3 初めてのお友達
「うひゃー……人多い」
そんなことを思わず呟いてしまう。それは両親が仲良く…いや、もうめちゃくちゃラブラブになって多分弟か妹が出来そうだという時期のこと。同年代で集まっての顔合わせのようなお茶会が開かれていた。
ーーーが、残念ボッチのコミ障には話しかける勇気もなく、また皆のお目当ては王子様なので隅の方でぽけーっとしてても誰も気にしない悲しい空気の中でのことだった。
やることもなく景色を眺めていると、ふと視線を感じて近くに視線をやると俺たちよりも少し年下に見える女の子が隠れてこちらを見ていた。
あー…これはどうすればいいのやら。うっかり話しかけて無礼者!みたいなフラグないよね?あったら怖いなぁと思いつつやることもないので近づいてからこっそりと言った。
「こんにちは」
「!?」
隠れていたのがバレてあたふたする姿がなんとも可愛らしいが、それよりも本物の金髪の女の子には初めて話しかけたので密かに感動している。
「えっと、何か用事かな?」
そう聞くが黙り込んでしまう。困ったなぁと思ってから思い出したように俺はクッキーを取り出して言った。
「良かったら食べる?」
「・・・いいの?」
こくりと頷くと受け取ってから、1口齧ってから驚いたようにぴょんぴょんするその子。美味しかったのかな?
「おいしい・・・」
「それは良かった」
衝動的になんとなく頭を撫でるとくすぐったそうにしてからぽつりと言った。
「あのね・・・おにいちゃんにあいにきたの」
「おにいちゃん?」
「アイラか?そんなところでどうしたんだ?」
後ろから聞こえてきた声にギクリとする。これってもしかしなくても・・・
「あ、おにいちゃん」
「君は確か・・・ホステス子爵家の」
「ダルキアと申します」
「どうやら妹が面倒をかけたようだね。すまない」
そう言ってから女の子の手にあるクッキーを見てから納得したように王子様は言った。
「それは君の家のものかな?」
「いえ、これは私の手作りです」
「それは凄い。食べてもいいかな?」
「え、えぇ」
王族として大丈夫なのだろうかと思いつつもクッキーを手渡すと1口食べてから驚いたように言った。
「これは・・・素晴らしいね」
「ありがとうございます」
さっきから他の貴族の子供から感じる妬みの視線が正直めっちゃ痛いが我慢せねば。そんなことを考えているとくいくいと女の子に袖を引っ張られる。
「だるきあ・・・」
「呼びにくかったら、ダルかルキで構いませんよ」
「だる、ありがとう」
そう嬉しそうに微笑むその子を見て王子様は少しだけ驚いたような表情を浮かべてから俺に微笑んで言った。
「では、私もダルと親愛を込めて呼ばせて貰おう。これからよろしく頼むダル」
「はい、殿下」
そうして、友達と言っていいのかわからないけど、初めて話せる人が出来た。ーーーめっちゃ雲の上の人だけど。