10 旅の終わり、旅の始まり4
祭りの後、いたたまれなくなったシェイナはすぐにマシニア国を出立した
なぜか一人増えてる気がするが気にしない
5人パーティなんて珍しくもないし、むしろ普通だ
ミューの後ろにリモット、その横にハノラそしてシェイナの横に寄り添うようにマーキナがいた
出立の時、マーキナはちゃっかり冒険の用意をしていた
そのまま何事もなかったかのよについてきて、今に至る
気にしないといったな?あれは嘘だ
やっぱり気になる
「あの、マーキナさん?」
「はいなんでしょうマスター」
「もうお見送りはいいんだけど?」
「そうですか、ではここからは付き添いとなるので気にしないでください」
「あぁ、そうですか」
納得はしてないけど彼女は一度言い出すとまったくいうことを聞いてくれないので
もう一緒に行くことにした
かなり嬉しそうだ
マーキナはアンドロイドと言ってもちゃんと感情がある
そこがマシニアの技術のすごいところなんだろうが、ここまで高性能なアンドロイドはマーキナしかいない
マシニアにいるマーキナ以外のアンドロイドには名前もなく、姿もどちらかというとロボットに近い
マーキナだけが特別なのだ
「ねぇマーキナ、君はどうして感情を持っているの?」
気になって聞いてしまった
「私ですか?」
「博士からはいつもお前は特別だと言われてきましたが」
「なぜなのか私にもよくわからないんです」
マーキナを作ったのはヴェルフレア・ノクトリウムという発明家だったそうだ
晩年彼はアンドロイドに感情を与える研究に没頭していた
何度も何度も失敗し、彼の寿命も尽きようとしたとき
研究室に雷が落ちた
その誤作動でマーキナは急に起動
走り出し、窓から飛び降りてしまった
幸い腕を損傷しただけだったが、そこからだ
マーキナはそこで自我を持ったらしい
心配して駆け付けたヴェルフレア博士に急に抱き着いた
「ハ、カセ、ハカセ、ワタシ、ワ?」
「ココは、ドコデすか?」
まるで今まで眠っていただけとでもいうように生き生きと感情を示し始めた
それからの彼女は非常に優秀だった
博士の助手をし、国の状況や周辺国の様子から新しい防衛システムを確立
もともと進んでいた技術は彼女によってさらに数百年は進んだと言われる
コールドスリープや国自体を動かし、海上と海底を自由に行き来できるシステムを開発したのも彼女だった
博士は彼女を誇りに思い、死ぬ間際に女王にマーキナを託した
彼女の感情は人間と同じ
悲しむし怒るし笑う
普段はそこまで感情を出してはいないが
シェイナの前ではよく笑っている気がする
彼女の感情は、彼女自身が望んだのかもしれない
「そっか」
それ以上は聞かない
「マスター、なぜ転送装置を使わなかったのですか?」
「座標を指定すれば一瞬ですのに」
マーキナに言われてちょっと恥ずかし気にこたえる
「みんなと旅をするのが好きなんだ僕」
「こうやって話すのも好きだし」
「死んでたからかな?今最高に生きてるって感じてるよ」
その答えにみんな
妖精冗句?と思った
なんだかんだでやっぱり旅は楽しい
あの時
転生する前、死ぬ直前に感じた闇にのまれていく不快感
それと同じ感覚が広がっていくのが分かった
心臓をえぐられた直後、消えていく意識
意識は深く闇に沈んでいく
もうだめだと思った
それでも意識はなかなか消えなかった
ずっと真っ暗な中をさまよっているかのように
出口を探していた
そこに三つの光が見えた
そこから刺し伸ばされる手
手を掴むと、意識が急にはっきりして、安心して、眠りについた
目を覚まし、自分を覆っている殻を破ると
ミューたちが心配した顔で見ていたというわけだ
復活
神の御業
恐らくそうだとシェイナは理解する
懐かしいあの声を聴いたから
「世界を、守って」
変わらず無口なあの声
それと同じ存在であろう他の二人の存在
それらがシェイナに加護を与えていた
愛女神の加護
勇女神の加護
静女神の加護
三柱の女神による加護
その加護の力ははっきり言って無敵と言ってもいいほどだった
愛女神の加護
超回復により肉体の損傷のほぼすべてを癒す
勇女神の加護
味方すべての戦闘能力を大幅に上げる
静女神の加護
魔法の威力を常に2段階引き上げる
これだけの加護があればちょっとやそっとでは死なないだろう
これなら、みんなを守れるかもしれない
これから目指すのは妖精の国
オベロンという妖精の王が治める国だ
そこまでの道のりは長い
それでも歩く
生きていることを噛みしめながら、仲間たちと一緒にいることを楽しみながら
オベロンはずっと出したかった妖精です
文献ではティターニアの夫です