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国葬

 守護者兼マキナ国女王の国葬はマキナ国で行われた

石のようになったシェイナの遺体は豪華絢爛な棺に納棺された

棺は葬儀の後、一番見晴らしのいい広場の代の上に一週間安置され

その間、国民、来訪者、誰でも祈りをささげることができるように解放されるようになっている


魔王、ミュー、リモット、ハノラ、様々な面々が彼女の葬儀に訪れた

皆一様に顔を伏せている

ミューに至っては棺の前で泣いていた

魔王もこらえきれず、嗚咽と涙をこぼす


ユグドラシオンの女王も出席していた

彼女は葬儀の後、守護者のいなくなった世界をどう守るか考えるため、早急に国へ帰った


「シェイナ、あなたは私たちを守り通して亡くなりました」

「あなたの雄姿をいつまでも、いつまでも忘れません」


魔王は泣きじゃくるミューを連れて魔王国へと帰る

帰還したその直後、ガルードラ陥落の知らせを受けた

王含め、兵や騎士、王宮にいる者は全て殺害され、魔導戦士アナフィアに至っては見るも無残な死体だったという


ただ一つ、逃げ切れたものからの情報には希望があった

それは、孫娘の存在

まことしやかにうわさされていた情報だが、冒険者となっていた故ガルードラ王子の足跡をたどることでその情報は確信へと変わった


王子は冒険者となった後、けがで引退

同じ冒険者仲間であった妖猫族の女性と夫婦になり、子供が生まれた

彼らは開拓村に移り住み、森の管理をしていたが

ある日、凶悪な魔物に襲われ両親とも死亡

残ったのは最愛の娘ただ一人

そして、その娘の名前もわかった


ミューロラル


魔王はすぐそばにいるミューを見つめる

進化しているとはいえ、精神的にはまだ子供

それに、勇者としての役目もある

シェイナのように自由に動ける女王とは違うのだ

彼女が担ぎ上げられてしまえばそうやすやすと動けなくなるだろう


とりあえず魔王は緘口令かんこうれいを敷き、ミューの王家の血に関する一切を口止めした

今ミューは心に深い深い傷を負っている

親友であるシェイナを失い

家族として慕っていた開拓村の住人達も失い

ふさぎ込んでいた

涙も枯れ、声も枯らし、まるで別人のように元気がなくなっている

そんな彼女にこれ以上酷なことは望めない


魔王は今はともかくミューをそっとしておくことにした


マキナ族の国マシニアでは新たな王を決める会議が行われていたが

会議は滞っていた

女王が亡くなったというのにいまだ設定がシェイナのままなのだ

原因は分からない

いくら調べても不備、バグ、何も出てこないのだ

マーキナにも原因はつかめず

一度は女王の死体を解剖してみようという意見が出たが

それはすぐに却下された

マキナ族の間では女王の亡骸を汚す行為だからだ


原因がわからない以上、ひとまずこの議題は置かれることとなった


それからしばらくマシニアは王のいない王国として存在した


そして一週間が経ち

シェイナの遺体は手厚く葬られ、マシニア国の安置の間へと収葬された


最後にマーキナがシェイナの顔を見る

死んでいるのが信じられないほどに生気に満ちた顔

しかし、心臓を抜き取られ、鼓動も息もない上に脳波も反応せず

これを死と言わずして何という

彼女は明らかに死んでいる

それは分かっている


マーキナが彼女と過ごした時間は短い

しかしながら彼女は人を大切に思い、敬意を払い、また、出会いを大切にする人だった

そんな彼女にマーキナは惹かれていき

使えるべき大切な主となっていた

マーキナの目から流れる一筋の涙

機械であるはずのマーキナ

しかし、彼女には感情があり、制作者の手によって涙を流すこともできる

マーキナは、人知れず棺に抱き着き、泣き続けた


主人公交try

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