ブラックマーケット散策と首都星への降下
誤字脱字のご報告ありがとうございます
電子頭脳と主人公との会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。
>『首都星ネットワークに接続できたんだ、シンデンの娘を探す事は可能か』
>『可能。しかしステーションのネットワーク経由での検索では、通信データ量の増加にて本船が見つかる可能性大』
>『やはり人型ドローンを首都星に降ろして、そこから検索するしかないのか』
>『肯定』
>『それじゃ、倉庫から出て地上に降りる手段を探さないとな。倉庫を出るには扉を開けなきゃだが、ステルススーツで姿を消しても扉の開閉してしまったら気づかれるな』
>『肯定。二分後に荷物搬入ドローンが倉庫に進入予定』
>『了解。荷物搬入ドローンが扉を開けたタイミングで倉庫の外に出よう』
電子頭脳の言う通りのタイミングで倉庫の扉が開く。入ってきたのはサングラスをかけた黒スーツの人型ドローンとコンテナを運ぶクレーンの様なドローンであった。
>『見つかりませんように』
ステルススーツを着た人型ドローンが、入室してきたドローンと入れ違いに足音もたてずに倉庫の外に出た。
>『成功』
気づかれること無く倉庫の外に出た人型ドローンは、電子頭脳の誘導でブラックマーケットの管理施設内を抜け出す。そしてステーションで監視されていない場所、まあ個室トイレだが、そこでステルススーツの機能で帽子を被った作業員に変えた。
>『ここまでは順調だな。次は地上に降りる手段だが…』
>『手段として地上往復のシャトル・バスと軌道エレベータが存在。シャトル・バスは理力使いによる個人別の検査が存在。その場合ステルススーツが発覚する恐れあり。検査の緩い軌道エレベータを推奨。軌道エレベータが利用可能となるのは二時間後』
首都星ローサンジェルでは、テロ防止のためシャトル・バスの搭乗時に星域軍の理力使いによる個人検査を行っていた。一方軌道エレベータは、大量の人や荷物を移動させるため、理力使いの調査も「軌道エレベーターに危険性が無いか」と言う大ざっぱな検査であった。
>『そうか、軌道エレベータのチケットを手配はネットで完了と。しかし二時間待ちか。ブラックマーケット関係者のIDを取得済みだし、何を扱っているか覗いてみるか』
>『…不要な行動は厳禁』
>『ああ、分かっている。しかし俺はこの未来世界の事は知らない。特にシンデンとして活動するなら、ブラックマーケット場所についても知っておくべきだと思うんだ。それに何か掘り出し物も見つかるかもしれないからな』
>『掘り出し物…了解。本船の強化に繋がる物の発見の可能性が存在』
>『電子頭脳さんも乗り気になったな。じゃあ見て回ろう。もちろん安全第一だし、シンデンの娘の捜索状況もチェックするぞ』
電子頭脳もブラックマーケットの探索に興味を示したことで、人型ドローンはブラックマーケットを覗くことにした。
ブラックマーケットの商品リストは電子データとして出ている物もあるが、リストに無い掘り出し物は見て回るしかない。もちろん偽物や不良品、実験の失敗作などが多いが、中には魔法や理力を使ったレリックもあった。まあ「魔法の剣-1」とか「呪われた鎧」とかだったので、誰が買うのか謎な物だった。現物は無かったがレリックシップも売りに出されていた。お値段は星域国の予算十年分ぐらいなので、買い手がいないようだった。解像度の悪い外観データを見せられたが、「戦艦ヤマト?帆船よりはマシだが、海上艦艇をモチーフにした宇宙船を作るのが、流行していたのか?」と俺は苦笑していたが、同じレリックシップなので対抗心でも芽生えたのか。電子頭脳がこれに食い付いて詳細なデータ提供を求めていた。
後、改造生物を扱っていた店では可愛いフェアリーも売られていたが、電子頭脳がその動きから小型の人型ドローンと見破ったので、俺はガッカリしたのだった。男の子ならロボットで戦う時に妖精とか肩に乗せたくなるだろ。そして極めつけはペ○パー君がレリック扱いされていたのをみて、俺は笑い転げてしまった。電子頭脳が即座に人型ドローンの制御を奪ってくれなければ、不審に思われただろう。
>『違法な改造品や改造生物、それに魔法を付与した武器か。まるRPGゲームの世界だな!シンデンの刀もブラックマーケットで入手したんだよな』
>『肯定。ゲームの概念は理解したが、非生産的な行動』
>『病気で動けなかったから、それぐらいしか楽しみが無かったんだよ』
以前育成ゲームについて電子頭脳に「理解不能」と言われたので、俺が生きていた時代のゲームについて説明を行ったのだが、電子頭脳にその楽しさを理解させることはできなかった。
★☆★☆
ブラックマーケットを見ている間に二時間などあっという間に過ぎてしまった。
>『そろそろ時間だな。軌道エレベータの待機スペースに移動しよう』
ステーションは首都星の軌道上を巡っているが、軌道エレベータは惑星の赤道上の位置に固定されている。つまり、ステーションと軌道エレベータが接近するときに、ステーションと軌道エレベータで移動させるブロックを交換することで地上との物資のやり取りを行うのだ。慣性制御や重力制御があるのだから軌道エレベータを使う必要が無いと思うのだが、惑星への人と物資の流通場所を決めておくことで、不審人物や物資の入国を監視できるという事なのだろう。
>『まあ、不審人物の取り締まりには失敗しているけどな』
>『人型ドローンはブラックマーケット関係者として正式IDを所持』
>『ステーションにそんな物があるんだから、星域軍の入星管理もいい加減なのだろうな』
>『理力による検査が行われる。不審な行動は厳禁』
人型ドローンに理力を感じる機能は無いため、理力による検査がどのような物かは実感できなかったが、周囲の様子を見る限り人間や生命体は理力検査中に「?」と何か感じていたようだった。
地上までは一時間ほどで到着する。その間もシンデンの娘の捜査状況をモニターしていたが、やはり見つかっていない。
>『俺は娘が預けられていた施設にいく。惑星の監視カメラのハッキングは任せるぞ。まあ電子頭脳さんなら問題無いと思うが、見つからない様に頼むぞ』
>『心配無用』
人型ドローンを介して首都星のネットワークに進入した電子頭脳が、惑星上の監視カメラを使って娘の捜索を行う。捜索依頼を受けた警察機構も同じ事をしているはずだが、人類のAIと帆船の電子頭脳では性能に大きな差がある。人型ドローンが施設に着くまでには、娘の行方が判明しているだろう。
>『施設は…、軌道エレベータと同じ大陸にあるのか。しかも歩いて行けるほどの距離か。まあ星域軍の息のかかった施設だから、近くにあるんだろうな』
軌道エレベータがある大陸は、観光客向けの店などもあるが、どちらかと言えば行政や軍事関係の施設が多い。軌道エレベータを中心に惑星の開発が行われたのだから、そうなるのも理解できた。俺は久しぶり大地を歩けることが嬉しくて、鼻歌を歌いながら施設に向かって歩き出した。
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