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傭兵生活とシオンへの課題

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 アールランド星域でシオンと合流した後、俺達はキャリフォルニア星域から遠く離れたトーサン星域で傭兵活動を開始した。

「今回も船団護衛の依頼なの?」


「お前の傭兵ランクを考えるとそれが妥当だ。帆船は維持費が掛からない。だから船団護衛の任務で十分金は稼げる」


「シンデンなら、もっと危険な任務とか受けるんだと思ってた」


「俺一人なら星域国間の戦争への参加も考えるが、お前がいるのではそれは無理だ。金になるが、危険な依頼だ。もしお前が怪我でもしたら、俺は姉さんに合わせる顔が無くなる」


「私、シンデンは過保護だと思うんだけど。電子頭脳さんはどう思います?」


『そうですね。私としてももう少し資金を稼いで欲しいと思っているのですが…』


 シオンが傭兵として帆船に乗ることになり、電子頭脳(会計処理プログラム)を紹介した。響音(おとね)とは口も聞かないのだが、シオンは会計処理プログラムと馬が合うのか、良く話をしている。


>『おいおい、Cランクのシオンを戦闘に連れて行ってどうする。まあこの船なら問題は無いだろうが、万が一という場合もあるだろ。シンデンなら絶対止めさせるだろ』


>『ですが、このままでは私の考える本船の性能アップに要する時間がかかります。早くシオンさんをBランクに上げて、遺跡調査依頼を受けられるようになって欲しいのです』


>『遺跡調査依頼って、シンデンでも死にかけた、危険な依頼だろ。シオンをそれに連れて行くつもりなのか?』


>『はい。この船には船首像という気功術士の為の装備はありますが、魔法使い向けの装備はありません。それを見つけたいのです。まあ、人類が作った魔法使い向けの船もありますが、シオンさんの能力を考えると、もっと良い船を見つけたいのです』


>『それは分かるが、下手に遺跡に潜ってヤマト級の様なレリックシップ(遺物船)がいたらどうするのだ』


>『悪・即・斬』


>『電子頭脳マスタープログラムさんの本音は分かったよ。シオンを傭兵として育てるのは賛成だ。まあ、そろそろ護衛以外の依頼を受けても良いかなとは思う』


 会計処理プログラムは帆船の戦力アップのために、魔法使い向けの装備というか宇宙船を探したいらしい。ヤマト級レリックシップ(遺物船)とはいわないが、遺跡には電子頭脳も知らないレリックシップ(遺物船)が眠っている可能性がある。まあ電子頭脳は敵対するレリックシップ(遺物船)を見つけて破壊したいのだろうが、それに手を付けるにはもっと資金を貯め込んでからだ。


 この宇宙には傭兵ギルド以外にも冒険者ギルドと呼ばれる組織がある。遺跡の調査などは其方が本業なのだが、傭兵ギルドにも遺跡調査依頼が来るのは、遺跡が危険だからである。遺跡が存在する様な星系は、超空間航法で辿り着くのが難しい場所が多く、普通の船では簡単に難破してしまう。また、遺跡内部も某M粒子のような仕掛けで電子機器が動かず、ドローンが使えないという遺跡もある。中にはRPGゲームのように迷宮になっている遺跡も有り、途中には戦闘ドローンや遺伝子改良されたモンスターがいる遺跡もある。リアルでゲームのように剣士(気功術士)と魔法使い、僧侶(理力使い)でパーティを組んで調査している場所もあるのだ。


 閑話休題


「船団護衛依頼だけでは傭兵として成長はしないか。良し、今回何か適当な依頼があればそれにする。しかし、戦争や個人で戦うような危険な依頼は駄目だ。個人戦闘技術が上がらない限り、戦争や個人の護衛依頼はできない」


「ぐぬぬ。あの人型ドローンが強すぎるのよ」


響音(おとね)には手加減しろと言ってある。それに本物の船内制圧ドローンは、響音(おとね)より強いんだぞ」


 実際は響音(おとね)は並の船内制圧ドローンより強い。それに電子頭脳さんが色々手を加えたので、シンデン()でも気で体を強化して戦わなければ勝てない存在になりつつある。まあ、シオンも魔法を無詠唱で使えるので、船内制圧ドローンぐらいには勝てるだろうが、そんな事を言えば調子に乗ってしまう。

 俺も剣道で自分が強くなったつもりだったが、そんな自信など警察の達人によって簡単に打ち砕かれた。シンデンの記憶にある魔法使い達もシオンより強い者が多い。アマモさんから預かったシオンが傷つくことはさせられない。


「ふむ、この依頼は…」


 傭兵ギルドから送られてきた依頼リストの中に、俺はシオンに手頃な依頼を見つけた。電子頭脳に調査を依頼して、依頼主に問題が無いことも確認する。


「よし、この依頼を受けるぞ」


「ええっ、この依頼ってCランクじゃ受けられないよ」


「AA+の俺がいるから大丈夫だ。それに帆船を使いこなす為の訓練にもなる」


「帆船って…あの操舵室で操縦するの~」


 シオンは嫌そうに言うが、魔法使いである彼女では、船首像の機能を使いこなせない。今は帆船を乗りこなしてもらわないと困るのだ。


「とにかくこれを受ける。そうすればお前もCCランクに上がるはずだ」


「ランクが上がるのなら、頑張る」


 シオンは俺に少しでも近づきたいのか、ランクが上がるというとやる気を出した。俺は傭兵ギルドにその(・・)依頼を受けるとメッセージを送った。


 ★☆★☆


『シンデン、本当に海賊が襲ってくるの?』


『襲ってくる確率は高いが絶対ではない。その場合は襲われるまで何度でもやり直しだ』


『面倒な依頼だね』


『まあ、傭兵の依頼なんて面倒な物で当然だ。企業の警備部門で対応できないから傭兵に頼むんだ』


 俺達が受けたのは、コンテナ運搬船を襲う海賊の退治である。まあ俺がシンデンと入れ替わってしまったのと同じ内容ではあるが、あの時のような事が起きないことは電子頭脳によって徹底的に調査済みである。依頼もシンデンではなくシオンが受けている。

 CクラスのシオンのサポートにAA+クラスのシンデンがいるのはおかしいとか、誰も言わない。コネだろうが金の力だろうが、依頼を達成して傭兵ギルドに貢献すれば良いのだ。それに傭兵ギルドもシンデンとシオンが組んでいる状態で、シオンがCクラスのままではシンデンに依頼しづらい事もある。シオンの傭兵ランクを上げる事に協力的である。あからさまな贔屓をするわけでは無い。忖度レベルである。

 それに今回の依頼で、俺はシオンと海賊との戦闘は見守るだけである。船団護衛で海賊が襲ってくれば良かったのだが、この帆船は目立つため、海賊が襲ってこなかったのだ。だからこの依頼で、シオンに海賊を倒すという経験を積んでもらうつもりだ。


『コンテナ内で待機しているのが退屈なの』


『俺も我慢しているんだ。忍耐力が必要な依頼はもっとあるぞ』


 帆船が護衛に付いていたら海賊は出てこない。つまり毎度おなじみのコンテナに積まれて輸送されているのだが、この航路を通るのは三回目である。まあ一回ごとに報酬が増えるので問題は無いが、俺もいい加減襲ってきて欲しいと思っている。


 ★☆★☆


 海賊が出現するのは、超光速空間で運搬船の操縦者が休憩を取る無人恒星系である。海賊が出るなら、その恒星系で休息を取るのを止めれば良いのだろうが、運搬船の操縦者への負担や到着時間の都合上そこが最適な地点らしい。高速道路のサービスエリアでトラックが休憩するような感じだ。

 海賊が出るなら恒星系にAI戦艦や戦闘ドローンを配置すれば良いと思うが、企業や星域軍はそこまで金があるわけでは無い。


『海賊の出現を探知しました』


 電子頭脳から海賊船の出現報告がきた。


『シオン、出番が来たぞ』


『これで退屈な任務が終わるのは嬉しいけど、海賊との戦闘…私一人で大丈夫かな』


『危なくなれば俺が割って入る。問題は無い』


『分かった。電子頭脳さん、サポートお願いね』


『シオンさん、安心してください。海賊船も売ればお金になります。極力破壊しないようサポートします』


 ようやく出番が来たので、シオンは帆船の操舵室に立つ。


『海賊からコンテナの切り離し要請が届きました。後はお願いします』


『分かりました。コンテナの分離お願いします』


 運搬船の操縦者から連絡が入ると、シオンが応対する。俺はあくまでサポートだけだ。


 中型船二隻の海賊では、運べるのはせいぜいコンテナ一つであるので、全てのコンテナを奪うような事はしない。コンテナを一つだけ切り離して、残りは見逃すのがこの海賊のやり方であった。

 コンテナ一つだけとは言え、十数回も同じ航路で海賊にあったので、企業も護衛を付けたのだが、そうなると海賊は出てこなかった。俺達と同じようにコンテナに護衛を隠した場合もあったらしいが、海賊の船は攻撃より速度に特化した作りらしく、逃げられてしまった。傭兵や企業の武装船は、攻撃力や防御は優秀だが速度は出ない。AI戦艦や戦闘ドローンなら追いつけるだろうが、超光速航法に入られてしまえば追うことはできない。


>『さて、どんな海賊と会えるのか。楽しみではあるな』


 シンデンの記憶から海賊の情報は知ることができたが、俺自身がリアルに見たことは無い。


>『この海賊は人を殺さない、護衛から逃げ切るだけの装備を整えている事から、優秀だとは思います。海賊などやらずに傭兵をした方が安全に資金を稼げると思うのですが…理解不能です』


 電子頭脳(会計処理プログラム)は損得勘定で判断する。


>『海賊になるからには何か理由があるんだろうな。確か家系として海賊を営んでいたって話もあるらしい。生まれた時から海賊なら、そりゃ海賊するのが当たり前だろうな』


 ドー○一家の様に、巨大な戦艦級母艦を拠点に構えて、海賊を営む一家とか存在する。宇宙空間は広大だし、超光速航行せずに放浪しているなら見つけ出すのは難しい。


>『とにかくシオンの依頼は海賊の退治だ。なるべく海賊は殺さないようにサポートしてくれ』


>『善処します』


 シオンは頭は良くても精神的にはまだ十二歳の少女である。傭兵を続けている限り、いつかは人を殺す事になるかもしれないが、できるだけ不殺を貫いて欲しい。まあこれは俺のエゴのような物だ。


 ★☆★☆


 海賊の要求通り、運搬船は帆船が格納されたコンテナをパージして逃げ出した。海賊船はしばらくコンテナの周囲を巡って内部をスキャンしている。コンテナは帆船が偽装しているので、海賊のセンサーで見抜けるわけはない。


 ガコン


 二隻の海賊船から牽引用のワイヤーが取り付けられる。このまま海賊の巣まで運搬するのだろう。


『このまま運ばれて、海賊の巣までいったら海賊をやっつければ良いんだよね』


『うむ。しかし海賊の数が多いようであれば、逃げるぞ』


『えっ、逃げちゃうの?恥ずかしくない。それに依頼の失敗になるよね』


『馬鹿なことを言うな。勝てないと分かれば逃げるのは当たり前だ。傭兵として生きていくのなら、恥よりも生き残る事が重要だ。シン…俺も無理をして船を壊して借金をしてしまった。借金を返すまで非常に苦労したのだが、シオンはそんな目に遭いたいか?』


 星域軍の大部隊と互角に戦えるレリックシップ(帆船)なので、海賊が束になってかかってきても、船同士の戦いであれば勝てる。しかし、もし移乗攻撃されたら、数の暴力に負けてしまう。性能の良い宇宙船で傭兵を始めた金持ちの連中が、途中で死んでしまうのは、そういった場合が大半である。「戦いは数だよ兄貴」と言った人は正しいのだ。(霊子力兵器は除く)


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