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姉妹の救出(2)

誤字脱字のご報告ありがとうございます

ファンであった漫画家の先生が亡くなられたショックで更新遅れてしまいました。

先生のご冥福をお祈りします。

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 スズカの介護は響音(おとね)とシオンに任せ、シンデン()はスミスの元に向かった。スミスの体は酷い状況だったが、医療ポッドによって、会話が可能な程度には回復していた。


「どうして、私を助けたんですか」


「お前は俺に依頼の報酬の暗号キーを渡していない。だから助け出したんだ」


「そうですか。そう言えば送ってませんでしたね。それで、それだけのために、私を裏組織の連中から助け出したんですか?」


「後は、お前が何処までオルワ氏の力について知っているか、それを聞くためだ。裏組織の連中も、オルワ氏の聖者の力について知りたかったんだろ


「ええ、そうです。裏組織の連中は、私にオルワ氏が持っていた力について尋ねてきました。私は情報屋ですので、情報には対価が必要です。オルワ氏の力の情報を聞き出す対価を裏組織の人達は払いませんでした。だから私は全てを話しませんでしたよ。それで、貴方は、オルワ氏の力の情報について、私にどれだけの対価を払ってくれるのですか?」


 どうやら、スミスはオルワ氏の力について情報を話していなかったようだ。だから拷問されていたのだろう。


「お前を助け出したんだ、俺はもう対価は払ったと思うが?」


「そうでしたね。それで貴方は、オルワ氏の力について聞きたいのですか?私も、オルワ氏の力についてほとんど知りませんよ」


「その判断はこちらがする。お前は、オルワ氏について、知っている情報を全てを話してくれ」


「分かりました。私の命の対価分、情報を話しましょう」


 スミスはオルワ氏について知っていることを全て話してくれた。スミスは、オルワ氏が聖者だったことを知っていた。スミスもオルワ氏の同志だったのだ、知っていて当然だ。だが、スミスは「聖なる力」が、オルワ氏から来る通信のような物と認識していただけで、それが霊子力通信だとは知らなかった。


>『電子頭脳さん、彼が嘘をついている可能性はあるかな?』


>『脳波、脈拍、体温等正常。彼は嘘を言っていないと推測します』


 念のため、電子頭脳にスミスが嘘の情報を話していないか調べさせていたが、彼は嘘を言っていなかった。スミスを解き放っても、問題は無いと俺と電子頭脳は判断した。そして、裏組織の連中を殺す必要も無くなった。まあ、無駄な死人が出なくて本当に良かった。


「どうやら、嘘は言っていないようだな」


「信じてもらえて何よりです。それで私は、これからどうなるのでしょうか?」


「まあ俺の聞きたい事は全て聞けた。後は暗号キーさえ渡してくれれば、お前の体を治療して何処かのステーションに送り届けてやる」


「体を治療した上、解放してもらえるのですか。ありがたい話ですが、また裏組織の連中に捕まるのは嫌なので、出来ればロスア星域じゃないステーションに降ろしてもらえると助かります」


 スミスは申し訳なさそうな顔でそう言うが、俺も流石にロスア星域でスミスを解放するつもりはなかった。


「安心しろ、ステーションまでの旅費は請求しない。だから早く、暗号キーを渡してくれ」


 スミスの体は医療ポッドに入れる前にスキャン済みだ。持ち物から暗号キーと思われる物は見つからなかった。暗号キーは彼の頭の中にあることを祈るのみだ。


「旅費をおまけしてくれるとは、太っ腹ですね。さて、依頼の対価を払わないのは私の主義に反します。今から暗号キーを渡しますので、記録する準備をして下さい」


「俺は記憶力には自信がある。どれだけ長い暗号キーか知らないが、早く喋ってくれ」


「大丈夫ですか?結構長いですよ。それでは、今から暗号キーを言いますね。『昔から、流行り廃りなんて…』…と言う所までが暗号キーです。本当に覚えられたんですか?」


「それが暗号キーなのか。まさか、落語…それも死神を暗号キーにしているとか、流石に予想外だった」


 スミスが語った暗号キーとは、古典落語の死神の語りだった。いや、宇宙に進出した人類に落語という文化が残っていたことに驚いた。そして、スミスが落語好きで、死神の語りを暗号キーとして、全て覚えていることにも驚いた。俺も寿限無ぐらいは覚えているが、流石に死神を全て語れるほど落語の知識は無かった。


「シンデンさんも落語を知っておられるのですか?」


 シンデン()の嬉しそうな顔を見て、スミスが聞いてくる。どうやら懐かしい落語を聞いて、表情に出てしまったようだ。これは不味い、シンデンは落語とは縁の無い男だ。


「いや、面白い話だとは思ったが、それが落語という物とは知らなかった。情報屋とはそんな物まで知っているのか?」


「いえ、落語は私の趣味です。落語に興味がある同志に会えたと思ったのですが、残念です」


「それは済まなかった。まあ、面白い話であったのは事実だ」


「では、別なお話をしましょうか?」


「済まないが、今は少し取り込み中なのだ。それに落語に対する対価は、俺は払えない」


「残念ですね。落語で一儲けと思ったのですが」


 そう言って、スミスは少し微笑んだ。シンデン()は、医療ポッドがスミスを地理用のために眠らせるのを確認して、部屋から出た。


>『落語、聞きたかったな。しかし、落語を聞いて笑うシンデンとか演技できる自信が無いからな。我慢するしかない』


 俺としては、懐かしい落語を聞きたかった。しかし、凄腕の傭兵であるシンデン()が、落語を楽しむというのはおかしい気がしたのだ。それにスミスは、シンデンが落語を聞いて笑ったことまで情報で売り出しそうだ。


 とにかく暗号キーは入手できた。データチップに暗号キーを入力して、ロスア星域で産出された、貴重な魔石の行方のデータを取り出した。


>『どうだ、何か問題のある魔石は見つかったか?』


>『かなり古いデータまで記録されてますね。星域名も変わっている送り先もあるので、最悪その惑星まで出向く必要がありそうです』


>『なるほど。では、ロスア星域内だけでも先に調べよう。次はロスア星域軍の研究所からサクラの姉妹を助け出すんだ。恐らく、当分の間ロスア星域に近寄ることが出来ないかなら』


>『それが、ロスア星域の貴重な魔石は、オルワ氏が全て集めていました。送付先はイエル星域の聖地です。あの破壊した遺跡にあった魔石は、オルワ氏が集めた物だったのです』


 オルワ氏は、遺跡を稼働させるために貴重な魔石を集めていた。つまりスミスが魔石の行方のリストを持っていたのは、オルワ氏に依頼されたからであった。スミスが魔石のリストを所持していた理由は分かったが、そうなるとロスアでやり残したことは、最後の姉妹の救出だけとなった。


>『サクラの姉妹が居る研究所は、何処だっけ?』


>『ロスア星域の辺境…アシベリ恒星系、第六惑星ですね』


>『それじゃ、さっさとそこに行って、救出してしまおう』


>『了解です』


 帆船は、サクラ姉妹の最後の一人が捕らわれている研究施設に向かった。


★☆★☆


 アシベリ恒星系第六惑星は、極寒の氷に覆われた惑星であった。その分厚い氷の大地の地下に、ロスア星域軍の秘密研究所が存在した。極秘研究所だから、場所は秘匿されているのだが、霊子力通信で繋がっていたオルワ氏には、その場所も研究内容も筒抜けであった。


>『分厚い氷の下、地下施設なのが問題だな。ステルススーツでも、氷を溶かして潜入すればバレてしまう。そしてそんな研究所に入る入り口は一つしか無いと…』


>『そうですね。入り口が限られているので、中に入るのは、その入り口が開いた時しかありません』


>『都合良く、入り口が開くとも思えないし。これは長期戦になるかな…』


>『入り口が開くまで待つしかありません。待ちますか?』


>『いや、それはシンデン()霊子()と体が持たない。響音(おとね)だけで救助というのも危険だからな。別な手を考えよう…』


 俺は、しばらく入り口が開かないか待った後、視線を第六惑星の周囲に戻した。そこで、第六惑星の側を通り過ぎる小惑星が存在する事に気づいた。


>『あの氷の小惑星、落下させられないか?それで、あの小惑星が惑星に…研究所の真上に落下すれば、氷の大地を破壊できるんじゃないか?』


>『あの小惑星ですか?今の軌道では、惑星に落下するのに一万二千年後ですね。それまで待つのでしょうか?』


>『それは、このまま何もせずに待っていたらだろ。この船で、ちょっと軌道を変えてやれば、直ぐに落ちるだろ。氷の小惑星が軌道変更するなんて、たまにはあるだろ』


>『一万二千年後年後に落下する小惑星が、急に軌道を変更するなんて不自然です。そんな事をすれば、おかしいと思われますよ』


>『俺達がやったとバレなきゃ良いんだよ。この恒星系、第六惑星の秘密研究所以外は、無人だろ。それに研究所の存在を知られない為に、惑星にも恒星系にも監視様ドローンすら跳んでいない。研究所も光学系のセンサーで周囲を見ているだけだろう。つまり俺達が氷の小惑星の軌道を変更しても、落ちてくる寸前まで分からないだろ?』


>『そうですね。確かにバックアップ霊子()の案は使えそうです』


>『そうだろ。あの小惑星を使って、研究所に侵入する作戦を考えてみようぜ』


>『了解です』


 それから一時間後、俺と電子頭脳は、小惑星を使った潜入作戦を作り上げた。


>『では、作戦を開始するぞ』


>『今回、小惑星の動きが不確定要素となります。そこは気を付けて下さい』


>『大丈夫だ、シミュレーションを何度もやったろ。研究所の上の氷は破壊されるけど、建物は一番上の階層が壊れる程度だ。サクラの姉妹が居るのは、研究所の最下層だから大丈夫なはずだ』


>『了解しました。ステルスシップの方も準備は完了してます。作戦を開始します』


 落下冴える小惑星の中心には、シンデン()響音(おとね)が乗り込んだステルスシップが埋まっている。その小惑星を帆船は押して、秘密研究所の真上に落下するように軌道を変更する。


 小惑星が地表に落下すると、その熱で地表は巨大なクレーターが発生する。もちろん普通に落下させると、研究所も破壊されてしまう。それでは不味いので、一番上の階層だけで破壊が収まるように、ステルスシップが落下速度を調節する。

 小惑星が落下すれば、研究所は大騒ぎとなるはずだ。その隙に、ステルスシップからシンデン()響音(おとね)が研究所の内部に潜入して、桜の姉妹を救出する。 ステルスシップとシンデン()響音(おとね)は、落下の熱と衝撃に耐えなければならないが、そこは慣性制御装置とシールドの魔弾等を使って耐えることになる。


 ちなみに、シオンは、帆船でスズカの面倒を見ているので、作戦には不参加である。


>『そう言えばバックアップ霊子()、今回は作戦名を考えていませんね』


 作戦を開始する時になって、突然電子頭脳が作戦名が無い事に気づく。


>『気づいたか。早々作戦名を考えるのも面倒だから黙っていたのに。仕方ない、それでは作戦名を「恐怖の大王作戦」とする』


>『「恐怖の大王作戦」ですか。確かに惑星に落下する小惑星は恐怖ですが、大王とは意味が分かりません。やはりバックアップ霊子()のネーミングセンスは最悪ですね』


>『だから言いたくなかったんだよ』


 とにかく「恐怖の大王作戦」は開始された。帆船は小惑星を押して、軌道を変更する。後数時間もすれば、小惑星は研究所の上に落下する。研究所の人達がそれに気づくのは、小惑星が大気圏に突入してからだろう。


 ★☆★☆


 小惑星が惑星の大気圏に突入すると、それが研究所の真上に落ちてくることに気づいたのか、研究所から超光速通信が発信された。多分内容は、星域軍への救援依頼だろう。今この場にいない星域軍では、小惑星が研究所の真上に落ちてくることは阻止出来ない。星域軍は、小惑星によって破壊された研究所の救助活動をするだけだ。


 氷の小惑星は、大気圏に突入すると小爆発を繰り返しながら蒸発していく。このままだと、大気圏の途中で粉々に砕け散るのだが、そうならないようにステルスシップが慣性制御装置で速度を適宜調整する。


「衝突まであと十秒、ショックに備えろ」


「了解しました」


 響音(おとね)が真面目にそう答えるが、人型ドローン響音(おとね)の方は、衝突の衝撃にも耐えられるだろう。シンデン()は、気を練って体を気のフィールドで守ることで耐える。ステルスシップもシールドの魔弾で熱に、慣性制御で衝撃に耐える。全てシミュレーション通りに状況は進んだ。


 ズッガーーーーン


 巨大な衝突音と共に、小惑星は研究所の真上に落下する。氷の平原に巨大なクレーターができあがり、落下の熱により氷が溶けて蒸発していく。そして、氷の地下深くに埋まっていた研究所の外壁が、クレーターのそこに露出していた。


「よし、潜入するぞ」


「Yes Master」


 シンデン()響音(おとね)はステルスシップから降りると、水蒸気が立ちこめる中、壊れた外壁を乗り越えて、研究所に忍び込んだ。


 研究所内は、小惑星の衝突のショックで大混乱状態だった。シンデン()は、まだ機能している端末を使って、研究所の状態と、サクラの姉妹の居場所を確認する。


「シミュレーション通り、怪我人は出ているが死者は居ないな。サクラの姉妹の居場所も、最下層施設で変わっていない」


 シンデン()響音(おとね)は、最下層めがけて移動する。エレベータは最下層で停止していたので、最上階の扉をこじ開けて飛び降りた。途中セキュリティのための隔壁が降りていたが、シンデン()が、エレベータの点検端末からハッキングを行い開けてしまう。いつもなら気で切り裂いて突破しただろうが、せっかくハッキングスキルを勉強したのだ、切り裂くよりハッキングの方が証拠が残らない。


 最下層に降りたシンデン()響音(おとね)は、エレベータの扉を開いて、通路に出る。最下層の為、小惑星の衝突の被害はほとんど無かったが、ドローンや研究所員が、突然の出来事に右往左往していた。


「この部屋にサクラの姉妹がいるはずだ。踏み込むぞ」


 第四十九研究室と書かれた部屋に、サクラの姉妹が捕らわれているはずだ。扉はロックされていなかったので、シンデン()響音(おとね)は、そっと扉を開けると、部屋の中に踏み込んだ。


「いてて、小惑星が落下してきたとか洒落にならないわね。端末も止まったし、扉も勝手に開いたわね。電気系統が故障したのかしら?」


 光学迷彩で姿の見えないシンデン()響音(おとね)に、白衣を着た女性は気づいていなかった。そしてその女性は、サクラとソックリの顔をしていた。彼女がサクラの姉妹で間違っていないだろう。


「サクラの姉妹…カエデ()だな。俺は、お前を救出に来た」


 カエデの耳元で、俺はそう囁いた。


「はぁ、どうして私が研究所(ここ)から救出されなきゃいけないのよ!」


 しかし、カエデはどうやら研究所から逃げ出したくないようだった。まさか救出される人物が、「逃げ出したくない」と言い出すとは想定外だった。


「俺は、お前の義父のオルワ氏とサクラから。お前達姉妹の救出を頼まれたのだ。だからここから連れ出すつもりだ」


「義父さんが『後は自分の心に従って、自分が良いと思う世界を作って生きて欲しい』って言ったから、これでようやく本格的に『聖なる力』の研究をしようと思ったのに。連れ出されたら、『聖なる力』の研究ができないでしょ」


 カエデはこの研究施設で『聖なる力』の研究をするつもりだったようだ。オルワ氏が生きている間は、彼を通じて研究することは禁じられていたのが、最後のメッセージを受けて解放された今、彼女は『聖なる力』の研究に協力するつもりだったようだ。


「残念だが、もう『聖なる力』は残っていない。それにそんな物(・・・・)を研究されても困るんだ」


「『聖なる力』が残っていないって、どういうことよ。義父は亡くなったけど、最後にメッセージは送られてきたわ。『聖なる力』が残ってないとか洒落にならないわ!」


 どうやらカエデさんは、元気が有り余っている人のようだ。とてもサクラと同じクローンとは思えない。しかし、このままではカエデはこの研究所で『聖なる力』を研究するだろう。霊子力通信の技術までたどり着けるか分からないが、その可能性を残したくない。


「済まないが、無理にでも連れて行くぞ」


 シンデン()は、気を込めた手刀でカエデの首を叩いて、気を失わせた。これは気功術士であるシンデン()だから可能な技である。普通の人は決して真似をしてはいけない。


 カエデの大声で、異変に気づいた研究所の職員が研究室に入ってきた。カエデが気絶しているので、慌てて近寄ってきたが、その男も気を失わせた。早くしないと、別な職員や警備ドローンがやって来るだろう。

 ステルスシーツで気絶したカエデをくるむと、シンデン()響音(おとね)は最下層から地上に登っていく。下りは楽だったが、登りは大変だ。響音(おとね)を連れてこなかったら、移動に時間がかかっていただろう。


 研究所から出るとき、生きている端末を使って、カエデの部屋で起こった出来事を記録したデータを削除する。ついでにこの研究所の研究内容を見ると、禁忌技術に触れている内容が多かった。どうやら人類に役立ちそうな研究をしているとは思え無かったので、電子頭脳さん特製のコンピュータウィルスを流し込んで、研究データを全て消し去ることにした。


『マスター、ステルスシップの周りに兵士がいます』


 ステルスシップは光学迷彩中だったが、小惑星の衝突で生じた霧のおかげで、その位置が兵士達に発見されたようだ。兵士達は、ステルスシップの外壁を叩いているが、もちろんその程度ではステルスシップは破壊されない。


『俺が連中の気を引く。響音(おとね)はその間にカエデを連れて、ステルスシップに乗り込め』


『Yes Master』


 兵士達の目の前で、シンデン()は光学迷彩を解除する。


「ば、化け物が…」


「う、撃て」


 突然現れた化け物(ステルススーツ)に、兵士達は驚いて発砲してきた。レーザー銃程度ではステルススーツは破壊されないので、シンデン()は兵士達に威嚇するように近寄っては、銃をたたき落とした。気を使わないのは、あくまで人じゃない化け物感を出すためである。


「レーザー銃が役に立たない」


「クソッ。まさか落下してきた小惑星に、こんな化け物が眠っていたのか?」


「誰か、研究中の新型ブラスターをもってこい」


 レーザー銃が役に立たないと分かると、兵士達はシンデン()から距離を取った。響音(おとね)とカエデは、既にステルスシップに乗り込んでいる。シンデン()は再び光学迷彩を起動すると、ステルスシップに乗り込んで発進させた。


 地上を映すモニターには、消え去ったシンデン()とステルスシップに驚く兵士達の顔が映っていた。多数の兵士が○レデターという怪物を見たことになるが、それがシンデン()に結びつくことはあるまい。惑星の軌道上で、ステルスモードの帆船に拾われ、恒星系から逃げ出した。しかし、今超光速航法を起動すると、救助に向かって来るロスア星域軍に見つかってしまう。騒ぎが収まるまで、帆船は宇宙空間を漂うことになった。


>『とにかくこれでミッションコンプリートだな。後は、二人をどうするかだが…』


 心を閉ざしてしまったスズカのケアと、「聖なる力」を研究したいカエデ。面倒な二人を帆船で抱えることになってしまった。


>『スミスも居ますよ』


 俺はもう一人居たことを電子頭脳に指摘されてしまった。

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