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星域連合緊急総会(8)スス星系大統領との会談とロスア星域との会談

誤字脱字のご報告ありがとうございます

電子頭脳と主人公バックアップとの会話ですが通信会話と区別できるように、『の前に>を付けるようにしました。

 SPリーダーの後を付いていくと、そこは旗艦の艦橋だった。もちろんそこにはメアリーがいた。旗艦はベル恒星系第三惑星のステーションに接岸するところであった。


「シンデンさん、今回の護衛までお願いしてしまい申し訳ありません」


「いや、これは護衛依頼の範囲だ。大統領が謝る必要は無い」


 メアリーが席を立ってシンデン()に駆け寄ろうとしたのを手で制止した。そうしている間に、旗艦はステーションに接岸した。


「では皆さん、降りましょう」


「「「「はっ」」」」


 大統領とSPがブリッジを出て行くので、シンデン()はSP達の最後について行った。


 ★☆★☆


「メアリー大統領、ようこそスス星域に。あらためて歓迎させて頂きます」


 カスシ外務大臣が旗艦のタラップから降りたメアリーを出迎えた。


「歓迎ありがとうございます」


 カスシ外務大臣と握手したメアリーは、宇宙港から重要人物移動用の乗用車に乗り込み、ステーション内を移動していった。メアリーが乗る乗用車にはカスシ外務大臣と双方のSPとシンデン()が乗り込んだ。傭兵であるシンデン()が乗用車に乗ることにカスシ外務大臣は嫌そうな顔をしていたが、メアリーが乗れと言うからには断るわけにも行かない。


 乗用車内で、カスシ外務大臣とメアリーがたわいのない星域の話をしている間に、車はステーション内でも一際豪華な建物の前に止まった。どうやらここがスス星域の迎賓館らしく、建物の前にはスス星域軍の兵士やドローンが警備を行っていた。


 カスシ外務大臣に案内されるまま建物に入ると、スス星域の大統領がいる部屋に通された。


「初めまして、メアリー大統領。同じ女性大統領として一度お会いしたかったのです」


「シモネン大統領。私も貴方とお話ししてみたかったのです」


 スス星域の大統領は六十代の女性だった。メアリーとはかなりの年齢差があるが、同じ女性大統領として双方とも直接会って忌憚の無い話をしたかったようだ。


 二人の会話はまあ星域大統領としての政治的な話や女性大統領としての立ち回り的な事を話していた。そして二人の話がベイ星域やルフラン星域での出来事になると、シモネン大統領の好奇心はシンデン()に向かった。


「なるほど、その護衛の傭兵…シンデンさんによってメアリー大統領は命を救われたと。二度も助けられるとは、なかなかドラマティックなお話しですね」


 六十代の女性だが、シモネン大統領は以外とロマンチストのようだった。


「ええ。出来れば彼にはベイ星域に所属して貰いたいのですが、フラれて続けております」


「でも、今は警護の依頼を受けておられますよね」


「あくまで傭兵として依頼で受けて頂いているだけです」


「なるほど、傭兵としての依頼ですか…」


 シモネン大統領の目がシンデン()に注がれることになった。俺やシンデンは基本的には政治家と無縁な存在なので、大統領という人から好奇心に満ちた目で見られるのは落ち着かなかった。しかしここで動揺するのは凄腕の傭兵というシンデンという姿では亡いので、堂々とその視線を受け止めた。


「…傭兵とは粗雑な方々のイメージがありましたが、彼は違うようですね。今度はスス星域から依頼を出しても良いでしょうか」


「ええ、シンデンさんは普通の傭兵とは違うようです。私に断らなくても、シンデンさんは傭兵ですので、指名依頼を出せば受けてくださるかと」


 女性二人の視線が痛いが、シンデンは無表情で耐えた。メアリーは「指名依頼を出せば受けてくれる」と言っているが、俺にはやらなければならない事が有るので、受けられるかは分からないと言いたかった。


「…それで、今回の総会ですが、メアリー大統領は『禁忌技術の使用について、再度星域間の合意を確認する』という話で総会を開かれましたが、何故今その様な事で総会を開かれたのでしょうか?」


 シンデン()が女性二人の視線に耐えていると、シモネン大統領がようやく本題であろう総会に付いてメアリーに質問を投げかけた。


「そうですね。近頃禁忌技術の使用について、各星域が星間ルールを守らない事例が出てきております。ベイ星域としては、その様な星間ルールを守らない星域が出ないように、もっと厳しく星間ルールを決めたいと思っているのです」


「最近というと、キャリフォルニア星域やロスア星域、イグラン星域でしょうか。ルフラン星域もそれに入るのでしょうか?」


「ルフラン星域についても、総会で取り上げるつもりでしたが、その前にミクロンさんが馬鹿な事をしましたので…。あの星域国はもう禁忌技術には係わらないでしょう」


 メアリーの発言を聞いて、シンデン()は彼女がミクロンがケイ素系生命体を使っている事を禁忌技術として考えていると思った。今帆船ではケイ素系生命体の素材を使った研究を行っているが、メアリーが総会でケイ素系生命体まで禁止にするとなると、使いどころが難しくなると思ってしまった。


>『電子頭脳さん、ケイ素系生命体の活用が禁止される可能性があるかもしれないな』


>『しかし、ヤマト級は禁忌技術によるクローン脳ユニットを使ってきます。マスターがクローン脳ユニットの使用を認めないのであれば、ケイ素系生命体素材を利用するしか有りません』


>『禁止されたとしても、あの素材なら詳しく検査されない限りバレないでしょう。レリック(探知機)でも通信を検出できないように改良しましたので、問題など有りません』


>『了解だ。まあ、メアリーがケイ素系生命体について何か話をしなきゃ問題ないだろ。今のところ人類でケイ素系生命体を所持しているのは俺達だけだからなら』


「メアリー大統領は、禁忌技術の禁止の厳格化だけを総会でお話しされるのでしょうか?」


「まあ、それは総会までの秘密と言うことで。スス星域だけ先に総会で私が話す内容をお聞かせは出来ません」


「ほほっ、そうですね。では総会でメアリー大統領のお話を楽しみにしております」


 メアリー大統領は、星間ルールの禁忌技術の使用について以外の議題も出すようだが、その内容は誰も知らなかった。旗艦のネットをこっそりハッキングしてベイ星域軍の会話も収集してみたが、噂話すら聞けなかった。


「(メアリーが何を言い出すか。それによっては…)」


 シンデン()はシモネン大統領と話をするメアリーをじっと睨んでいた。


 ★☆★☆


 シモネン大統領との会談を終えたメアリー大統領は旗艦に戻った。一旦そこでシンデン()はメアリーに頼み込んでサクラと会うための時間を貰った。


「ロスア星域の方と会うのですか?」


「少々縁があってな。スズカとカエデを連れて行くが問題ないな」


「私が旗艦にいる間は問題ないでしょう。しかし、ベイ星域大統領の護衛依頼中に他の星域の方に会うとか、かなり非常識な行動であることを理解してください」


「そうだな。少々迂闊だった、済まない」


 確かにベイ大統領の身辺を警護する傭兵が、他の星域の用心と会うというのはおかしい話であった。メアリーに指摘されるまで完全に頭から抜けていた。電子頭脳もこういった所は気づかないので、俺が注意するしか無い。


「私はシンデンさんを信頼しておりますので大丈夫です。私の方から話をしておきます」


「助かる」


 シンデン()はメアリーに礼を言うと、スズカとカエデを連れてロスア星域の旗艦に向かった。もちろんサクラには二人を連れて向かうと連絡を入れてある。


「シンデンさんですか。サクラ様がお待ちです」


 ロスア星域軍の兵士には話が通じているのか、旗艦への搭乗を認め、シンデン()をサクラが居る部屋に案内してくれた。


「失礼します、シンデン様をお連れしました」


「シンデンさん、お久しぶりです」


「久しぶりだな、サクラ。それで其方の方は?」


「此方は、ロスア星域の外務大臣のイゴリさんです。義父の…今は私達の同士です」


 シンデン()が通された部屋には、和装のサクラとスーツを着た中年の男が一人いた。彼はロスア星域のイゴリ外務大臣であった。


「君がシンデン君か。サクラさんから君の事は聞いておる」


 イゴリ外務大臣はシンデン()に握手を求めてきたので、シンデン()は握手するが、その手には力がこもっていた。どうやらイゴリ外務大臣はシンデン()に良い感情を持っていないようだ。


「イゴリさん、シンデンさんを困らせないでください。義父は納得して逝ったのです」


「…そうでした。失礼しました」


 イゴリ外務大臣は手の力を抜いてシンデン()と握手をしなおす。オルワ氏の件は彼に取っては納得のいかない事だったのだろうが、サクラの為にそれを押さえ込むだけの度量も持っていた。最もそれぐらいでなければ外務大臣にはなれなかっただろう。


「それで、後ろの二人がスズカとカエデですか」


「そうだ」


「スズカとカエデ…良く無事で…」


「サクラ姉さん」「サクラ。」


 サクラとスズカとカエデは三人で抱き合って再会を喜んでいた。取りあえずシンデン()とイゴリ外務大臣は席を外した方が良い感じだったので、隣の部屋に移動した。


「シンデン君は今ベイ星域大統領の護衛をしているようだが、ベイ星域軍に入るつもりなのか?」


「いや、俺はどの星域軍にも入らない。今回は指名依頼が入った事でベイ星域大統領の護衛をしている」


「…それは信じて良い話かな」


「ああ、信じてくれ」


「君のようなレリックシップ(遺物船)を持っている傭兵が一つの星域…いやベイ星域に加わるとなると、ロスアに取っては脅威となる」


「サクラがロスアに係わっている間は、少なくともロスア星域とは敵対しないだろう。まあ、ロスア星域が俺に喧嘩を売ってくるなら話は別だが…」


「いや、そんな事はしない。それにサクラさんにはオルワの後を継いで、彼の理想を実現して貰うつもりだからな。サクラさんがいる限り敵対しないと言うとこは、君もオルワの同士なのか?」


「いや、同士では無い。それにオルワ氏の考えは理解しているが、あの考えをロスア星域国民に無理に強制するようなら、俺は敵に回るだろう。サクラならそんな事をしないと分かっているだけだ」


「ふむ。儂ももちろんオルワの理想を理解しておる。何せ同士なのだからな。しかし全ての(・・・)民衆にオルワの高尚な理想を理解できるとは思えない。少々強引でも思想を教育することは必要だと思うが?」


「そうやって早急に事を進めた結果、オルワ氏は失敗することになった。貴方も気を付けてくれ」


「オルワの理想を壊した君にそう言われるか…。分かった。儂もオルワの二の舞は踏まぬ」


「そう願っている」


 イゴリ外務大臣との会話を終える頃には、サクラとスズカ、カエデの話は終わっていた。シンデン()とイゴリ外務大臣は三人が居る部屋に戻った。そこで五人で小一時間程オルワ氏の組織の運営についてサクラから話を聞いて、シンデン()は帰ることにした。


「シンデンさん、二人のことをよろしくお願いします」


「分かった。サクラ、困ったことがあれば俺を頼ってくれ。依頼があれば受けよう」


 シンデン()はイゴリ外務大臣を睨んでそういった。イゴリ外務大臣は苦笑していたが、特に何かを言う事は無かった。


 サクラとイゴリ外務大臣に見送られシンデン()はスズカとカエデを連れてベイ星域の旗艦に戻った。



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