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高次元生命体との戦い

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 高次元生命体…名前は仮にパイモンと名付けられているが、彼はとある異星人に呼び出され、ランプに閉じ込められてしまった。そして、ランプを使用する者に従うように、縛られてしまった。つまり、バイモンが解放されるには、ランプを破壊するしか方法は無かった。

 しかし、ランプの使用者は、「ランプから彼を解放する」という誘いに乗るような者はいなかった。しかしようやくトルマンがその彼の誘いに乗って、ランプを破壊したので、彼は解放された。しかしランプからの解放は、トルマンの願いの対価である。つまりバイモンは、トルマンの願いをかなえてから出なければ、元の世界に戻ることはできなかった。


 高次元生命体として、バイモンが一番得意な事は、低次元の生命体の無意識を支配することであった。大したことが無い能力に思えるだろうが、支払われる対価によっては、星団規模の生命体の意識を操作することが可能だとすれば、支配者にとって有益な力である。一方バイモンは、この時空間で戦う事は苦手だった。しかし、戦いが苦手と言っても低次元の生命体に負けるほど弱くはないはずだった。


『(その我を斬る者がいるとは…)』


 バイモンは、自分の体の一部を斬られ消滅させられたことに戦慄し、そして怒りを感じていた。高次元生命体が低次元の生命体に倒されるなど、たとえ本体が消えないとしても、恥さらしの何物でも無い。


『我はバイモンなり。今からお前を殺すつもりだが、我に傷を付けたお前の力に敬意を表して、お前の名前を聞いてやろう。名乗るがよい』


『俺の名はシンデン。お前を倒す者だ』


 金色の粒子を纏った大刀を構えると、シンデン()は名乗った。


>『高次元生命体が名乗りを上げてきたけど、これはどういう意味かな』


>『マスターを対等な相手として認めたという事です。これであの高次元生命体は、マスターを殺す事に集中するでしょう』


>『なるほど。シンデン()、頑張って倒してくれよ』


『簡単に言うな。この状態が何時まで持つか俺にも分からないのだ』


 シンデン()が新しく獲得した、頭頂のチャクラを用いた気の質のレベルアップ(昇華)は、つい最近使えるようになった技術だ。そして通常の気ではバイモンの触手を受け止めることはできても、斬ることができなかった。つまり、バイモンを倒す為には、気功術士として、最高レベルの技術を使い続ける必要があった。そして、船首像がレベルアップ(昇華)した気を増幅してくれている原理も不明である。人類が作り上げた気の増幅回路では、レベルアップ(昇華)された気を扱いきれなかった。ブラックボックスが増幅してくれなければ、シンデン()はバイモンと戦う事などできなかっただろう。


『俺はこのまま高次元生命体(バイモン)を切り裂く。その後の始末は帆船に任せるぞ』


>『了解しました』


 帆船とシンデン()のやり取りは、ほんの一瞬だったが、バイモンはその隙を突いて、触手を伸ばして攻撃を繰り出した。四つの触手が、船首像の手足を拘束しようと襲いかかってくる。


『乙女に触手攻撃とは、趣味が悪いな』


 シンデン()は大刀を振るって、その全てを切り払ったが、斬られた触手は再生すると、数を増やして次々と襲ってきた。シンデン()は気を練り続け触手を切り払うが、それもだんだん追いつかなくなってきた。

 こうなれば必殺技を放って片付けようと、一旦全ての触手を根元から斬り捨て、気をため込んだ。

 しかしそれは悪手であった。目に見える触手を全て切り払ったが、実は目に見えない触手が船首像の首に巻き付いていた。今まで目に見える形で延ばしてきた触手は全て囮だったのだ。


『目に見えない触手だと』


『やはり低次元の者では、我には勝てぬな』


 触手は船首像(乙女)の首を締め上げる。シンデン()と船首像は別な存在であるはずなのに、どんな原理か分からないが、彼は首を締め上げられるような苦しみを感じていた。


>『電子頭脳さん、船首像の攻撃がシンデンの肉体に影響を与えているぞ』


>『高次元生命体は物理法則を無視します。船首像に加えられた攻撃がマスターにも影響を与える。そんな事も起きるのです』


>『魔弾で援護してよ』


>『了解です』


 切り取られた触手を始末し終えた帆船は、光速の魔弾で船首像(乙女)の首を締め上げる触手を打ち抜いた。


>『攻撃が効かない!』


 光速の魔弾は、本体から切り離された部位を消滅させることができたが、船首像(乙女)の首を締め上げる触手を打ち抜いても、消滅させることはできなかった。


>『あの高次元生命体(バイモン)は、魔法に対する耐性が高いようです。魔弾ではあの触手は打ち抜けません』


>『シンデン()、何とか自分で斬れ』


『なかなか無茶を言う』


 喉を締め上げられたシンデン()は、呼吸が乱れ、気を練ることができない状態だった。気を練らなければ、高次元生命体(バイモン)の触手を振り払うことすらできない。


『(このままでは船首像の首がへし折られる)』


 船首像の首がへし折られれば、同時にシンデン()も首がへし折られるだろう。気を纏えなくなった船首像に。次々と触手が巻き付いていった。船首像はギシギシと音を立てて、もう崩壊寸前だった。もちろん帆船は魔弾でバイモンを攻撃しているが、船首像を解放するだけのダメージを与えることはできなかった、


>『何か他に手は無いのか』


>『こうなれば、霊子力兵器を使うしか方法はありません』


 高次元生命体にも、霊子力兵器は有効である。低次元の生命体の霊子()だが、その力を解放すれば、高次元生命体も無視できない威力となる。だから高次元生命体は、霊子()を対価に要求するのだ。


>『霊子力兵器(そんな物)を使ったら、周囲の星域軍の連中が全員死ぬ。それは駄目だ』


>『しかし、マスターを救うにはそれしか手がありません。本船は、船首像を救うため霊子力兵器の使用を提案します』


>『却下だ。何か他の手を考えろ』


 電子頭脳も船首像はオプション機能であるため、霊子力兵器を勝手に使用する事は無かった。バックアップ霊子()に使用の可否を聞いてくるだけの余裕があった。しかしこのままでは船首像とシンデン()はバラバラになってしまうだろう。

『糞、どうにかならないのか』


 船首像(乙女)の体が軋み、後数秒で船体が崩壊するだろうという所で、突如船首像(乙女)の体から金色の粒子が吹き出して、絡みついていた触手を全て弾き飛ばしてしまった。


>『あれは、あの時と同じ現象だな』


>『船首像のブラックボックスですか…』


『またブラックボックスが発動したのか。か助かったが、船首像の制御ができない。どういうことだ』


 シンデン()は、船首像が自分のコントロールから離れた事に気付いた。モニターには、あの時と同じく「Unknown Power」と表示されていた。


『貴様、一体何をした。その力は低次元の存在が持って良い力ではないぞ』


 高次元生命体(バイモン)は、金色の粒子を纏った船首像(乙女)を恐れるかのように後退する。しかし船首像(乙女)は大刀を捨てると、宇宙を蹴って高次元生命体(バイモン)に一気に近づいた。その速度は高次元生命体(バイモン)すら知覚できない速度だった。


『グハッ』


 船首像(乙女)の右手が、高次元生命体(バイモン)の体を貫く。続けて左手も高次元生命体(バイモン)の体を貫くと、一気にその体を左右に引き裂いた。


>『電子頭脳さん、魔弾で攻撃するんだ』


>『…は、はい。了解しました』


 帆船は、引き裂かれた高次元生命体(バイモン)の体に向かって、魔弾を撃ち込む。二つに引き裂かれた高次元生命体(バイモン)は、それが致命傷となったのか、細かな霧状の物質となって、空間に拡散して消えていった。


 高次元生命体(バイモン)が消え去ると同時に、船首像(乙女)は金色の粒子を放出するのを止めて、シンデン()に制御が戻ってきた。


『またブラックボックスが発動した。しかし今度は俺の制御を離れて、勝手に船首像を動かして攻撃までしてしまった。ブラックボックス(こいつ)って一体何なんだ』


>『本船にも分かりません。創造主も解析できなかったから、ブラックボックスなのです』


>『…とにかく、高次元生命体(バイモン)は倒せたんだ。謎解きは後回しだ』


 高次元生命体(バイモン)を倒した船首像は、帆船と合体すると、大統領の乗る旗艦に向けて進み始めた。星域軍の魔法使いと理力使いの人型機動兵器は、帆船を恐れるかのように道を空けた。


 ★☆★☆


 -現大統領旗艦-


「あの傭兵が高次元生命体を倒したようです」


 索敵オペレータが報告するが、戦況をモニターで見ていたメアリーはシンデン()が高次元生命体を倒した瞬間を見ていた。


>『本当にあの傭兵は高次元生命体を倒したのですか?』


>『はい。高次元生命体が発していた時空の歪みは消えています。高次元生命体は消滅しました』


>『貴方の言う通りでしたね』


>『いえ、あの高次元生命体の力は、私の予想を超えていました。そしてその高次元生命体を倒した帆船のマスターも、私の予想を超える力を持っていました。本船は帆船よりあの「人型兵器」を使いこなしている帆船のマスターを危険と判断します。マスターには、速やかな排除を提案します』


>『そんな事できるわけ無いでしょう。高次元生命体を倒すように依頼したのは私なのよ。その依頼相手を問答無用で排除なんてしたら、傭兵ギルドが黙っていないわ。ベイ星域の人達の信頼を一気に失ってしまうわ』


 リヒトフォーヘンは、メアリーにシンデンの排除を提案するが、彼女はため息をついてそれを拒絶した。


「(ベイ星域軍の気功術士など歯牙にもかけなかった高次元生命体を倒した傭兵。こちらに何とか引き込めないかしら)」


 メアリーはリヒトフォーヘンと異なり、どうやってシンデンを自分の味方にするか考えていた。


「おい、あの船を旗艦に近づけるな。その場で止まるように命令しろ」


 副大統領は、帆船を止めるように怒鳴るが、高次元生命体を倒した帆船を恐れるように、星域軍の艦艇は道を開けていく。


「ええい、旗艦は全力で後退だ。あの船と距離をとれ」


「いえ、このまま接舷してください。私はあの傭兵と直接会って話をします。依頼の報酬も事後相談と伝えたのです。報酬に付いてこちらの船で会談すると伝えてください」


「大統領、何を言い出すのですか。相手はたかが傭兵です。大統領が直接会う必要などございません」


「副大統領、私は直接会うと言ったのです。これは命令です」


 メアリーの突然の発言に、副大統領は驚くが、大統領に命令と言われては従わざるを得ない。


「…分かりました。ですが護衛は付けますので」


「相手の機嫌を損ねないような対応でお願いします。何せ、高次元生命体を一人で倒してしまう程の方なのです」


「はっ、失礼の無いようにいたします」


「それで、前大統領派の艦隊は今どうなっていますか?」


 旗艦のブリッジ要員は、高次元生命体の戦いに気を取られていたが、実はまだ内戦は継続中であった。しかし、前大統領派の艦隊は、旗艦から高次元生命体が出現し、前大統領を含め旗艦のブリッジと連絡が繋がらなくなった段階で戦意を喪失していた。捕まれば国家反逆罪で処刑されるような連中は逃げだし、残りは現大統領派に降伏していた。

 つまり、逃げ出した連中の宇宙船を捕縛または撃破すれば終わりである。


「旗艦を護衛する数隻を残して、残りは内戦を早急に終わらせるように行動しなさい」


「イエス・マム」


 副大統領ではなく、軍事的な副官がメアリーに敬礼すると、星域軍の艦隊に大統領の命令を伝える。メアリーは「内戦は終わった」と感じていいた。


「大統領、傭兵がこちらとの会談に応じるそうです」


 帆船と通信を行っていた副大統領が戻り、大統領にシンデンが会談に応じる事を報告する。


「分かりました。では彼をこちらの船に招待してください。くれぐれも失礼に無いようにね」


>『リヒトフォーヘン、レリックシップ(帆船)に気付かれないように、スキャンは可能かしら』


>『可能…と言いたいところですが、それは不可能です。それよりも本船は今から完全ステルスモードに入ります。しばらくはこの通信も閉鎖します』


>『そこまで警戒しなければいけない相手なの?』


>『先ほどの戦いで、本船は帆船、いやあの船首像の戦力を見誤っていました。本船の存在を知られることは、危険だと判断します』


>『分かったわ。じゃあ、私は貴方のサポート無しで傭兵と会うしかないのね』


>『申し訳ありません。マスター、どうか御無事で』


 リヒトフォーヘンはそこで霊子力通信を切断してしまった。


「さて、どうやれば彼を味方にできるかしら」


 応接室にむかって歩きながら、メアリーは妙案がないかシンデンの情報を調べるのだった。


年末に少し書きたい話があるので、明日、明後日は更新できないかもしれません。

年末にお暇であれば、明日にはプロローグの部分をアップしますので読んでみてください。

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