2 世界樹の花3
目が覚めた
葉っぱの小屋が風に揺れれて気持ちいい
伸び、のような動きをしてから重い抜け殻の扉を外すと外に出た
涼し気な風と太陽の光が寝ぼけた頭をしゃっきりとさせる
ふぃ~
昨日は大変だったけど
また進化できた
それに、この硬い甲殻のおかげでちょっとやそっとの攻撃なら大丈夫そう
攻撃手段も増えた
今までの敵ならあのカブトムシみたいなの以外は倒せる!
自身はあった
それは慢心ではなく、経験からのものだった
恐らく、初めて出会った時に殺されかけた蜘蛛なら
苦戦はするものの、倒せるだろう
それほどの力を今の体に感じた
少し歩いてみると、以前とは比べ物にならないほど速くなっている
これは進化したことで強化された最大の部分だった
これなら登るスピードも速くなるな
遠目で上を見る
葉っぱは昇るにつれてその濃さが増していっている
より濃い濃度の生命力が詰まっているらしい
枝を渡り、幹に足をかけてまた上を目指す
幹には穴が開いている
恐らく昨日のゴブリンたちの巣穴だろう
その証拠に穴からは不気味な仮面がちらほら覗いてこちらを見ていた
手を出してくる気配はない
それどころか、それらの目には恐怖が宿っていた
みたこともない魔昆虫が幹を這っているのだ
観察し、警戒するのは当然だろう
すると、冠を付け、より凶悪な仮面をかぶった大き目のゴブリンが穴から出てきた
世界樹を切り出したと思われるスタッグを持っている
そのゴブリンは、枝の上に陣取ると、こちらにめがけ突然魔法を撃ちだしてきた
うわっぷ!
直撃
風のようなものが吹き抜け、体に何かが当たり、ガキンという金属音が鳴った
びっくりしたー
何か当たったみたいだけど
すごい、傷一つついてないや
続けてファイアボールが飛んできた
またも直撃
それでも少しすすけた程度で傷つくことはない
明らかにイライラしている大きなゴブリン
慌てずみるで敵の情報を確認した
ユグドラシルホブゴブリン
ユグドラシルゴブリンが経験を積み、進化したもの
魔法を使いこなし、ユグドラシルゴブリンのリーダーとなるものが多い
なるほど、あれがリーダーなのか
ならあれを倒せば手を出してこなくなるかも
ファイアボールをいくつも展開する
進化前では考えられないほどの量だ
その数10球ホブゴブリンは目を見開いた
明らかに自分の強さを超えている相手
ホブゴブリンはこの辺りにおいて自分を超える者はいないと自負していた
その慢心がこの結果
ホブゴブリンは’逃げよう’そう思った
思い、行動しようとした瞬間に丸焦げになって倒れた
ポーン
— 魔法、ウィンドカッターを獲得しました
それを見た配下のゴブリンたちは目の前の得体のしれない魔昆虫を恐れた
中には失禁している者までいる
これで手を出さなくなるだろう
悠々とまた昇る作業へと戻った
もはや手を出してくるゴブリンは皆無だった
魔法も手に入ったし、どんどん強くなるなぁ僕
頂上に着いたらこの世界樹で最強になるんじゃないかな?
ムフフと笑いながらその歩みをどんどんと進める
上へ上へ
そこから遠目を発動させると
とうとう、頂上が見えた
霞んで、わずかだが、見える
光ってる?
頂上に見える光
それは太陽の光とは違ったもの
何が光っているのかはわからないが好奇心が刺激される
温かい光
あの光をつかんでみたい
あれだ、あれを目指せばいい
それは確たる証拠もない感
それでも、確信を得た
あれをつかめば、いや、掴まなければ
登り切ったその頂上に何があるのかわからない
恐ろしいほどの敵が獲物を求めて光っている可能性もある
現状、自分を傷つけうる力を持つ者には出会っていない
運よく、かもしれないが...
日が暮れ始める
あたりは暗くなり
周囲の気配が変わった
うごめく何か
それはこちらを見ている
不気味に光るその目
獲物を見る目ではない
興味があるから観察しよう
そんな好奇心からくる目だった
緊張しながらも歩みを止めることはない
なに?この感じ
一体何がこっちを見てるの?
ねっとりとまとわりつくような視線に恐怖しつつも
襲ってこないことに疑問を覚えた
何で襲わないの?
もしかして、慎重にこっちを見てるだけ?
ならこっちから何かしなければ向こうも何もしてこないかな?
何もしてこないことがかえって不気味な気もするが
結局なにもされぬままに頂上付近まで来てしまった
あたりは真っ暗
たどり着いたあたりから視線は消えた
今にして思えば、見守られていた?のだろうか
おかしな表現だが、そんな気さえしてきた
なにわともあれ、無事に着いた
あの下から見えた光
それが今わずか先にある
目を凝らす
光の中をのぞくように
そこには
一輪の
美しい花が咲いていた
大きさはさほどでもない
幾重にも花びらが重なり
その一枚一枚が輝いていた
甘い蜜の香り
その香りが食欲をそそった
そういえば、今日は朝以来たべていないなぁ
これ、食べようかな?
食欲は最大
もはや抑えることのできないその欲望に任せ
花を
食べた
口の中で爆発するようなうまみに思わずのけ反った
ドクンドクンと激しく脈打つ心臓
エネルギーが、生命力の塊が
自らの体を駆け巡り
あふれだす力に体が喜んでいた
ポーン
その音が、頭を冷静にさせた
— 成長を確認しました
— 世界樹の加護を獲得しました
— スキル、快癒を獲得しました
— 原始魔法、レディアントワールドを獲得しました
— 原始魔法、カオスソウルを獲得しました
— 進化が可能です
— 現在、ホーリークイーンズクリサリスへと進化可能です
あわわわわ
一気になんか、うわぁ
ちょっと効果すごすぎるんですけど
と、とりあえず、獲得したものを見てみよう
世界樹の加護
世界樹に認められたもののみが得る加護
いずれ〇〇〇へと成長する
〇〇〇?ここだけ読み取れない
なんだろう
でも、悪いものじゃないねこれは
快癒
どんな傷でも瞬時に修復できる
死に直結する傷は修復不可能
これは回復系スキルか
すごく助かる
この甲殻の硬さにさらに回復となると
防御力がすごいことに
原始魔法、これは今まで見たことないなぁ
まずは原始魔法の説明を見るかな
原始魔法
原始に直結した魔法
通常の魔法とは比べ物にならないほどの効果を持つ
うっわ~
とんでも魔法だこれ
レディアントワールド
世界に光を
大いなる光はどんなものでも照らすだろう
闇は祓われ、光は従属する
現在使用できません
ん?なんだ?よくわからないぞこれ
カオスソウル
混沌なる魂は多くの闇を従え地へと落ちる
光は撤退し、闇は首を垂れる
現在使用できません
おうぅ
これはなんかやばそう
それにしても、原初魔法
使えないのか、今じゃ
...
まぁいっか
いずれ使えるようになったとき頑張ってもらおう
あとは、進化か
ホーリークイーンズクリサリスかぁ
うん、わかんない
この体と同じように動けるのかな?
ホーリークイーンズクリサリス
世界樹が望んだもの
いずれティターニアへと至るものの幼生体
ん?これだけ?
よくわかんない
よくわかんないぞ
ティターニアってなにさ
その幼生体?
さっぱりわからん
僕にどうしろっていうんですか世界樹さん
上を見上げると満天の星空
下にある世界樹は、喜んだかのように揺れた
その日、僕は、世界の守護者見習いになった
―――――――――――
世界樹を観察していた一団がいる
それは一国の王たち
種族の王たち
闇のモノたち
多種多様、様々な生物
あるものはそれの誕生を喜び
あるものは憎んだ
うぇへぇ
いもむしさんが大変