9 復活、マキナ族の国3
マキナ族の国は“マシニア”となずけられた
シェイナが機械を意味するマシーンからとってつけた国名
現在、シェイナたちはこのマシニア国にいた
海底遺跡だったはずのこの国は、現在海上にせりあがり、大洋の彼方にあった
この国には転送装置があり、座標を指定するとその場所まで一瞬で行ける
また、簡易式の転送装置を起動させることでどこにいようとも国まで戻ることができた
(転送装置を持っているのは現在シェイナと一部の国を運営するもののみ)
シェイナと女王として建国されたが、政治はコールドスリープから復活したマキナ族が務める
女王としての立場は、本当によくて象徴、悪くてお飾り
まぁ、国民は非常に温厚でみな慕ってくれているから悪い気はしない
問題がかたずいて、平和になったらここで余生を過ごす、ってのも悪くないかもしれない
そんなことを思っていると、魔王から連絡が入った
すでに一気に普及した通信機(超小型の端末で、こめかみに張るタイプ)を使っての通信
「大変ですシェイナ!」
「ど、どうしたの?」
「グランドルが、何者かの手によって落とされました!」
「え!?」
魔王が言うには、たった二人にほんの数時間で滅ぼされたという
あり得ないほどの戦力
魔王と同程度かもしれないとのことだ
現在グランドルと合国した聖王国の守りを固めているらしい
ただ、それ以降動きはないとのこと
「わかった、こっちのことが終わったら僕もなるべく早くそっちに戻るよ」
「はい」
「それと、女王就任おめでとうございます」
「こちらに戻られた時、正式に同盟をお願しますね」
「うん、僕もそのつもりだったから」
こめかみの装置を指でトントンと叩き、通信を切る
僕の知らないとこで大変なことになってたのか
...
これはさっそくマーキナの力が役に立つかもしれない
「マーキナ、ちょっといい?」
今では常にそばにいるマーキナを呼ぶ
「戦争ですか?」
「いや、これは侵略かな」
「争いは嫌いです...」
「そっか、そうだよね」
「君たちはそのためにここに逃れたんだもんね」
これは、彼女の援護は望めないな
無理強いするのも嫌だし
それに、平和主義者のこの国の住人を巻き込むわけにはいかない
マシニア国は建国に当たって、徹底的な平和宣言をしている
自衛以外の目的で絶対に武装しないというものだ(マーキナは女王を守るために武装しているが)
「マーキナ、君はここに残っててよ」
「争いごとに巻き込みたくないからね」
「......」
「わかりました、マスターがそうおっしゃるなら」
あれ?ずいぶんと聞き分けがいいな
でも、なんか悲しそうな顔
それもそうか、平和宣言をした国の女王が率先して争いに行くって言ってるようなもんだからなぁ
でもこればっかりは、ね
そんな気持ちを察したのか
「マスター気を付けてくださいね」
と、一言だけ言った
「うん」
「大丈夫だよマーキナ」
「これは争いをおさめるための戦い...」
そう言いかけてやめた
争いをおさめるために戦うなど本末転倒な気がしたからだ
マーキナは黙している
シェイナもそれ以上は何も言わなかった
今シェイナたちは王宮にある特別な部屋をあてがわれている
マシニアはすでに海底遺跡だった面影もなく、機械に満ちた国になっていた
一応ちょっとした技術提供はしているのだが
兵器に持ち入れれそうな技術に関しては門外不出だ
もしこの国がグランドルの奪還に動けば驚くほどあっさりと取り戻せるだろう
しかし、それはやらない
争いに介入するというのはさらなる争いに発展する可能性もある
それは平和を本分とする彼らの総意に反するから
数日後、国の運営を任せる者たちとの今後の国の運営方針もまとまり
シェイナたちは急いで魔王国へと戻った(一緒にいたクラベル女史は国を見て回るとのこと)
「お帰りなさい、シェイナ」
「ただいま、サクラ」
挨拶もそこそこに二人はこれまでのことを話した
魔王の話によるとグランドルにはいまだ近づけていないらしい
何度か奪還のために兵を送ったのだが、どうしてもたどり着けない
回りに何か魔術的結界が施されているようなのだ
その結界のせいで近づいても元の場所に戻ってしまう
グランドルから何かが出てくる気配もない
それなのに周辺から人が攫われている
そんな人々の悲鳴が昼夜問わず聞こえてくる
早急に奪還しなければ被害は増える一方だろう
しかしながら、結界を破壊できる魔王ですらその結界を破れない
手詰まり状態といったところだ
しかし、活路はある
結界を使えるシェイナが自信を中心に結界を張り
グランドルの結界とぶつけて相殺するという方法
突拍子もないように思えるが、現状ではそれしか方法がなかった
幸いまだ聖王国への攻撃の気配もない
そんな今がチャンスだと判断した
魔王も今までにないことに戸惑いを見せている
それはシェイナも同じで、果たして自分の結界が魔王ですら破れない結界を打ち破れるのか心配だった
でも、なるようにしかならない
僕のできることを最大限にやろう
ぐっとこぶしを握り、戦場へとおもむく準備をした
戦場に行くといってもシェイナ自体は戦わない
結界を破り次第撤退し、その後は魔王や戦闘能力の高い魔王の配下たちが制圧するという作戦
失敗はできない
シェイナは緊張に身震いした
もう一人援軍を