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撤退戦

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

>『あのレリックシップ(遺物船)はどうして軍拡派の旗艦を攻撃したんだ。ブラックマーケットは軍拡派と繋がっているんだろ』


>『肯定。あの戦艦の狙いは霊子()の収集』


>『霊子()の収集って、そりゃどういうことだよ。あのレリックシップ(遺物船)は霊子を収拾できる?…いや、この船も貯蔵霊子()を持っていたな。お前と同じ時代に作られたって事はそういう機能があるのか』


>『肯定』


>『馬鹿野郎、そういうことは早く言え。あのレリックシップ(遺物船)を止めないと大変なことになる。帆船を出すぞ』


>『了解』


 帆船はコンテナをパージすると、倉庫内で折りたたまれていたマストを立てるなど船体を正常な状態に戻した。


>『宇宙()に出る方法は?』


>『コンテナ搬入経路を逆走』


>『通路を進むなら、人を巻き込まないようにしてくれよ』


>『安全確認良し』


 電子頭脳が猫のイラストを送ってきたが、俺は帆船の進路上に問題が無いか自分も確認する。安全確認はしっかりとやるべきだ。


>『良し!』


>『出港』


 倉庫のゲートを開放し、コンテナ搬送路を帆船は逆走していく。運搬中のコンテナや作業ドローンの幾つかを巻き込んだが、有人じゃないことは確認済みだ。


>『ステーションから離脱』


>『全速で戦闘宙域に向かうんだ』


 ブラックマーケットへの偽装ゲートを開いて宇宙に飛び出した帆船は、全速力で戦闘宙域に向かった。


 ★☆★☆


 -穏健派艦隊旗艦-


「禁忌技術を使った新型ドローンが前線から居なくなった事で戦況は五分と五分になったか」


穏健派(こちら)の艦隊の損耗率は三割を超えました。軍拡派(あちら)も同程度と思われます。このまま戦闘が続けばキャリフォルニア星域軍は瓦解します」


 副官の報告に、提督は腕を組んで考え込んだ。


「…ここが潮時か。全艦超光速航行の準備。艦隊は一時首都星を離れるぞ」


「それでは軍拡派に首都星が抑えられてしまいます」


「副官、今ここで星域軍が瓦解すれば、他の星域が手を出してくる。それにあのレリックシップが軍拡派の旗艦を抑えてくれているのだ、撤退のタイミングはここしか無い。首都星の奪回のチャンスは又ある」


「…はっ、了解しました。艦隊全艦に連絡、超光速航行を持って首都星より撤退…それで進路はどこに向かいますか」


「サーフランコ星系に向かうと伝えろ。あの恒星系の星域軍は穏健派ばかりのはずだ」


「了解しました、目標はサーフランコ星系」


 穏健派の艦隊は、超光速航行に入るために有人戦艦に終結し始めた。AI戦艦や戦闘ドローンは惜しいが、ある程度は超光速航法に入るまで壁となってもらう事になる。勝てると思って戦いを仕掛けた穏健派にとって、この戦いは惨敗も良いところだった。


 ★☆★☆


 -軍拡派艦隊旗艦-


「敵艦隊が戦線を後退させています。恐らく超光速航法で撤退するかと思われます」


「なに、せっかく新型ドローンまで出しておいて、穏健派を撤退させるなど…。ええいあのレリックシップ(遺物船)はまだ動きを止めないのか」


「はっ、新型ドローンが攻撃を仕掛けておりますが、魔法による防御シールドを発生させて効果が無いようです。通常戦闘ドローンによる攻撃は、レーザーやブラスター、対艦ミサイルまで装甲で無効化されている模様です」


「あの傭兵のレリックシップ(遺物船)並の性能だな。クローン脳ユニットの製造の為にブラックマーケットに置いておいたのは失敗だった。さっさと穏健派を片付けて星域軍で管理をすべきだった」


 軍拡派の提督はしかめっ面をして、パネルに映るレリックシップ(遺物船)を眺めた


「…提督、レリックシップ(遺物船)からの魔法攻撃が停止しました」


「本当か、先ほどまで魔法を連発していたはずだが?」


「はい、レリックシップ(遺物船)からの攻撃がブラスターとレーザーに切り替わりました」


 観測オペレータの言葉に副長が聞き返すが、レリックシップ(遺物船)の主砲には魔法陣が浮かんでおらず、代わりに高出力のブラスターをはき出していた。


「どうやら精神力が切れたようだな。良しこれならあの船を抑える事が可能だ。有人戦艦一艦隊と有人部隊をここに残してレリックシップ(遺物船)を確保させろ。我が艦隊は敵艦隊を追撃するぞ」


 提督は、レリックシップ(遺物船)が精神力切れと判断し、穏健派艦隊を追撃する為の指示を出した。


「しかし、敵艦隊を追撃するにはAI戦艦や戦闘ドローンの回収が間に合いません。それでは超光速空間から離脱した際に不利になります」


「副長、我々には超光速空間で戦える新型ドローンがあるのだ。決着は超光速空間でつけるぞ」


「はっ、了解しました。この宙域には、ブラボー艦隊のみを残して、残りは全艦超光速航行に入る準備をするように通信を送れ」


 穏健派艦隊を追いかけて軍拡派艦隊も超光速航法に入る準備を始めた。


 ★☆★☆


 ステーションから飛び出した帆船が、戦場に近づく頃には、軍拡派と穏健派双方が戦線を縮小し始めていた。


>『戦いが終息しつつある?どういうことだ。いやレリックシップ(遺物船)の辺りは戦いが続いているみたいだが…』


>『双方超光速航法に入る準備中。穏健派艦隊は、部隊の損耗率が三割に達した事による撤退行動。軍拡派の艦隊はそれを追撃する為と推測。戦艦は魔法の使用を控え精神力切れと偽装中(・・・)。それによって現在の状況となったと推測』


>『超光速航法で撤退か。…軍拡派はあの青い新型ドローンで穏健派を超光速空間で始末するつもりだな。レリックシップ(遺物船)の方は何故そんな偽装をしているんだ?』


>『有人兵器を効率的に撃破して霊子()の回収を行うのであれば、超光速空間で戦う方が効率的』


>『超光速空間じゃ有人戦艦しか存在できないからか。しかし、レリックシップ(遺物船)は有人部隊によって攻撃されているんだが、魔法を使いながら、超光速航法に入れるのか?』


>『可能。戦艦にはクローン脳使用の航法ユニットを作成する機能が存在。操縦者は魔法使いである必要があるが、超光速航法はクローン脳にて可能』


>『クローン脳のユニット作成機能って、もしかしてキャリフォルニア星域軍と企業はそれを使っていたのか?』


>『その可能性大。』


>『なるほど、それじゃあのレリックシップ(遺物船)がある限り、キャリフォルニア星域は禁忌技術の使用を諦めないってことか。…撃破する必要があるってことだな』


>『肯定』


>『電子頭脳は、同じ時代に作られたレリックシップ(遺物船)を沈めることに何も思わないのか』


>『肯定。あの船はマスター(シンデン)の主義と相反する存在』


>『電子頭脳さんはシンデンが好きだね』


>『本船の電子頭脳は感情機能を未搭載。本判断はマスターの意思を反映』


>『感情機能って、異星人はそんな物まで電子頭脳に組み込めるか。いや、まあ異星人の感情って人類と同じとは限らないか。それに人間だって本当に感情なんて理解できてるか不明だし…。まあそんな事で悩む前に、あのレリックシップ(遺物船)を撃破するぞ』


>『了解』


 ★☆★☆


 レリックシップ(遺物船)の拿捕を命じられたブラボー艦隊だったが、苦戦を強いられていた。


「精神力が尽きたと言う話であったが、まだ防御に魔法を使っているな。おかげで有人兵器による攻撃も防がれている。これは長期戦になりそうだな」


 有人兵器でレリックシップ(遺物船)を包囲し、早々に拿捕できると思っていたブラボー艦隊の提督は、予想外の戦況に焦っていた。


「提督、魔法使いの部隊はそろそろ精神力が持ちません。理力使いの部隊は戦線に復帰できそうですが、そちらを攻撃に回しますか?」


「いや、理力使いには本艦を含め魔法使い、気功術士部隊の護衛をしてもらう。相手はレリックシップ(遺物船)なのだ、戦いは慎重に行うべきだ。通常の攻撃が通用しないことは分かっているが、目くらましにはなる。気功術士部隊がレリックシップ(遺物船)に取りつく隙を作り出すのだ」


「はっ、了解しました」


 戦術オペレータは、提督の命令を受けてAI戦艦や戦闘ドローンを前進させて通常攻撃をしかけるが、レリックシップ(遺物船)は通常攻撃など魔法で防ぐまでもないと船の装甲で受け止めてしまう。そしてお返しとばかりに主砲からブラスターを放ってきた。


「流石レリックシップ(遺物船)。通常攻撃も三百メートル級とは思えない威力だな。これではAI戦艦も長くは持たない。…観測オペレータ、穏健派と我が方の艦隊は後どのくらいで超光速航法に入りそうだ?」


「は、はい、穏健派艦隊の無人兵器の回収率から考えますと、後数分で超光速航法に入るかと。我が方の艦隊はそれを追いかけて超光速航法に入る予定です」


「ふむ、そうすると戦場には星域軍の無人兵器がかなり取り残されるな。副長、残された無人兵器を我が艦隊に組み込むことは可能か?」


「穏健派の物は無理と思いますが、軍拡派(こちら)の物であれば可能です」


「良し、両艦隊が超光速航行に入り次第、残存する無人兵器を本艦隊に編入。それまでは現状維持だ」



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