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超光速空間での攻防(1)

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 一方、超光速空間まで追いかけてきたキャリフォルニア星域軍の艦隊では、提督が癇癪を起こし怒り狂っていた。


「ええぃ、儂の命令に従ったのが二隻だとは、これは軍法会議どころか銃殺ものだぞ。それよりどうしてあのレリックシップ(遺物船)に追いつけないのだ。我が艦の航法士は何をしている」


「航法士も何とか先回りできないか軍のチャート(海図)を元に航路を検討しておりますが…向こうの航路の方が優れているという状況でして。また、先ほどまではこちらの方の航行速度が上回っていたため、追いつけると判断したのですが、どうやらあの帆によって、帆船の航行速度を上げているようで…現在のままでは追いつくのは不可能かと」


 提督の癇癪に付き合わされる参謀は、冷や汗を流しながら言い訳を述べていた。参謀としても、もし別な船に乗っていれば艦隊から逃げ出したいと思っているぐらいであった。


「このままでは追いつけず、距離が開けば目視不可能となってしまう。見失ってから超光速航法を解除されたら追跡不能だぞ。そしてシンデンの奴が嘘の(・・)情報を傭兵ギルドに送ってみろ。キャリフォルニア星域は大変な事になってしまうぞ」


 超光速空間では、原理は不明だが電磁波を使うようなセンサーは物理法則が異なるため役に立たない。つまり超光速空間で索敵に使われるのは光学系センサー(カメラ)や人の目であった。そして超光速空間には、何故か水平線が存在するため、目視で相手を追いかける場合は数キロが限度である。それ以外にも霧(恒星活動の活発化による重力変動で発生)や雨(移動するマイクロブラックホールが原因と言われるが詳細は不明)といった気象変更などで、例え数百メートルの距離でも見失うことがある。超光速空間での索敵や追跡は、電子頭脳の補佐があるとは言え大航海時代もかくやという技術レベルで行うしかなかった。


「(それは提督、いや星域軍の軍拡派の失態でしょう)はっ、もうしばらくお待ち下さい」


「なんとしてもあのレリックシップ(遺物船)を拿捕せねば。いや、この状態では拿捕などと温い事を考えていては取り返しが付かない。こうなれば、超光速空間で破壊するしか…アレ(・・)を使うしか無い。おい、アルキメデス。秘匿コード99819の使用制限を解除しろ」


 提督が旗艦の電子頭脳にそう呼びかける。すると今まで旗艦の武装リストに無かった、兵器が戦術オペレータのパネルに表示された。


「て、提督。秘匿コードとは、それにあの武装は一体…」


 提督の突然の行動と戦術オペレータのパネルに表示された謎の兵器を見て、参謀は何か不味い事が起きていると感じていた。


「ふふっ、お前達が無能だからあのレリックシップ(遺物船)の拿捕を諦めたのだ。いまキャリフォルニア星域軍の秘匿兵器の使用を解禁した。これであのレリックシップ(遺物船)を撃破するのだ」


「ひ、秘匿兵器ですか?その様な物をここで使用されても宜しいのでしょうか」


「馬鹿者、儂がコードを知っているという事は、儂の判断で使って良い武装である。貴様らはその兵器を使ってあのレリックシップ(遺物船)を沈めれば良いのだ」


「はっ、直ちに作戦を立案します」


 参謀は、自分にも知らされていなかった兵器を持ち出されて、提督の行動が正しいのか分からなくなっていた。しかし、同じ船に搭乗する上官の提督に命じられれば従わざるを得ないと、諦め秘匿兵器の詳細を見る。


「(超光速空間で使える戦闘ドローンだと?そんな物がいつの間に開発されていた。まさかこれは禁忌技術を使った戦闘ドローンでは。しかしここでそれを言い出しても提督は引き下がらないか。キャリフォルニア星域の為には、この戦闘ドローンで、レリックシップ(遺物船)を沈めるしかない。それにこの性能が本当であれば、沈めることは可能だ)」


 参謀は解禁された秘匿兵器…青い新型の戦闘ドローンの諸元を見て、禁忌技術を使用した物と分かってしまった。しかしそれを今更言い出して提督を止めることは不可能であり、キャリフォルニア星域のためにはシンデンの船には沈んでもううしか無いと冷徹に判断を下した。


「提督、秘匿兵器…超光速空間対応ドローンを全て使っても宜しいでしょうか」


「かまわん。とにかくレリックシップ(遺物船)をここで何とかするのだ」


「はつ。よし超光速空間対応ドローンを全て出撃させろ。ドローンの速度はレリックシップ(遺物船)より早い。半数は先回りして航路を塞ぐように配置しろ。残りは背後からレリックシップ(遺物船)を攻撃。挟み撃ちで撃破するのだ」


「りょ、了解しました」


 参謀の指示に戦術オペレータが答え、二十機の超光速空間対応ドローンが旗艦より出撃する。第二次世界大戦時の魚雷艇の様な形状をした青いドローンは、参謀の指示取りに帆船を挟み撃ちにするかのように、波をかき分けて進んでいった。


 ★☆★☆


>『敵の旗艦から何か出撃したぞ。形状は…青いボートというか、魚雷艇か?』


>『ピッ、形状は地球という惑星の旧世代の海上艦艇に酷似。魚雷という武装を所持しているかは不明』


>『とにかく速度が速い。このままじゃ挟み撃ちになる。どうすりゃいいんだ』


>『ピッ、肯定。対応策を検討…。敵ドローンの詳細が不明のため、マスターの判断を請う』


>『電子頭脳さんがお手上げって、俺が何とかするしかないのか。つか、俺は一介の学生で海戦とかやったことは無いんだよ』


 迫ってくる青い魚雷艇(戦闘ドローン)への対応を電子頭脳に丸投げされた俺は、どうすれば良いか考えた。しかし、戦術のせの字も知らない俺にまともな戦い方は浮かばなかった。


>『大きさは三十メートル程度。野蛮なやり方だが、体当たりすれば接舷する間もなく破壊できそうだな』


>『ピッ、敵ドローンは超光速空間を移動していることから、有人の可能性大。破壊してしまった場合、操縦士は座標も分からない通常空間に離脱』


>『そうか、人が乗っているってことか。破壊してしまったら不味ってことか。つか、相手はどうやってこちらを攻撃するつもりだ?接舷して船内制圧ドローンを送り込むなら、挟撃なんてしないだろ』


 敵ドローンがどうやって帆船を攻撃するかに俺が疑問を持ったとき、青いドローン達は一斉に理力による攻撃を仕掛けてきた。


>『ピッ、敵ドローンから理力によるエネルギー波攻撃確認。第一装甲を貫通。本船は回避行動に移行』


 ドローンからの理力攻撃は致命傷となる物では無かった。しかし同じ箇所に何度も攻撃を受ければ装甲を抜かれてしまう。電子頭脳は帆を操作して帆船を蛇行させて回避行動を取るが、その為速度が落ちて戦艦との距離が縮まっていった。


>『理力攻撃って、超光速空間でも使えるのか。つまり青いドローンは、シンデンが戦った赤い戦闘ドローンの親戚、つまり有人と言ってもクローン脳が乗っている奴だな』


>『ピッ、肯定。理力は物理法則を超越した現象。超光速空間にもマナは存在するため、理力の発動は可能』


>『理力って厄介だな。まあクローン脳なら…殺人じゃない。うん、俺でも破壊できるはず』


>『ピッ、戦闘のため、超光速航法の停止を推奨』


>『そうだな。通常空間に逃げ出せば、反撃可能だな。追撃してきた星域軍も三隻だし、それが正解か。超光速航法の停止…あれ、ドライブが停止しても抜け出せないぞ』


 俺は電子頭脳の提案に従い、超光速航法回路の停止を行った。しかし回路は停止したはずなのに、帆船は超光速空間から離脱しなかった。


>『ピッ、敵ドローンが理力を使い、本船を超光速空間に固定中。超光速空間から離脱不能』


 青い魚雷艇(戦闘ドローン)の半数の十機程が、理力フィールドを網のようにして帆船を絡め取っていた。その為帆船は水面下に沈むことができず、超光速空間から離脱ができなかったのだ。


 ★☆★☆


「はは、見たまえ。レリックシップ(遺物船)が手も足も出せずに攻撃されているぞ。うむ、この新型ドローンの量産の暁には、カリフォルニア星域による銀河統一も夢ではないぞ!」


 帆船がドローンに手も足も出ない状況を見て、提督は満足げに笑っていた。


「はっ、そうで…ありますね(禁忌技術を使ったドローンを作っていることが他の星域に知られれば、ハーウィ星域と同盟にある星域国どころか、全ての星域国が総力で我が星域を叩きにかかるだろう。そんな事も理解できないほど、軍拡派の連中は馬鹿揃いなのか。…だが、今はあの帆船を沈めることで、星域軍が禁忌技術に手を出していた情報は隠蔽できる。この戦いが終わった後には、残った戦艦の艦長達と手を組んで、傭兵から提供された情報を元に、軍拡派の馬鹿どもを星域軍から追い出してやる。傭兵には申し訳ないが、それが俺にできる最善手なのだ)」


 得意満面な提督に対して、参謀はそんな事を考えていた。



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