狂乱葬送 狩葬のフォロソス
フォロソスは鬼人と魔族のハーフだった
鬼人族たちは魔族だったフォロソスの母を快く受け入れ、ともに暮らした
そんな折、ハクラ姫が即位する
誰にでも優しく、絶世の美しさを持つハクラ姫は男女問わず魅了し、アイドルのような存在となった
そんなハクラ姫の役に立とうと、幾人もの鬼人族が武者修行の旅へと出た
フォロソスの両親も同じように旅に出ることにした
幼かったフォロソスは両親との楽しい旅をはじめ、様々な土地へ行った
もともとAランク冒険者として強かった両親は様々な依頼を受けることが多かった
ある日、旅のさなかに受けた依頼
それがフォロソスの運命を分けた
とある呪術集団の壊滅依頼
Aランクである両親の実力ならば問題なく解決できる依頼だった
両親のほかに複数チームが参加し、まもなく壊滅できる
そんな時に事件は起こった
討伐メンバーで最も実力のあるSランクの男が
最後に生き残った呪術師に死ぬ間際、呪いにかけられてしまった
その呪いは、見たものを殺したくなるというとんでもないもの
さらにその呪いは伝染する
攻撃を受けた者は同じように殺人衝動に駆られてしまう
次々と伝染し、あっという間に討伐隊は壊滅した
フォロソスの両親はかろうじて逃げ帰ったが、当然呪いに感染
戻った冒険者ギルドのある街の人々を襲ってしまう
信頼のあった両親は一転追われる立場となってしまった
もちろん、フォロソスも
そんなフォロソスを両親は必死に守った
送られてくる冒険者や討伐隊から、そして、自らの殺人衝動から
それから数年逃亡生活にも疲れ果てた
この呪いを解ける者はもはやいない
それに、殺しすぎた
すでに両親は特A級の犯罪者となりお尋ね者
誰も助けてくれない
キガシマにも戻ることはできない
もともとハクラのために強くなろうとしたのに、泥を塗ってしまう形となった
それに、自らの愛する子を守りたい
殺人衝動と愛の葛藤の中、両親はだんだんと壊れていった
そして、とうとう、我が子に手をかけてしまった
その頃にはもはや、ほとんど意志が残っていなかった
ボロボロに、ズタズタに切り裂かれながらも逃げた
逃げた先でフォロソスは保護され、両親は討伐された
フォロソスはいつまでも、いつまでも両親の無実を訴え続けた
しかし、誰にも信じてもらえず両親は犯罪者の汚名を着せられたままとなった
それからさらに数年
立派な大人になったフォロソスは自らにかかった呪い、殺人衝動を抑えきっていた
人知れず、一人で抑え込み続ける
しかし、突如としてその衝動は爆発した
盗賊に襲われたのだ
気が付くと、周りは血の海だった
転がる盗賊たちの首を見て笑っている自分に気づく
その時気づいた
これが自分の本質なのだと
呪いによるものは確かにある
しかし、呪いのかかった両親や他の冒険者たちはみな殺している最中に苦しみや悲しみといった表情を浮かべていた
自分にはそれがない
楽しい
もっともっと殺したい
もっと強い者を殺したい
衝動はもう抑え込まない
殺したいだけ殺す
フォロソスは殺人衝動のおもむくまま、しかし秘密裏に欲求を満たしていた
圧倒的な力を持つ男と出会ったのはそんな時だった
一人で人気のない街道を歩いていた翼人族の男
簡単に殺せると思った
そっと近づき首を刈る
それで終わり
しかし男は振り向いた
まだ近づいてすらいない
気配も完全に消していた
だが確実にこちらを見ている
体からは異様な黒いオーラを放っている
この男にだけは逆らってはいけない
そう思わせた
フォロソスはその男に戦わずして敗北した
それ以来その男に忠誠を誓った
忠誠を誓ってから男に与えたられた仕事は少女のお守りだった
その少女は盲目で、名をアスティレットといった
男に何かしらの能力を与えられて盲目でも周りの様子は把握できる
しかしまだ能力は定着していないようで、ぶつかっては泣き、転んでは泣く少女
フォロソスは少女を殺したくてたまらない
が、男のお気に入りの少女を殺すことはできない
仕方なくアスティレットのお守りを続けていた
やがて少女を殺したいという衝動を残しつつ、それは愛情へと変わっていった
殺したいと守りたい
相容れない感情が共存するほどに
殺人衝動ってのはふとした時に誰にでも訪れる感情だと思います
聖人君主なんてこの世にはいない




