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傭兵ギルドへ

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 何かやりきった顔で響音(おとね)戻ってきた後。


『シンデン殿、貴殿の容疑は渡された証拠から無実と判明した。失礼な態度を取り申し訳なかった。我が艦はこの星系の監視の為通常空間に戻れない為、ここで貴殿とはお別れとなる。貴船の安全な航海を祈ります』


 巡洋艦からは親切丁寧な通信が送られてきた。


>『良く分からないが、俺達が無実だって事は伝わったんだな』


>『同意』


響音(おとね)も良くやってくれた。それで一体何を巡洋艦(あの船)でやってきたんだ?』


「私はマスターの命令を実行しただけです。それでは直ぐにあの方のお世話に戻ります」


 響音(おとね)に詳細を聞こうと思ったのだが、彼女はすぐさまシンデンの世話に戻ってしまった。マスターは俺なのに、何故か無視されている気がする。まあ、生身の体の無い俺よりシンデンの方が奉仕しがいがあるという事なのだろう。


 巡洋艦と分かれた帆船は、超光速空間から離脱して通常空間に出現した。ハーウィ星域ホルル恒星系、その第四惑星が可住惑星として開発されており、その衛星軌道上にある宇宙ステーションに傭兵ギルドの支店がある。帆船はそこに向かって進み始めるが、同じく第四惑星に向けて進む多種多様な宇宙船は、何故か帆船を避けるように進路を取り始めた。


>『周囲の船から避けられている気がするのだが、やはり帆船型のレリックシップ(遺物船)は悪目立ち過ぎるのか?』


>『マスターは星域軍とも事を構えるぐらいの凄腕の傭兵として有名。それに先ほどの巡洋艦との交渉も監視の対象。同行している船は本船を畏怖』


>『それって、男性向け人型ドローンで巡洋艦を制圧したとか思われてるのか。シンデンさんの凄腕の傭兵という評判が崩れたような』


>『否定。傭兵は粗野、野蛮、傾奇者と言われるぐらいの集団。人型ドローンの行為も誤差の範囲』


>『そうですか…』


 俺はシンデンの記憶から傭兵とはどのような連中かの情報を検索した。


>『傭兵…海賊と五十歩百歩な扱いか。それでも傭兵ギルドが成り立つのは、企業が自前で軍備を整えるより安いからか』


 大企業であれば自前の護衛組織を準備できる。しかし中小企業では宇宙船はまだしも常時超光速航法ができるパイロットを確保することは予算的に難しい。そこで傭兵と傭兵ギルドという人材派遣のような商売が成り立つことになる。傭兵のランク(信用度によってC、CC、CCC~AAA、Sと分類)によって値段は決まるが、最低ランクのCとかは自前の宇宙船も持っておらず、派遣パイロットとして雇われる。そこで金を稼いで自分の宇宙船を持ったり、企業に雇われたりするらしい。


>『シンデンのランクはAA+か。Sじゃないのは、幾つかの星域国と揉めているからだな』


>『肯定。本来、マスターの能力と本船の戦力であればSが妥当』


>『人付き合いも能力だよ。シンデンは人付き合いが苦手…いや、そういうわけじゃないか。うーん、シンデンはとんでもない物を残していったな…』


 シンデンの記憶を検索した俺は、彼がとんでもない物を残して死んでしまったことに気づいてしまった。


>『…まあ、この件はすぐにどうこうできないな。まずは傭兵ギルドで今回の契約の件を片付けないと…』


>『傭兵ギルドに向かう前に、マスターの状態の改善を提案』


>『シンデンの状態改善って、何をするの?バックアップ霊子()は書き込めないから、あの状態からどうしようもないだろ』


>『案を提示』


>『…電子頭脳さん、これは本気ですか?』


 電子頭脳が提案してきた案を見た俺は、生身であれば引きつった顔をしていただろう。それほどその()はインパクトがあった。


>『肯定。傭兵ギルドでは、マスターの生体認証が要求される可能性大』


>『響音(おとね)じゃなくてシンデンが出向く必要があるのか。…了解した。宇宙ステーションに着くまでには用意できるのか?』


>『既に製作済み。後は動作試験を行うだけ』


>『Ok。それで動作は電子頭脳がやるのか』


>『本船の電子頭脳では、想定外の状況となった場合、人類との円滑なコミュニケーションは不可能』


>『ああ、そうだね。じゃあ俺がやるしか無いのか』


>『肯定』


 宇宙ステーションに辿り着くまでの数時間。電子頭脳が作った()の動作試験と改良をすることになった。


 ★☆★☆


「おい、あれは…」


「お母さん、変な人がいる 「しっ、そんな事言っちゃ駄目」」


「メイドを連れている?何処かの金持ち、いや貴族なのか?それにしても…何故あのような姿で」


「メイドというか、あれはTOYO社のラ○ド…いや、人型ドローンか。それを堂々と連れ回すとは、」


 ハーウィ星域軍から連絡があったのか、帆船は特に問題無く宇宙ステーションに接舷した。そしてステーションに降り立ったシンデンは響音(おとね)を引き連れて傭兵ステーションに向かって歩いて(・・・)いるのだが、もの凄く目立っていた。


>『予想通りの反応で泣ける。しかし、この服を制御する通信は検出されたり妨害されないのだろうな』


>『肯定。人類の技術ではこの帯域の超光速通信は検出不可能。問題発生時は人型ドローンが補佐』


>『それは心強いことで』


 現在シンデンはステーション内を歩いているが、それは当然自力で歩いているわけでは無い。シンデンの体を外部から操るための服…いや服と言うよりは某暗黒卿が纏っていたような甲冑(当然色は黒一色)を着せて電子頭脳と俺が操っている。


>『シンデンの記憶じゃ、宇宙服を来て彷徨くような傭兵もいるとあったけど。…このステーションじゃそんな連中は見当たらないか。それにしても視線が痛い」


>『問題無』


 宇宙船デッキから歩いて数分の場所に傭兵ギルドはあったが、そこまで「痛い人」という視線を受けながら歩くことで、俺の精神がガリガリと削れていった。


「ようこそ傭兵ギル…ドへ」


 ようやく傭兵ギルド(入り口は自動ドアでは無く手で押し開けるタイプ)に入ると、受付の女性がシンデンの姿をみて、笑顔が引きつった。


「傭兵ギルド所属のシンデンだ。ハーウィ星域軍から連絡を受けていると思うが、キャリフォルニア星域での契約の不履行による指名手配の取り消しの申請に来た」


 シンデンはそう言って、受付嬢に傭兵ギルド所属を示すIDタグを差し出した。


「は、はい。えっと、シンデンさん。IDタグの確認は終わりましたが、その、本当にご本人かの確認をさせていただきたいのですが…。その、生態情報がスキャンできないので、できればその宇宙服を脱いでいただけると…」


 どんっ、とシンデンは受付カウンターに手を叩きつけた。


「全部脱ぐ必要があるのか?」


「い、いえ。生体パターンと網膜パターンだけで宜しいです。目を見せていただいて生身の両手をカウンターに置いていただけると…」


「そうか」


 怯える受付嬢を尻目に、シンデンはマスクの目の部分と手のひらの部分の服を解除する。そして手をカウンターに置くと、認証が完了したのだろう、受付女性がホッとするような表情を浮かべた。


「これで終わりだな。あの企業との契約は成功しているが、あっちはそう認めないだろう。ソレについては企業が禁忌技術を使っていた証拠をハーウィ(ここ)星域軍に提出してある。これで契約違反とはならないはずだよな」


「は、はい。そうなると思います。ですがその件についてはギルドマスターが「シンデン、こっちに来て貰おうか」」


 受付嬢の言葉を遮ったのは、筋骨隆々のプロレスラーのような体格をした男…ハーウィ星域傭兵ギルドマスターだった。


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