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9 復活、マキナ族の国5

 アドライトがクイニ―を倒し、軍がさらに進撃しようとした直後

突如アドライトの腕を違和感が襲った

ごとりと下で音がする

地面に目を向けると、見覚えのあるものが落ちていた

さらに自分の肩口を見る


「あれ?わたくしの、腕、が」


アドライトの腕が両腕とも肩口からむしり取られ、地面に転がっていた

そのまま何かにぐしゃりと自分の胴体部を何かに潰されるのを感じた

そのまま壁に叩きつけられ失神するアドライト

地面に落ちたその肩と口から大量に出血する

かろうじて生きてはいるが、恐らく時間の問題だろう


「アド、ライト、さん?」


突然のことで固まる魔王とシェイナ

彼女を襲ったのは先ほどアドライトにやられたはずのクイニーだった

干からびていた体は元に戻り、体を黒いものが覆っていた


「うそ、でしょ...」

「闇が、覆ってる」


シェイナに震えが走った

ゴブリンや魔獣であの強さだったのだ

ならば、魔王に近い強さを持つものが闇にのまれれば...


軍の前方でも悲鳴が上がった

その直後に何かがこちらに飛んできた

それは、ゴートだった

体はねじられ、こちらもかろうじてだが生きている状態だった


「ゴートさんまで....」

「そんな...」


魔王はへたり込んだ

その魔王にクイニ―の腕が迫る


「まずい!守護結界!」


魔王の前に強堅な結界で出来た盾を張る

が、その盾はいとも簡単に破られ、クイニ―の腕がシェイナの胸を貫いた


「う、あ?れ?」


胸を貫いた腕はそのまま心臓をえぐりだし、クイニーは笑顔でそれから血を絞り、飲んだ


「アッハァ、おいしい、もっと、心臓!血ぃ!!」


シェイナはその場に倒れ込む

胸から血がドクドクと流れ出て、目から光が失われていく


「あ、ああ、シェ、イナ」

倒れたシェイナの頬にそっと触れるが、徐々に体温が失われていった


そんな二人を無視して兵たちに突撃するクイニー

圧倒的な力の前になすすべなく、ただただずたずたに血を吹き出させながら死んでいった


兵たちが二人を引き付けている間にハノラや治癒班がアドライト、ゴート、シェイナを治療し始める

アドライトの腕はひとまず魔王の回復魔法で繋ぐことはできたが、完全には回復できない

聖王女の治癒魔法による治療が必要だった

それはゴートも同じで、かろうじて生きている状態


それでも、シェイナよりは助かる見込みがある

シェイナはすでに、心臓自体を奪われ、確実に死へと向かっていた


シェイナの体は枯れ葉のように変色し始め、美しかった羽も見る影もなくどす黒い

まるで朽ち果てた木のように枯れていた

そこから精気は感じられない


「シェイナ!ダメ!逝ってしまっては!」

治療し続けるが、まるで穴の開いた袋のように意味をなさなかった


とうとう、完全に固まってしまい、それ以上の治療は無意味と判断された


魔王は悲しみ、それと同時に怒りが支配し始めた


「許さ、ない」

「ユルサナイ!」


魔王は立ち上がり、笑いながら兵を殺すクイニーまで一瞬で間合いを詰めた


ガッとクイニーの腕をつかむと、そのまま地面に叩きつけた

何度も何度も何度も何度も

クイニーは叩きつけられるたびにどこかの骨が砕け、顔面がへしゃげた


「が、げ、ア、アハハ、痛いぃい」

「死ぬ、これ、アハハハハ」


クイニーはまだ笑っていた

もはや体はぐちゃぐちゃの肉塊へと変わっているにもかかわらず


そのあっまその肉塊をはるか上空へ投げ、魔王は投げた肉塊まで飛びあがると、蹴り落とした

地面に叩きつけられたそれはもはや原型が何なのか分らないほど潰れ切った


今まで誰にも見せたことのない魔王のスキル

狂戦士化

思考能力と引き換えに一時的に飛躍的な攻撃力を得る

ただし、使用後数時間は眠りに落ちてしまう


魔王はその手でぐちゃぐちゃになったクイニーを地獄の炎で焼き尽くす

肉塊は灰になった


魔王の瞳はそのままもう一人の男の方、マカンをとらえた


その人睨みだけで暴れていたマカンの体が動かなくなる


「ひっフヒ!動けない、ヒャヒヒ」

「ググ、ウヒャ」


不気味に笑っている

そこに魔王がゆっくりと近づいてきた


マカンが指をピクリと動かすと、魔王に見えない斬撃が飛ぶ

それを難なくかわすと、マカンの頭を掴み、引き抜いた


「ひひょ!」


不気味な笑いを断末魔に、マカンは息絶えた

それをまた焼き尽くす魔王


「魔王様!」

アマツユが駆け寄った


「すいません、アマツユさん、私は、しばらく、動、け、な」

魔王は眠ってしまう


「くっ、これではもはや無理だな」

「総員退避!」

「退避せよ!」


アマツユの号令で生き残った兵たちは退却した

その数はもはや5分の1ほどまで減っていた


瀕死のアドライト、ゴート、そして、シェイナの死体、死した英雄たちを連れて帰った

幸いなことにあの二人以外にこちらに向かってくるものはいなかった

連合軍は敗北した

大きな犠牲を伴って

死ぬってなんなんでしょうね

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