白鬼の姫、冒険者になる3
とりあえず依頼は受けることができた
ヒュームを恐れているハクラ
依頼や買い物にはリンドウかキリサメが行くことにし
残ったどちらかがハクラとともに宿で待つことにした
「もう大丈夫だと思うんじゃが」
「だめです。リンドウが戻るまでは一緒にここで待ってもらいます」
ハクラは宿の食堂に行くくらいには慣れてきたようだが
まだヒュームの往来激しい町中までは歩かせたくはない
というのがキリサメとリンドウの総意だ
回復アイテムなどを買い込んだリンドウが戻ってくる
「お待たせいたしました」
「依頼なのですが、鉱物採取の依頼をとってまいりました」
「鉱物採取とな?」
「はい」
「鉄鉱石をとってくるというものなのですが」
「鉱夫が落石事故に巻き込まれてけがをし、人手が足りないんだそうです」
「鉱夫はドワーフが多いので大丈夫だと思います」
「すまんな、わらわがふがいないばかりに」
「いえ、気になさらないでください」
「姫様をお守りするのが我らの役目ですから」
「では、行こうか」
「「はい」」
三人はグランドルから西に数キロ
多種の鉱物が発掘される鉱山アトラド山
一番とれる鉄鉱石をはじめ、銀鉱石、銅鉱石、そしてごくまれにミスリルもとれるらしい
アドラド山 坑道
入り口では依頼をしたドワーフが立っていた
「おお、お前さんたちが依頼を受けてくれた冒険者たちか」
「わしはコロド、ここの責任者じゃ」
「私はキリサメです」
「こちらはハクラさんで、こっちがリンドウです」
「ふむ、鬼人が戦闘ではなく採掘を受けてくれるとは思わんかったわい」
「みたところ、おなごばかりじゃが」
「採掘はやったこと、あるのかの?」
「いえ、皆初心者です」
「ただ、私には採掘スキルがあるので」
「少し教えていただければすぐにコツはつかめると思います」
「おお、そうかそうか、それは助かる」
「ならばついてきてくれ、採掘場まで案内するでな」
「そこにいるビティというドワーフがおるからそいつに習ってくれ」
「わかりました」
コロドに案内された採掘場はとても広く
ところどころで冒険者と思しき採掘屋(ヒュームは数人)が働いていた
他にも依頼を受けた者たちが複数いるようだ
「おい、ビティ、ちょっと来てくれ」
「あいよ~」
可愛い声が洞窟内に響いた
トテトテとやって来たのは小さくてかわいいドワーフの少女だった
「親方~、冒険者たちのおかげですごいよ」
「いっぱい採れたよ」
「おお、そうかそうか」
「ビティ、すまんが、この方たちに採掘のやり方を教えてやってくれ」
ビティがつぶらな瞳でハクラたちを見る
ビティの顔は泥で汚れていたがその汚れを拭いて女の子らしい恰好をすればかなり可愛い
少女特有の人懐っこい可愛さだ
「ほいよ、じゃぁついてきてよ」
「こっちよ」
ビティについて行くと、そこには黒い鉱物を含んだ人二人が通れるほどの坑道があった
「まずあちしがやってみせるから、しっかり見ててよ」
「あんたら初心者だよ?」
「ならこの片手持ちピッケル貸すよ」
「威力はないけどしっかりねらって撃てるし、簡単よ」
「それに、魔法がかかってるから岩をサクサク掘れるよ」
「ドワーフの技術ってやつよ」
ビティはそのピッケルを使って掘り始めた
カツンという金属音ではなく
サクッというスナック菓子のような音がした
刺さったピッケルをてこのようにくるんと動かし、黒い鉱物の含まれた石をくりぬいた
「大体こぶし大くらいにくりぬいてくれよ」
「くりぬいた石はこのトロッコにのっけてさっきの場所に運ぶよ」
「んで、このトロッコ三つ分で作業終わりよ」
「この辺りは鉄鉱石多いからそんなにかからないと思うよ」
「がんばってよ!」
ニコッと笑ってビティは広場に戻っていった
「これなら私たちにもできそうですね」
「では、さっそく私が」
キリサメがカツっとピッケルを岩に差し込んだ
採掘スキルのおかげか、鉄鉱石の脈が手に取るようにわかる
ビティと同じようにクリッとくりぬいた
「おお、面白いですよ姫様」
「ほぉ、そうか、やってみるかな」
ハクラもリンドウもピッケルをもって掘り始めた
鉱脈はキリサメが採掘スキルで判断し、指示した
「ここ、ここからここまで掘ってください」
「リンドウはこちらからあそこまで」
「よし、ここじゃな」
サクッコルン、ペキ
「おお、わらわにも掘れたぞ!」
「みろみろ、こんなにきれいに掘れた!」
キャッキャとはしゃぐハクラ
リンドウは黙々と掘っていた
約一時間ほどでトロッコはいっぱいになる
「では、私はこれを運んできますので」
「その間休憩していてください」
「うむ、たのしいが、なかなかに重労働だなこれは」
「姫、お水です」
「おお、ありがとうリンドウ、おぬしも飲んでおくのじゃぞ」
「だっすいしょうじょうとやらは怖いらしいからな」
「はい、お心遣い感謝いたします」
リンドウも用意していた水をコクコクと飲んでいる
空になったトロッコを押しながらキリサメが戻って来た
「キリサメ、おぬしも水を飲んで休憩しておけ」
「その間はわらわたちが掘る」
ぬ、キリサメが泣いておる
ど、どういうことじゃ?
「うう、姫様が、姫様が」
「な、なんじゃ、何を泣いておる」
「こんなこんなに汚れて」
「美しいおみぐしがぁ」
「申し訳ありませんんん」
「いや、わらわは楽しんどるのじゃが」
「そんなに小汚くなって~」
「ううう、おいたわしい...」
キリサメがハクラを抱きしめて手拭いで汚れをぬぐう
「やめんか!わらわは子供ではない!」
休憩をはさみつつ始めてから4時間後には採掘を終えた
「これで終わりですね」
「意外と早く終わってしまいましたね」
「うむ、楽しかったぞ」
「...」
「なんじゃ?」
「帰ったら、お風呂に入りましょうね」
「う、うむ」
ハクラは相当泥まみれになっており
汗臭くなっていた
広場にトロッコを持っていくと、ビティが駆け寄ってきた
「おお~、もうおわったですよ?」
「早いですよ」
「めちゃくちゃ早いですよ」
「うちで働く気はないですよ?」
「それはちょっと」
「そうですかよ」
「絶対いい採掘士になれるのによ」
「まぁ、お疲れ様よ」
「あちしから報酬とは別にご褒美ですよ」
「ほいこれ」
「これは?」
「黒鉄のインゴットですよ」
「黒鉄鉱石から精製した極上ものですよ」
「鬼人族なら刀とか国でつくってるですよ?」
「ええ、確かに刀鍛冶職人は多いですね」
「では、ありがたくいただいておきますね」
キリサメはインゴットを袋にしまった
「では、私たちはこれで」
「あいよ、ありがとよ~」
ビティと握手を交わし、責任者のコロドに手を振り、街に戻った
ハクラはすぐにキリサメと宿に戻り
リンドウが報告した
ヒュームと会わない依頼ならハクラのメンタルも守れることが分かったので
これからはそれを方針に依頼を受けることにした
白鬼姫活躍してないなぁ