作るものと語るもの 思い
「驚いたね」
「えぇ、彼女はまだ生まれたばかりなのでしょう?」
「うん、少し前に書いたばかりだよ」
「それに、記憶だってあとから付けたものだ」
「生まれたばかりの彼女に一体何が起こったんだろう」
「さぁ?彼女の記憶、何か変わったことは書かなかったの?」
「うーん、膨大な量の記憶を持っている。ということぐらいかな」
「記憶の中に僕らの情報が混ざってたかな?」
「そんなへまはしないとは思うけど、あり得ないことはない」
「それで、どうするの?」
「一応修正はされてるけど、これからも同じようなことがないとも言い切れないわ」
「それは大丈夫だと思うよ」
「関係するすべての記憶を書き換えておいたからね」
「それにしても、おかしいね」
「? 何がかしら」
「今までこちらを認識させようと奮闘してきたけど」
「認識できると書いたところで、この中の創造主が勝手に作られてそれを認識するだけだったのに」
「なぜ今回は勝手に僕たちに気づいたんだろう?」
「それは...私にもわからないわ」
「もしかしたらだけど、物語自体が成長しようとしているのかもしれないわ」
「いえ、私たちのこの力が、成長しているのかも」
「いずれにしても、私たちが目的を変えてから何かが変化したのは間違いないと思うわ」
「それはこの何もない世界に影響を与えるかな?」
「わからないわ」
「でも、こちらに生まれ出ようとしているのかもね」
「それはそれで好都合かもしれないわ」
「今の目的にも沿っているし」
「そうか、なら、次は書き換えない方がいいね」
「えぇ、自我が芽生えたのですもの」
「いずれこちらのことに気づくのも時間の問題だと思っていたわ」
「とりあえずは、欠片をすべて集めよう」
「回収し終えれば僕もこの世界に意識をもぐりこませれるからね」
「...」
「危険、ではないの?」
「前は返ってこれたけど、今回はかけらが内側にある状態なのよ?」
「大丈夫さ」
「回収した欠片はすぐに取り込むから」
「そしたらすぐに抜け出すつもりだよ」
「そう、気を付けてね」
「うん、ありがとう」
「欠片さえ戻ってくれば、後は仕上げだ」
「世界を消して、と登場人物すべての力と思い、知識、知恵」
「すべて、そのすべてを使ってこの世界に僕らの力を持った子供を生誕させる」
「この何もない世界はその子によって創造される新しい世界を迎え入れるのさ」
「まぁ、その時には立ち会えないでしょうね」
「あぁ、でも、残念だけど、仕方ないよ」
「それに、僕らは長く生きすぎた」
「あの時から、一体どれくらいの時が過ぎたかも、もう、思い出せない」
「大丈夫よ」
「消滅するときは私も一緒」
「寂しくなんてさせない」
「うん、ありがとう、僕の大切な妹」
「いいのよ、私の大好きな兄」