。ドラゴンが憑依しているのか?ヒュドラが憑いてるとはなぁあ。なんであいつは選ばれたんだぁ。アイツはおもしろそうだな。)