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要塞の攻略法

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

>『困ったな、傭兵達を纏め上げて戦うとか俺にできるのか?』


>『マスターなら可能でしょう。しかしバックアップ霊子()がマスターと同じ事をできるか…難しいかも』


>『電子頭脳さんにそう言われると余計不安になるな』


> 電子頭脳と会話をしながらシオンの元に向かう。


>『シオンの周りに人だかりができてるんだけど。やっぱり何かもめ事が起きちゃったのかな?』


>『大丈夫です。掃除ドローン(響音)がシオンを守っております』


「シオン!」


 シンデン()は声に威圧(気)を乗せて叫ぶと、それだけでシオンを囲む人だかりを割った。


「シンデン!」


 シンデン()を見つけたシオンが駆け寄ってくる。シオンはどさくさに紛れて抱きつこうとしたが、それは手で押さえつけて拒否する。


響音(おとね)、状況を説明しろ」


「Yes,Master」


 何故か英語で返事を返す響音(おとね)だが、それが様になる。

 響音(おとね)から聞いたところ、シオンが傭兵達に絡まれたのは、彼女がシンデン()と組んでいることが原因らしい。何せシンデンは依頼で組むことがあっても、それ以外は基本一人で行動する傭兵だ。そこに駆け出しのCランク女傭兵が、AA++ランクのシンデンと組んでいると聞かされては、今までシンデンと組みたいと思っていた傭兵達に妬まれてもしかたない。


「余計な事(親子だとか、恋人同士とか)を言わなかっただろうな」


「えーっと」


 俺の追求に目を逸らすシオン。どうやら何か余計な事を言ったようだ。


「俺がシオン(こいつ)をチームに入れているのは、こいつの保証人(・・・)が俺だからだ。だから、駆け出しの間は面倒を見てやっているだけだ!」


 シンデン()がそう言うと、傭兵達の間にざわめきが広がる。


「シンデンの女じゃ無いのか」


「保証人って、なんだ?」


「保証人になるほど、惚れ込んでいると言うことか?」


「俺もシンデンさんに保証人になって貰いたい」


「チッ、AA++ランクともなれば、駆け出しの女傭兵もよりどりみどりかよ」


 不穏な発言も聞こえるが、無視だ。シンデン()が来た事で、傭兵達は散っていった。


「今後余計な事を言うなら、傭兵を止めさせるぞ」


「…ごめんなさい」


 シオンを叱り、二人から依頼の報告と雪風の登録がどうなったかを聞く。


「海賊船の残骸とステーションの破壊(CG合成映像)の提出で海賊退治の依頼は成功と判定されました。雪風の船体登録についても問題無く終えました」


「うん、人型ドローン(響音)が全てやってくれたわ」


 シオンは響音(おとね)を嫌っているくせに、依頼報告から雪風の登録までほとんど彼女にやって貰ったようだ。


「次は自分でやるんだぞ」


「…努力します」


 今は、シンデン()はシオンを睨む程度で済ませる。俺としては、将来的にはシオンには傭兵の受付の仕事はできるようになって欲しいと考えていた。今のシオンはシンデンに依存しすぎなのだ。シオンは精神年齢的には十二歳の子供だからシンデンを頼るのは分かるが依存は不味いと思っている。その辺は追々矯正していくつもりだ。


 本当ならシオンの育成計画(何処のゲームだ)を実行予定だったが、今のシンデン()は、ギルド支部長から頼まれた「傭兵達を纏め上げて要塞級レリックシップ(遺物船)と戦う。犠牲はなるべく出さない」という依頼をこなさなければならない。俺も人が死ぬのは見たくないので、その辺は手を抜きたくない。


>『電子頭脳さんは、どうすれば良いと思う』


 困ったときのド○えもんならぬ電子頭脳便りな俺である。


>『傭兵は各自が得意とする依頼に応じた戦力を保持しています。それは星域軍のような集団戦を考えた様な戦力ではありません。つまり、傭兵を星域軍の様に指揮することは不可能です。各傭兵の戦力を見極めて戦いに参加させる必要があるでしょう』


>『なるほど。傭兵はチーム毎に最適なパーティを組んでいると。ああ、何となくイメージが見えてきた。ゲームで言うところの、レイド戦をイメージすれば良いのか』


 俺は、今回襲ってくる要塞級レリックシップ(遺物船)をレイドボス、傭兵達はそれに参加するプレーヤーと考える事で、傭兵の纏め方について考えが纏まった。


>『レイドボスという単語の意味は分かりませんが、バックアップ霊子()のイメージしている戦い方は理解しました。それが傭兵達を纏めて戦う上で最適な方法と思われます』


>『そうなると、各傭兵の戦力の分析が必要か。其方は電子頭脳さんに任せるとして、後は傭兵がシンデン()の指揮に従うかだな。強制依頼に巻き込まれた傭兵の士気は最低だろうし、ランクが高いからといって、シンデン()に従うか不明だな』


『マスターと異なり、傭兵達はグループを作っています。そのリーダーに話を付ければ良いかと』


 電子頭脳が、強制依頼に参加させられた傭兵達のリーダー一覧を出す。


>『二十名程か。それぐらいなら話を付けるのも可能か。ギルド支部長に言ってリーダーを集めて貰おう。あと、要塞級を攻略(・・)する作戦だが、こんなことは可能か?』


>『…』


 俺が思いつきで考えた作戦について、電子頭脳は考え込んでしまった。どうやら不可能では無いらしい。電子頭脳が考え込んで(演算中)いる間に、シンデン()はギルド支部長を捕まえて、傭兵達のリーダー格である連中を集めて貰う事にした。


 ★☆★☆


>『さて、リーダーは全員集まったか』


>『はい全員そろっています』


 一時間ほどで傭兵ギルドの一室に傭兵グループのリーダーである連中が集まった。まあ、全員一癖も二癖もありそうな連中である。


「おい、お前が俺達を集めたのか。シンデンと言えば凄腕と聞いたが、女連れとは期待外れだな」


「ケッ、さっさと話をしてくれよ。こっちは強制依頼なんて受けさせられて最悪な気分なんだよ」


「…」


「シンデンとは一度戦って見たかった。できれば一度お手合わせ願いたい」


「おいおい、後ろのねーちゃん、TOYO社製の奴じゃないか。そんな物連れて俺達をなめてるのか!」


「腹減った」


ホーム星域()に帰りたい」


 うん、真面目に話を聞く気の無い連中ばかりであった。


>『まあ想定通りだな』


静まれ(・・・)


 シンデン()は言葉に乗せて気の波動(威圧)を連中にぶつける。先ほどシオンを取り囲んでいた連中より多めに気を込めたので、若干物理的な衝撃波がでてしまい、部屋の照明が少し壊れてしまった。


>『無駄な破壊活動をしないで下さい』


>『すいませんでした』


 会計処理プログラムには平謝りするが、この気の波動をぶつけた事で、傭兵達はみな黙ってしまった。まあ一人ほど気絶していたが、すぐさま響音(おとね)によって気絶から覚醒させられていた。


「俺はAA++ランクのシンデンだ。まあ名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。皆に集まって貰ったのは、今回の強制依頼で俺がお前達の指揮をとることになったからだ。各傭兵グループは俺の指示に従って動いて貰う。これはギルド支部長からの依頼でもある」


 シンデン()がそこまで言ったところで、リーダーの何名かが露骨に嫌な顔をする。ランクはA~BBと、この中では高ランクの連中で、先ほどの威圧も受け流してた強者である。


「俺がどうしてお前の指示に従わなきゃいけねーんだよ」


「おう、俺のチームは自分の判断で戦う。お前の指示に従って戦うとか願い下げた」


「シンデン。貴殿は確かにAA++ランクとこの中で最も高ランクの傭兵だ。しかし、仲間を持たない一匹狼の貴殿が、我らに的確な指示を出せるのか甚だ疑問である」


 彼等はシンデン()の指揮能力や自分達が最前線に立たされ、使い潰されることを警戒しているようだった。まあ古来より傭兵はそういった使われ方をする。しかし俺はそんな気は無い。


「今から作戦を説明する。これを見ろ」


 俺の背後に表示されたのは、要塞級レリックシップ(遺物船)との作戦概要である。


「マジかよ、本気でこんな作戦ができるのか?」


「こんな事が可能か…いや貴殿が言うのであれば可能なのだろう」


「しかし、この作戦ではお前が一番危険な役目となるが、それで良いのか?」


 シンデン()が出した作戦をみて、傭兵達は驚く。電子頭脳も俺が言うまで、その様な作戦は検討すらしないレベルの内容だったのだ。まあ、それは電子頭脳が帆船だけで実行可能な作戦を考えるからである。その辺は人間の方が柔軟な思考を持っていると言うことだろう。


「ああ、傭兵が一丸となれば可能だ。俺が危険だと、AA++ランクの傭兵をなめるな。既に相棒が作戦のために作業に入っている。後はお前達が俺の指示に従うかどうかだ」


 シンデン()が周囲を見回すと、傭兵達は皆やる気になっていた。


「良し、では作戦に取りかかろう」


「おう」x20


 傭兵達は俺の作戦を了承した。


 ★☆★☆


 俺が立てた作戦とは、全長百キロメートルもある要塞に、これまた全長百キロメートルの小惑星をぶつけてやろうというものである。恒星系には必ずといって良いほど小惑星が存在する。中には貴重な金属資源を含む物もあるが、大概は無価値な物だ。それを一つ引っ張っていって要塞級のレリックシップ(遺物船)にぶつけるだけだ。簡単な作戦だし誰もが思いつきそうな話である。俺も某銀河の伝説や某レンズな話から思いついた作戦だ。


>『過去に誰かがやっていそうな作戦なのに、実施例が無いのが不思議だな』


>『本船が全火力を集中すれば、百キロメートル程度の小惑星なら簡単破壊できます。よってその様な作戦は検討もされませんでした』


>『なるほどね。ちなみに今回のターゲットである要塞級レリックシップ(遺物船)が、小惑星を破壊できる可能性は?』


>『傭兵ギルドから提供されたデータを見る限り、破壊するだけの威力を持った兵器は搭載されて無いと思われます』


>『まあ、破壊されても小惑星がやって来た方向に進路は変えるだろうな。それで十分だ』


>『傭兵達の船の性能のばらつきが不確定要素でしたが、宇宙港およびステーション外の宇宙船をスキャンしたところ、本船がサポートすれば問題の無い範囲です』


 この作戦、百キロメートルもあるただの岩を超光速航法で運ぶ手段、そして加速してレリックシップ(遺物船)に命中させるための軌道の制御が必要である。この作戦、人類の科学力を結集すれば可能だろうが、現在カント恒星系にある戦力では実現は不可能である。実際、電子頭脳は最初は不可能と結論を出したが、傭兵達の船と雪風を計算に入れることで可能と結論した。


>『最後は帆船と雪風の慣性制御システム次第だ。電子頭脳さん、本当に大丈夫か?』


>『計算上は問題ありません』


 要塞級のレリックシップ(遺物船)も馬鹿では無い。巨大な小惑星が近づいてくれば避けるだろう。そうなれば小惑星の進路を変更する必要があるのだが、その為には誰かが小惑星で慣性制御システムを使って進路変更をしなければならない。多数の戦闘ドローンの攻撃に耐えながら、小惑星に設置した慣性制御システムを守る事は傭兵の船では不可能だ。つまり帆船だけで行う事になる。傭兵達の主な役目は小惑星を超光速航法で運び、通常空間で加速させることだ。小惑星が要塞に命中するまでの間、戦闘ドローンと戦っても良いが、絶対に無理はするなと念を押しておいた。しかし、何人か無茶をやりそうな連中がいるのが困りどころである。シオンの雪風がサポートする手はずだが、不安である。


>『小惑星の方の作業状況は?』


>『二日後には準備完了します』


>『さて、今度はどんな作戦名にするかな』


>『バックアップ霊子()は、傭兵達のやる気をなくさない作戦名を考えて下さい』


>『分かったよ』


 二日の間、俺は真剣に作戦名を考えた。


要塞攻略は色々(亜光速ミサイルとかBH爆弾とか)考えたのですが、お約束の方法にしました。

傭兵達の活躍の場があるかは、明日の気分次第ですw


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