黒と白の姉妹
クラハは国で歓迎を受けていたが、本人はそれが不服なようだ
正直クラハにとってはハクラ以外どうでもいい
ハクラさえ守れればいい
ずっとずっと一緒にいたい
今まで会えなかった分その思いが暴走しかけていた
だから、ハクラがもう一度旅に出ると言った時全力で反対した
仙力を行使し、閉じ込めるほどに
これはもはやただのわがままだった
愛しい妹を放したくない姉のわがまま
ハクラは困惑した
まさか姉がこんな行動に出るとは思わなかったから
仙術、桃源牢
中は時間が止まっており、その中にいれば決して老いることがない
それどころか、ずっと夢のような日々を過ごせる
それも幻などではない現実を味わえるのだ
ハクラを引き留めるための最高仙術を施したクラハ
牢の中からはずっとハクラが出してほしいとわめいているが
出したくない
この中でずっとハクラを愛でていたい
「姉様!聞いてください!」
「わらわはもう子供ではないのです!」
「この国を守る姫!」
「だからこそ強くならなくてはいけないのです!」
「ハクラ、私は一度お前を守れなかった」
「もうそんな思いはしたくないの」
「ここにいればお前は安全よ」
「ずっとここで私と暮らしましょう」
甘くささやくクラハの声は桃源牢によって催眠のようにハクラに浸透する
しかしハクラはそれを振り払うように自らの腕を切った
流れ出る血
「何をしているの!」
クラハは慌てて牢を解いた
すぐにハクラに駆け寄って傷をいやす
そのすきをついてハクラはクラハを拘束した
「ハクラ!お願い、これを解きなさい」
「嫌です」
「姉様が認めてくれないならわらわは一人でも勝手に行きます」
「!」
「ハクラ...お願いよ」
「私はお前が傷つくのを見たくないの」
悲しそうにハクラを見るクラハ
「姉様、わらわはあの時決意したのです」
「グランドルに攫われた時の地獄のような苦しみ」
「わらわ自身が強ければあのようなことにはならなかった」
「もっともっと強ければ国の者に心配もかけなかった」
「姉様、行かせてください」
「必ず、必ず姉様より強くなって見せます」
強くまっすぐな瞳でクラハを見る
「...」
「ねぇハクラ」
「これだけは約束して」
「もし命の危険があるようなら私を必ず呼ぶと」
「どこにいようとも駆け付けるから」
「ね?それだけでいい」
「私に、お前を守らせて」
最大限譲歩したのだろう
優しく笑ってはいるが目に涙を浮かべている
「わかりました姉様」
拘束を解く
もはやクラハは止めない
ハクラは無事クラハの許可を得た
その代わりマシニア製の通信機を持たされ、毎日の連絡をすることを誓った
翌朝、クラハに国を預け
ハクラとキリサメ、リンドウ
それに加えてアカネというクラハの部下を付けた四人で旅に出た
アカネは真っ赤な髪にチャクラムという武器を持ち、炎の扱いに長けた者で
帰って来たクラハを一目見て弟子にしてほしいと真っ先に言った猛者だ
当然ハクラ以外に興味のないクラハは断ったが
ハクラの監視に役に立ちそうなので弟子に取る代わりに逐一報告するよう言われている
四人はひとまずグランドルとは反対方向の海を越えた先
妖精族の住まう国ファーリーンへ向かうことにした
そのファーリーンからさらに南に行き、山いくつか越えた先に父親の故郷桃源郷があるからだ
姉クラハもそこで鬼子母神となった
修行の場として最適であると判断したからだ
童子に進化は果たしたが、それでも自分はまだ弱い
姉を越えるため、国を守るため、ハクラは決意を胸に旅立った
主人公は誰?って感じになってきてるな