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8 ホビットの国3

 死ぬ

そう思ったが、いつまでもその死は訪れない

嚙みつこうとした蜃の口をミューが剣で抑えていたからだ


「シェイナちゃん!」

「にげ、て!」


食いちぎられた右腕の肘から先、おびただしい量の出血に気が遠くなりそうになる


だめだ、僕が、僕が守らなきゃ


痛みをこらえ、自分に治癒魔法をかけると構えていたタクトをしまった

右腕の再生まではできない


本気で、いかなきゃ


ミューの限界が来ている


リモットもハノラもまだ幻惑にかかっているらしく、目が虚ろだ


「サモン!」


召喚で援軍を呼ぶ

蜂型の魔昆虫三体が召喚され、シェイナを守るように飛び始めた


「防御指令!」

防御対象はミュー

蜂たちは今度はミューを守るように蜃の周りを飛び始めた


蜃は腹が立ったのか、蜂の一体に喰いつき、その体をかみ砕いた

仲間がやられて多少たじろいだが、それでもけなげに命令を遂行しようと二体の蜂は蜃へ攻撃し始めた


「く、ごめんね」

「無駄には、しないから!」

「魔法合成!アイシクル、トルネード、ストーンエッジ、スパーク」

魔法を四種合成させた


「スーパーセル!」


舞い起こる豪風と雷、周りのものをすべて巻き込むほどの巨大な嵐

巻き込まれたものはすべてが粉々に破砕される


「ミュー!離れて!」


「うん!」


剣を思いっきり叩きつけ、驚異的なジャンプ力で後ろに飛びのいた

そのままリモットとハノラを叩き起こす


「急いで!逃げるよ!」


目の前では究極魔法にも引けを取らないほどの威力で蜃を取り込もうとするスーパーセルがある

巻き込まれれば自分たちも死ぬ


蜂が牽制してくれているおかげで蜃はだんだんとスーパーセルに吸い込まれていった


目が覚めたハノラとリモットはミューに続いて逃走し始めた


シェイナも逃走しようと足を踏み出した

が、その足を蜃の口から伸びた舌が絡め捕った


「うわ!」


そのまま蜃の口元まで一気に運ばれた

真っ赤な口が開き、シェイナの足を食いちぎる


「ああああああああああ!!」

「ぐっがぁ、足、がっ!」


羽を出して飛ぼうとするが、その羽に尻尾による攻撃があたり、むしり取られた


「あぐあ!!」

「う、ぐぅ、だめだ、逃げ、れな、い」

蜂たちもすでに力尽き、地面に落ちていた

スーパーセルも目の前まで迫ってきている

蜃は自ら事シェイナを巻き添えにしようとたくらんだのだろう


出血が激しい、もはや意識も薄れてきていた

心なしか、蜃は笑っているように見える

ざまぁみろ、とでもいうように

黒く染まった体を揺らしながら


スーパーセルはシェイナと蜃を飲み込んだ


その様子を遠目から見ていたリモット


「シェイナさん、が」

「シェイナさんが、嵐に巻き込まれて...」


「嘘、だよね?」

ミューの顔は引きつっている


ハノラもへたり込んだ


突然立ち上がってスーパーセルに向かおうとするミューをリモットとハノラが取り押さえた


「放して!シェイナちゃんを助けなきゃ!」


「無理です!あれに巻き込まれたらあなたも死にますよ!」


「でも!でも!」


必死にもがくミューを二人掛かりで抑え込み、何とか止めた


森を切り刻み、大規模な更地ができたところで、スーパーセルは消えた

後に残ったのは破砕された木々、そして、バラバラになった蜃の体と


ズタボロになって転がるシェイナだった


シェイナの甲殻はかなりの強度を誇る

それでも、スーパーセルの威力はその甲殻を引き裂くには十分だった


ミューたちはシェイナの亡骸を拾うために、更地となった森へと戻った


「シェイナちゃん...」


息をしていない親友の体を抱える

驚くほど軽い


「こんなに、小さくて、軽かったんだ...」

「シェイナちゃん、助けてあげられなくて、ごめんね、ごめん、ね」

ぽろぽろとあふれる涙

リモットもハノラもうなだれ、シェイナの死体に触れる

触れて、おかしなことに気づいた


「あれ?何でしょう、この亀裂」

リモットがシェイナの背中の亀裂を指す


「この傷口、血が一切出ていません」

傷口をのぞき込むハノラ


「これは、中身が、ない?」

「このシェイナさんの体、抜け殻です!」


「「え!?」」

リモットもミューも亀裂をのぞき込んだ

そこにあるのは空洞

「じゃぁ、中身は?」

「シェイナちゃんは、どこ?」


空を見上げた

そのはるか上空から何かが舞い降りてくるのが見える

優しく羽ばたくその羽は、美しくきらめいている

手足はすらりと伸び、その姿はヒュームに少し近い

肌の色は薄い青、キラキラと輝きを放つ青く長い髪

目も瞳のみだった目からヒュームと同じように白目のある目になっている

瞳の色は薄い金色

妖精と言うにふさわしい美しさだった


その妖精はミューたちの前に降り立った


「心配かけてごめん」

「ぎりぎり助かったみたい」


やはり、シェイナだった

彼女はスーパーセルが迫るさなか、進化を果たし、その強靭な羽の力でいっきに上空へと飛び上がっていた


現在の彼女の種族名ははクラウデーバ

クラウは光、デーバとは、より高位の存在となった妖精のことである


親友の生還にミューは飛びついて喜んだ

背丈はミューと同じくらいになっている

他の二人もシェイナを抱きしめ、生きている鼓動を感じた


「とりあえず、こちらをお召しになってください」

と、ハノラが羽織っていたローブを脱いで手渡した

脱皮のように殻を脱ぎ去ったため、以前のように当然裸だった


しばらくしてみんな落ち着きを取り戻した


「よし、ちょっとサクラに連絡しとくね」

異空間収納袋を自分の抜け殻から探り出すと、そこから通信機を取り出して魔王へと繋いだ


「はい」


「あ、サクラ?」

「報告したいことがあるんだけど」


「まぁ、シェイナ、声が聞けてうれしいわ」

「それで、報告とは?」


「うん、黒いゴブリンと同じように闇に染まった蜃っていう竜に遭遇した」


「!」

「皆さんはごぶじですか!?」

サクラはこういう時に真っ先に自分たちのことを心配してくれる


「うん、何とかね」

「それで、どうする?死体は回収しとこうか?」


「いえ、焼いて完全に消滅させてください」


「え?いいの?」


「はい、危険すぎます」

「私の大切な子が一人、何とか一命はとりとめましたが、再起不能です」

「あの子には、申し訳ないことをしてしまいました」


「わかった」

「じゃぁこっちで焼いとくね」


「えぇ、お願いします」


「あ、それと、もう少ししたらいったんそっちに戻ろうと思うんだ」


「まぁ、それはうれしい報告です」

「では、歓迎の用意をして待っていますね」


「ありがとう」


通信を切った


「さてと、ちょっとこの死体焼いちゃうから下がってて」


三人を後ろに下がらせると、妖精魔法を唱えた


「フレイム」

タクトを使うのを忘れていた

それでも最小限にとどめたはずだった

フレイムは巨大な火柱となり、周囲を焼き尽くした


「あ、え?」

「なにこの威力...」


「あの、シェイナさん、今の魔法、なんなのですか?」


引きつった顔でハノラが聞く


「わかんない、ただの中位魔法なんだけど...」


「今の、究極魔法クラスの威力なんですが?」


「え!?」


「...」

「これからは、タクトで必ず制御してください」


「はい」

素直に返事、自分自身危険だと思った



―――――――――――――――

進化した種族説明と今回獲得スキル、魔法説明



 クラウデーバ


光を宿した高位の妖精

羽からは癒しを与える鱗粉と、苦しみを与える鱗粉を任意で出せる

魔法力は非常に高く、より高次元の魔法を使いこなすことができる



獲得スキル


 高速飛行


飛行速度を上げる


 鱗粉(癒)


回復効果や、状態異常を治す鱗粉を自由に出せる


 鱗粉(苦)


様々な状態異常を引き起こす鱗粉

効果は自由に設定することができる


 守護の要


防御力を一時的に大幅にアップさせる



獲得魔法


 スパーク→ライトニングボルト


スパークが強化され、ライトニングボルトへグレードアップしました

より強力な電流を付与させることができる


 エアーブラスト


空気を圧縮し、弾丸のように撃ちだす


 

獲得妖精魔法


 サンダーレイ


雷を高圧縮して光に近い速さで撃ちだす


 ルナティックライト


月の光を集め、闇を浄化する

月が出ている間だけ使用可能



召喚


妖精召喚


蜂型の魔昆虫が本体シェイナの影響により妖精へと進化を果たす

3~5体のピグミードクシーを召喚できる


 ピグミードクシー


いたずら好きな小さな妖精

魔法に長ける

進化しました

もっと段階進化します

最終進化はまだまだまだ先のつもりです

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