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レリックによる支配

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 シンデン()が客室に入っても、サクラは手荷物を抱えて座ったままである。本当に何を考えているか分からない少女だ。


「悪い知らせがある。オルワ氏が亡くなられた。それでだが、もし君がロスア星域に戻りたいというなら、依頼は失敗となるが戻ろうと思う」


 スミスは「半日待って欲しいと」言ったが、俺は、サクラが戻ると言うなら、依頼失敗となっても戻るつもりだった。魔石の情報は大事だが、義理でも父親が亡くなったのだ、普通は戻ると選択するだろう。


「…そうですか。養父が亡くなったのですか。養父の依頼は、私を聖地に送り届けることです。私はロスアに戻る気はありません」


 サクラはそう言って、また黙ってしまった。


「そうか。君の決意は分かった。今知り合いに頼んで、合法的にイエル星域に入る手段を検討している。半日ほど待って欲しい」


「分かりました」


 シンデン()は客室を出ると、大きくため息をついた。


>『養父が亡くなっても、泣きも驚きもしないか…。電子頭脳さん、どう思います?』


>『本船には、人間の感情が分かりません』


>『いや、俺もサクラの考えている事は分からないんだよ』


 取りあえず、帆船のリビングにシオンとレマを集めて、オルワ氏が亡くなった事を話した。


「オルワ氏が亡くなった、いや殺されたのですか?これは、調査を依頼した方が良いですね」


 レマはキャリフォルニア星域軍の諜報部に調査を依頼するつもりだろう。俺も情報が欲しいので、許可する。


「シンデン、私サクラの所に行って良いかな」


 シオンは、サクラの様子が気になるので、様子を見に行きたいらしいが、そちらは許可しない。サクラは何か秘密を抱えている。それは、シオンでは対処できない物かもしれない。


「とにかく半日ほど待てば、情勢が変わるはずだ。それまで俺達はここで待機だ。幸いここは何も無い宇宙空間。海賊や宇宙軍もやって来る可能性は低い」


 二人に半日の待機を命じて、シンデンはコクピットに戻った。


>『さて、この状況、スミスは半日でどうやって対応するのかな』


 俺は半日の間、客室のサクラを観察していた。しかしサクラは全く動かなかった。本当に彼女は人間なのか、俺は自信が無くなってきた。


 ★☆★☆


 スミスが約束した半日が過ぎた。再びスミスに超光速通信を繋げたが、彼は通信に出なかった。せめて俺達宛にメッセージぐらい残せと言いたいが、スミスはそれどころじゃ無いのだろう。


「仕方ない。ロスア星域に戻るか」


「そうですね。半日たっても連絡が無いという事は、戻った方が良いでしょう」


 レマは諜報部で何か聞いたようだが、その内容をシンデン()には話さなかった。


「…」


 俺の判断に、シオンは黙ったままである。多分サクラの事を考えているのだろう。


 超光速航法を起動した俺達は、超光速空間でとんでもない光景を目にする。超光速空間にいたのは、イエル星域に向かうサジア星域軍の艦隊であった。つまり、サジア星域軍はイエル星域に軍事侵攻しようとしていた。


『これは一体どういうことだ?』


『イエル星域に向かっていると言うことは、聖地関係の軍事行動という事でしょう』


 シンデンの問いかけに、レマが答える。彼女はこれを知っていたのだろう。だからレマは聖地へ向かうことに反対していたのだ。


『知っていたなら教えてくれ。一旦超光速航法を解除するぞ』


>『これがスミスの策なのか。彼奴がサジア星域軍を動かしたのか。そんな力がスミスにはあったのかね~』


>『もう一度通常空間に戻りましょう。情報を集めます』


 電子頭脳と話し合った俺は、一旦通常空間に戻り、超光速通信を駆使して情報収集を始めた。現在イエル星域は、周辺のサジア、エプト、アリシの三つの星域から軍事侵攻を受けていた。軍事侵攻の理由は、「聖地の管理をイエル星域だけには任せられない」という、今まで起こった紛争と同じだ内容であった。しかし三つの星域が同時にイエル星域に攻め込むのは、今回が初めてである。


『戦争は良くないよ~』


『困ったことになりました。諜報部の予想以上の事になっています』


 シオンは戦争が嫌いである。そして、レマは頭を抱えていた。どうやらキャリフォルニア星域軍の諜報部は、サジア星域がイエル星域に戦争を仕掛ける事は知っていたが、他の二つの星域まで戦争に参加するとは知らなかった様だ。つまり、他の二つの星域が参戦したのは、スミスが原因だろう。


>『この状況で、俺達がイエル星域に入国するのは可能となったのかな?』


>『そうですね、イエル星域軍は、もう聖女なんてどうでも良いでしょう。それよりレリックシップ(遺物船)を所持しているマスターの参戦を求めてくるでしょうね』


>『入国はできるが、俺達が戦争に巻き込まれる可能性が高くなるか。まあそうなったら逃げだそう。魔石の情報は欲しいが、戦争には参加しないぞ』


>『魔石の情報は必要なんですけど…』


 イエル星域に入国できたとしても、その途端、星域軍が傭兵を徴発しかねない。緊急依頼と異なり、星域軍からの徴発に関しては、傭兵ギルドは関与しない。つまり、徴発については断ることは可能だ。そうなると、星域軍が強引な手段で帆船を押さえに来るかもしれない。しかしそれに対しては、傭兵は自衛戦闘を行っても良い。まあ普通は星域軍に勝てるわけは無いので、傭兵は大人しく従うだろうが、帆船なら星域軍と戦う事も逃げ出す事も可能だ。


『シンデンさん、聖地に向かって下さい』


 突然、俺にサクラが通信を送ってきた。イエル星域が戦場となることをサクラには話していない。唐突に客室の端末から、サクラはシンデン()に通信を送って来た。この通信は何を意味するのだろうと俺は考え込む。


『今イエル星域は聖地を巡って戦場となりつつある。聖地に向かえば、俺の船は戦争に巻き込まれる可能性がある。俺は仲間を危険な目には会わせたく無い』


 一応、俺はサクラの提案に反対してみた。まあ、本物のシンデンであれば、そう言うだろう。


『シンデンさん、私を聖地のある星、いえステーションに送っていただければ、私は依頼の完了を認めます。義父が亡くなったので、私でも依頼内容は変更可能です。依頼が完了すれば、シンデンさんは戦争が始まる前に逃げて下さい。戦争が始まるまで、私を届けるぐらいの時間の猶予はあるでしょう』


 今までほとんど話もしなかったサクラが、突然話し出す。確かに、オルワ氏が亡くなった今、依頼は養女であるサクラが内容を変更する事は可能である。そして、魔石の情報を得るには、彼女の提案に乗るしか無い。


>『さて、困ったな。電子頭脳さん、どうする?』


>『…魔石の行方は気になります。サクラを送り届けた後、スミスが暗号キーを送ってくるかは不明ですが、その場合は、取り立てに向かうしか無いですね』


>『そうか、後はレマの意見を聞いてみるか』


 電子頭脳は魔石の行方を知りたいので、サクラを送り届ける事には賛成した。後はレマの…キャリフォルニア星域の諜報部の意見を聞いてから、俺は判断することにした。


『レマ。今サクラさんから「依頼内容を変えて、ステーションでも良いので、送り届けて欲しい」と言われた。そして依頼完了後、俺達は、逃げ出しても良いとのことだが、どう思う?』


『キャリフォルニア…いえ、私としては、シンデンが戦争に参加しないのであれば、問題は無いと思います。ですが、危険な所にサクラさんを一人残して逃げるというのは、どうでしょうね』


 モニター越しにレマはシンデン()を睨んだ。まあ、レマの知るシンデンならそんな事はしないだろう。


『俺にも色々事情がある。サクラさんを危険な場所に置き去りにするのは、確かに俺の主義に反する。しかし、本人がそう望んでいるのだ、俺は受けても良いと考えている』


『…分かりました。私はシンデンのチームのメンバーです。貴方の判断に従いますよ』


 レマは俺に判断を投げてきた。シンデンが生きていたなら、恐らくサクラを聖地には送らないだろう。シンデンだけなら、サクラを送り届けてから連れ戻すぐらいの事はやるかもしれない。だが、シオンやレマを巻き込むことは無いだろう。

 シオンやレマのことを考えるなら、戦争に巻き込まれる様な行動は避けるべきだ。しかし、小さな危険(地域紛争)から逃げ出していては、大きな危険(ヤマト級の復活)を回避することはできない。


>『シオン…いや人類に取っては、魔石の行方を探る事の方が重要だからな』


>『はい。バックアップ霊子()の判断は間違っていません』


 電子頭脳はそう言ってくれる。それに、帆船と雪風であれば、戦争に巻き込まれたとしてもシオンやレマは守れる。イエルやサジア、エプト、アリシ星域と険悪な状態になる程度は覚悟の上だ。


『決めた、イエル星域に向かうぞ』


 再度超光速航法に入った帆船は、サジア星域軍の艦隊と一緒にイエル星域に向かう。民間の船は危険を察知して逃げ出したようだが、代わりに傭兵達の船がイエル星域に向かっていた。傭兵達は、イエル星域軍の徴用に応じるつもりなのだろう。

 他の星域軍はそんな傭兵の行動を制止しない。傭兵がどの星域に荷担するかは、傭兵が決めることだ。こういった場合、傭兵の行動を制限しないことが、星間ルールで決められている。権力を使って傭兵を囲い込んでしまうような星域は、他の星域から危険な星域と見なされて攻め滅ぼされてしまう。傭兵を振り向かせるのは、権力では無く金を使うしかないのだ。そして、聖地を持っているイエル星域は、他の星域に比べ金を持っている。そして傭兵がある程度集まれば、イエル星域も戦争に勝てる可能性がある。だから傭兵達はイエル星域に向かっているのだ。


『その船、傭兵のシンデンだと見たが、貴殿もイエル星域に雇われるつもりか?こちらに加わってくれれば報酬は思いのままだぞ』


 帆船を見てシンデンと気づいたサジア星域軍の有人艦から、光通信が入ってくる。星間ルール通り、権力ではなく金で囲い込もうとする。シンデンを知っているなら、帆船が敵に回ることを阻止したいのだろう。もちろんシンデン()は、その様な通信が来ることぐらい想定済みである。


『イエル星域に人を届ける依頼中だ。依頼をこなすだけで、俺は戦争には参加しない』


 シンデン()は通信を送ってきた有人艦にそう返信する。有人艦の艦長は、俺の返答を受けて納得したのだろうか、特に進路を遮ったりはしなかった。まあ、そうなった場合は、別な航路を進むだけである。


 イエル星域に近づくと、サジア星域軍とイエル星域軍がにらみ合っていた。この状況ではイエル星域軍は、俺達に「聖女を渡せ」などとは言わず、帆船の入国を認めた。もちろん、「戦争に参加してほしい」と通信を送ってきたが、それは無視する。当然イエル星域軍は怒るが、他の星域軍とにらみ合っているのに、帆船を拘束する為に戦力を出す事などできない。帆船は傭兵達の船に混じって、イエル星域に入り、聖地のあるエレム恒星系第三惑星マーロに向かった。


 ★☆★☆


 航海中に、同行していた傭兵から光通信が送られてきたが、シンデンの個人的な知り合いである傭兵の通信には応対した。知り合いと言っても、いつ殺し合うか分からないが、それでも知り合いの傭兵との付き合いは大事なのである。もちろん「戦争には不参加」と知り合いには返答しておいた。そんな事をしている間に、帆船は無事エレム恒星系に辿り着き、マーロのステーションに到着した。


 ステーションは、イエル星域軍の徴用に応じる傭兵達であふれかえっていたが、俺達は優先的に宇宙港に停泊することができた。これはレリックシップ(遺物船)を持っているシンデンを「戦争に参加させたい」というイエル星域の意思表示だが、俺はそんな思惑など無視するつもりだ。


「それでは、これでオルワ氏の依頼は完了した。サクラさん、本当にこれで良いんだな?」


「はい。ここまで送っていただき有り難うございました」


 シンデン()は、傭兵ギルドでサクラと共に依頼完了報告を行った。本来の依頼では、「聖女を聖地まで送り届ける」だったが、サクラが「聖女をマーロのステーションに送るまで」と依頼内容の変更をした。その瞬間、シンデン()の依頼は完了した。後は、サクラが手荷物を聖地に運び込んで、スミスが暗号キーが送ってくるのを待つだけである。


「本当にサクラさん一人で、聖地に向かうのか?」


「はい、私一人で大丈夫です」


 最後にもう一度サクラに確認するが、彼女は「一人で大丈夫」と言い張る。まあ、本人がそういうのだから、シンデン()から護衛するとも言い出せない。


 傭兵達は戦争に向けて準備中だから、サクラに注意を払っていない。しかし惑星に降りれば、「聖なる星」の信者が彼女を待ち構えているだろう。サクラがどの派閥に参加するか不明だが、俺はそんな事には興味が無い。俺が知りたいのは、聖女が得る「聖なる力」やレリック(遺物)だった。それに、サクラが運んだ手荷物の中身や、それを聖地でどう使うかも知りたい。戦争が始まるまでまだ時間はある。サクラが聖地に移動するまでの間ぐらい待つつもりだった。まあ戦争が始まったら、直ぐ逃げ出すつもりだ。


>『電子頭脳さん、遺跡と聖地について、何か分かった?』


>『聖地と呼ばれる建造物は、本船のスキャンを阻害する物質で覆われています。よって現地に行って、直接観測する必要があります』


>『人型ドローンでサクラの後を追わせて、遺跡と聖地を調べよう。ステルススーツを着せておけば大丈夫だよな?』


>『上空から見たところ、遺跡を作った異星人の技術レベルは判明しました。遺跡はスキャンはできませんでしたが、本船の作ったステルススーツを見破るほどの技術はないと推測します』


>『じゃあ、人型ドローン(シンデン)にステルススーツを着せて送り込むぞ』


 ステルススーツを着た人型ドローン(シンデン)が、姿を消して帆船から下りた。そしてシンデン()と入れ違いに、サクラを尾行する。


 サクラは言った通り、本当に一人で軌道エレベータに乗って、惑星に降下した。軌道エレベータの部屋の中では、ハサのステーションの様な、サクラを中心とした人の輪は発生しなかった。逆にサクラを護る様に「聖なる星」の信者と思われる男が壁を作っていた。


 惑星に降りると、サクラは遺跡までタクシーに乗った。人型ドローン(シンデン)は、監視カメラの無いところで、光学迷彩を解除して、観光バスに乗り込んで遺跡に向かった。

 人型ドローン(シンデン)とサクラは離れてしまったが、衛星軌道上から監視しているので、サクラの乗ったタクシーが順調に遺跡に向かっている事は分かる。


 サクラの到着から一時間遅れで、人型ドローン(シンデン)は遺跡に到着した。聖地がある遺跡は、マヤ文明の遺跡のような建築物であった。

 人型ドローン(シンデン)が到着した時、サクラは遺跡の長い階段を登っている途中だった。ステルススーツで姿を消した人型ドローン(シンデン)は、彼女を追って階段を駆け登っていった。


 サクラが長い階段を上り、聖地と呼ばれる場所にたどり着く。同時に人型ドローン(シンデン)も彼女に追いついた。周囲を見回すと、「聖なる星」の信者は、これからサクラ(聖女)が聖地に入ることを知っているのだろうか、遺跡に向かって祈りを捧げていた。


>『あれが聖地なのか?』


 人型ドローン(シンデン)が聖地に視線を移すと、そこには双三角錐型のクリスタルが浮かんでいた。透明なクリスタルの様に見えるが、内部に何か細かな文様が浮かび上がっているので、あれがレリック(遺物)なのだろう。

 サクラがクリスタルに触れれば、聖なる力とやらを得るはずだ。しかしサクラはクリスタルに触れずに、その前で手荷物を広げ始めた。重箱のように見えたそれは、人の頭が入る程の箱だった。周囲の信者も、サクラの行動を黙ってみているだけだった。

 そして、サクラが箱から取り出したのは、人の脳(・・・)が収められたユニットだった。周囲の信者は驚くが、サクラの行動を止める者は居なかった。


>『電子頭脳さん、あの脳のユニットは、霊子力兵器?』


>『いえ、霊子力兵器ではありません。クローン脳を生かしておくためのユニットです。彼女は一体何をするつもりなのでしょう。それにあのクリスタル(レリック)、どこかで見た気がするのですが…』


 電子頭脳がクリスタルの正体を突き止めるため、メモリーを検索する。どうやらクリスタルに似た物がメモリーに記録されているらしい。それを今検索していた。


 サクラは、脳が収められたユニットをクリスタルに近づけた。脳ユニットがクリスタルに触れると、そのままクリスタルに吸い込まれた。脳ユニットが中心に収まると、クリスタルは、輝く粒子(霊子)を放出し始めた。


>『バックアップ霊子()、すぐにレマを帆船に呼んでください。このままでは彼女が危険です』


>『レマが危険なのか。分かった直ぐにこの船に来るように言おう。それで、クリスタルは一体どんな機能を持ったレリック(遺物)だ?』


 シンデン()は「緊急事態だから帆船に集合」と叫んで、レマとシオンを帆船に呼んだ。そして二人が帆船のリビングに集まると同時に、電子頭脳から俺にクリスタルについての情報が流れ込んできた。


>『あのクリスタル(遺物)は、霊子力を使って、生命体(・・・)の意識を操る機能を持っています。霊子力で生物を操る方法は、創造主も使っていましたが、使い魔などに使う為の技術でした。創造主が使っていたデバイスは、あれほど巨大ではなかった為、クリスタル(遺物)の機能を特定するのに時間がかかってしまいました。

 あのクリスタル(遺物)は、異星人の支配者が臣民を支配する目的で作ったシステムの中枢と推測します。本来はクリスタル(遺物)に触れて意識を操作するのですが、現生人類では、それが不可能だったのでしょう。聖女や聖者とは、クリスタル(遺物)の霊子力と同調可能な才能を持った生命体(・・・)だと推測します。支配者がクリスタル(遺物)のシステム管理者とするなら、聖女や聖者とは、クリスタル(遺物)サブ管理者のような存在です。支配者が全てを管理するのは大変です。だからサブ管理者が、自分の配下の臣民支配するシステムになっています。サブ管理者(聖女や聖者)は、クリスタル(遺物)に触れることで、霊子力を使ったパスが脳内に作られます。また、サブ管理者(聖女や聖者)は、彼等が支配する人類に、同様の霊子力を使ったパスを作る事が可能です』


>『なるほど。…ん?その説明だと、支配者が居ないはず。何故クリスタル(遺物)はサブ管理者(聖女や聖者)を作ったんだ?』


>『先ほどまで、あのクリスタル(遺物)には支配者が設定されていませんでした。その為、サブ管理者の適正がある生命体全てに、クリスタル(遺物)は仮のサブ管理者権限を与えていたと推測します。仮の権限では、人の意思を完全に支配する事はできず、信仰心といった曖昧な意識操作しかでき無かったので、宗教になったのでしょう』


>『なるほど。つまり、聖女や聖者はクリスタルの力を使って、自分の信者を増やしていたのか。人が三人集まれば派閥ができる。聖女や聖者が増えれば派閥も増える訳だ』


>『しかし、今あのクリスタル(遺物)は、脳ユニットを支配者として受け入れてしまいました。つまり、クリスタル(遺物)は、これからあの脳ユニットの意思通りに信者を動かすでしょう。サクラが何故あの脳ユニットをクリスタル(遺物)に運んだのか、意図は不明ですが、これで「聖なる星」の信者達は、全てあの脳ユニットによって支配されてしまうでしょう』


>『支配者はあの脳ユニットなのか。それで支配の影響は何処まで届くんだ?』


>『一度信者となった生命体は、どれだけ離れていても、クリスタル(遺物)の支配下に置かれます。霊子力のパスに距離は関係ありません』


 「聖なる星」の信者が銀河中にどれだけ居るか不明だが、それが突然一つの意思の元に行動を始める事になる。それを想像して、俺はゾッとした。今現在多数の星域軍が戦争を始めようとしていたのだが、彼等は恐らく「聖なる星」の信者である。つまり、四つの星域軍が、クリスタル(遺物)脳ユニットの支配下に入ってしまったことになる。


>『クリスタル(遺物)から霊子が放たれます。対霊子力フィールドを展開します』


 電子頭脳によると、クリスタル(遺物)から放たれる霊子の光は、霊子力兵器と異なり人を殺さない。しかし効果範囲(エレム恒星系)にいた人全てに、霊子力によるパスを強制的に作るらしい。これでこの恒星系は、俺達を除いてクリスタル(遺物)の支配下に入ってしまった。

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