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狂乱

 彼らはみな一様に壊れていた


あるものは果てなき拷問の末に

あるものは親兄弟を自らの手で殺害させられた果てに

あるものは裏切られ、またあるものは人を殺しすぎたため


ただただ続く破壊衝動と殺戮衝動に身をゆだねた


「ねぇ、もう行っていい?」

「そろそろ限界」


「もう少し待て」

「今はまだ駄目だ」

「魔王の監視がある」


話しているのは目から鼻頭までを布で隠した顔

その全身を傷でおおわれ頭に生えた猫のような耳を切り取られた獣人の少女と

常に涙を流し続けている細身だが引きしまった筋肉を持つ鬼人と魔族のハーフである青年


「じゃぁいつになったらいいの?」

「目が、痛いんだけど?」


「君は目などないだろう」


少女の布の下には眼球のない瞼があるのみ

それでも自由に動けるのは他の五感が異様に発達し

周りの状況をレーダーやエコーのように認識できるためだ

その精度は、相手の動きを先読みできるほどである


「ないけど痛いの!」

「あんたこそ、相変わらず泣き続けてるじゃない」


「僕の涙は止まらないんだ」

「わかっているだろう?」


「ふん、泣き虫」


「はぁ...」


青年はため息をついた

自分の仲間は気が狂った者ばかりだ

自分をしてもそうだ。抑えているのは殺戮衝動

今でも目の前の少女の首を落としたくてたまらない

それでも何とか止めているのは圧倒的力の前に平伏しているからに過ぎない


恐怖を感じたのはあの時以来だ

あれに逆らうのは愚か者のすること

誰も勝てない、あの魔王ですら


少女は監視塔の上に腰かけ、足をプラプラさせている

傷という異様、盲目という個性がなければただの少女に見える


「フォロソス、あれ見て」

盲目の少女が指をさす


「あれは、ヒュームの王か」

「その横は、聖国の王女、まさか二つの国が合するとはな」


「なんかさー、幼いころに交わした約束?だったらしいよ」


「さすがに情報が早いな」


「耳はいいんだよ」

切り取られた耳を指さす

彼女なりのジョークのようだ


「さて、報告に戻るぞ」


「えー、せっかくあんなに隙だらけなのに殺らないの?」


「まだ早いと先ほども言ったはずだが?」


「フン、いいよもう」

「じゃぁ街道で人でも襲うかな」


「やめてくれ、暗躍がばれたらどうする」


「えー、ばれないように殺るよ?」


「いいからおとなしくしてくれ」

「でないと僕が君の首を刈るよ?」

背中に背負った大鎌に手をかける


「それも、いいかもね」

「キヒッ、首が落ちるときって、どんな感じなんだろう?」

「最高に絶頂できると思うんだ~」


「はぁ、もういい」

「やるなら街道から離れたところでやってくれ」


あきらめたフォロソスは妥協した


「それとアスティレット、狙うのは犯罪者にしておくんだ」

「消えても誰も探さないし足もつきにくい」


「はーい、じゃぁいこっか」

「早くぐちゃぐちゃにしたいよ」


「...」

「君はもう少し女の子としての自覚を持ってくれ」


「あるよ~、血の花とかきれいだな~って思うもん」

見えてはいないが優れた感覚が血の吹き出る形までを認識させているが故の発言


二つの影は監視塔から飛び降りた

ヒュームの監視塔

その監視塔には当然ヒュームはいるが

彼らを見たものはひとりもいない


彼らの総称は狂乱葬送

狂人のみが所属し、主人の目的を果たすため暗躍する

暗殺、戦争、破壊工作、時には国落とし

所属する一人一人が一国の軍に匹敵する力を持っていた

狂った人ってどういうの?

普通の人こそ狂ってるんじゃないかな?って思うときがあります

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