7 世界を見て回ろう リザードマンの国6
「え?新しいメンバー見つかったんですか?」
その吉報は突如もたらされた
ヒュームの国で聖女と呼ばれた女性が共に旅してくれることになったのだ
「もう間もなくそちらに着きますので、入り口付近で待っていてください」
「ありがとうサクラ」
シェイナは通信を切った
「リモット、ミュー、新しいメンバー見つかったよ」
「ヒュームの聖女さんらしい」
「ヒュ、ヒューム、ですか?」
驚くリモット
そうだった、彼女はヒュームの奴隷だったんだ
しまった、配慮が足りてなかった
「あぁ、ごめん、リモット、君がつらいなら断るよ」
「サクラに連絡しとく」
通信アイテムを再び取り出す
「待ってください」
「その方、聖女様と呼ばれているんですよね?」
「聞いたことがあるんです」
「貧富や種族問わずに治療を無償で施してくれるヒュームの女性のことを」
「恐らく、その方だと思うんです」
「それなら、私は、会ってみたいです」
「わかった、じゃぁ入り口まで行って待ってよう」
いつの間にか露店を見に行ってたミューを呼び戻し、集落の入り口まで戻った
しばらくすると、明らかに治療師とわかるいで立ち
教会のシスターだった名残である服装に、大きなスタッグ、教会のシンボルのロザリオをもっている
名前はサクラにきいている
「ハノラさん、ですか?」
突如声をかけられて驚いていた
あれ?もしかして、僕らの種族とか言ってなかったのかな?
「僕、シェイナです」
「後ろの二人は仲間で」
「こっちがミューで、こっちはリモット」
「あ、えっと、妖精、さんでしたのね?」
「あぁ、サクラ、やっぱり言ってなかったんだ」
「そうだよ、僕は妖精族、ミューとリモットは獣人だよ」
「まぁ、素敵です」
「妖精さんや獣人の方たちと旅をできるなんて」
本当にうれしそうだ
彼女には全く多種族に対する警戒や嫌悪と言った感情が見られなかった
リモットは安心したらしい
今までの緊張が解けているようだ
「私は、ハノラ・ベリオラと申します」
「治療術や光魔法が得意です」
「これからよろしくお願いしますね」
ぺこりと頭を下げる。大人っぽいのにどことなく子供っぽくもある
年齢はリモットと同じくらいなのでそれは間違ってはいないのだろう
ギルドに着くと早速このパーティでの陣形を考えた
前衛は耐久力の高いシェイナと、攻撃の要ミュー
中衛をリモット、光魔法や治癒魔法を使うハノラを後衛に置いた
シェイナが回復薬だったのだが、ハノラがそれを担うことで攻撃の幅が広がった
「よし、早速ギルドで依頼を受けよう」
「このパーティでの実践訓練だ」
「「「おー!」」」
三人が一斉に声をあげた
アレ?ハノラさんって結構乗ってくれるキャラなのか
早速ハノラをギルドに登録させた
Fランクからスタート
Cランク、Dランクがいるので、Dランクの依頼までは受けれるみたいだ
「えーっと、これにしてみようかな」
「ストーンジャイアント討伐」
「ふむふむ、5メートルほどの岩の体を持つ巨人、か」
「討伐数は、3体」
最近岩場に住み始めたらしく、道行く旅人を襲って食っている
「では、私が受けてきますね」
リモットが紙をはがし、受付に持っていく
「ところでハノラさんは、戦闘とかやったことある?」
「いえ、私は、恥ずかしながら未経験で」
「う~ん、そっかぁ」
「じゃぁ、僕が指示を出したら、それに応じた魔法をお願い」
「例えば、ミューに肉体強化、とか、リモットに回復、とか」
「状況に応じた指示を出すね」
「まぁ、慣れてきたら自分で判断できると思うから」
「それまでは僕が指示を出すね」
「はい、それは助かります」
リモットが戻って来た
「じゃぁさっそく出発しよう」
「目的地は、東の岩石地帯」
「その一番高い岩に住んでるらしいから」
旅人を襲うって書いてあったからたぶんそこまでいかなくても向こうからやってくるんだろうけど
ひとまずその岩石地帯に向かう
街からおよそ2キロほど離れたところ
ストーンジャイアントが出るため現在通行止めなんだそうだ
そのおかげでここから向かえるホビット族(身長1mくらいの小人族)の国との貿易が滞っているらしい
ホビット族は指輪などのマジックアイテムの生産に長け
その精密な出来は芸術品としての価値も高い
非常に温厚で、戦いなどは苦手なのでストーンジャイアントの格好の餌食となってしまっている
岩が増えてきた
どうやらついたみたいだ
それから探索を開始して数分
リモットが足を止めた
「来ます、囲まれているみたいです」
四人は警戒した
「ストーンウォール!」
「超硬化!」
「アームド!」
「ヴァンプアップ!」
仲間に防御魔法をかけ、自身を強化するシェイナ
「疾風!怒涛!」
ミューも自分を強化した
「ウィング!」
ハノラは軽量化の魔法を全体にかけた
準備は万端だ
左右からストーンジャイアントが駆け下りてきた
久しぶりの獲物を見つけた、という目でこちらを見ていた
よだれまで垂らしている
一体がシェイナに腕を振り上げて襲い掛かって来た
「ブラストナックル!」
アームドとヴァンプアップで強化された腕で目一杯殴りつける
技でも何でもない。力に任せた一撃
その一撃は敵を簡単に打ち砕いた
「うわ、試し打ちのつもりだったんだけど、すごい威力だ...」
目の前でただの岩と肉塊に変わり果てたストーンジャイアント
それを見て他のジャイアントたちは後ずさりしている
「硬牙連斬!」
硬いものを砕くのに特化した剣技
剣で切り付けるというより、殴りつけて砕く技だ
その攻撃が二体目のジャイアントの脚を砕いた
「ggggggggg!!」
悲鳴と思われる声をあげて倒れるジャイアント
そこに、リモットの矢が降り注いだ
「エクスプロージョンショット!」
爆撃のような弓術スキル
ジャイアントは当たったところから爆発し、粉々に砕け散った
残り一体、すでに戦意は喪失しているみたいで、逃げようとしていた
ここで逃がせばまたどこかで被害者が出るかもしれない
「ライトニングボルト!」
ハノラの声が響いた
光りの一撃は、まっすぐにジャイアントの逃げる背中に当たり、しびれさせた
「クラック!」
ジャイアントの周囲の空間が歪み、はじける
そして、ジャイアントは見るも無残に爆散した
到着してから約10分ほどで倒し切ってしまった
この戦闘でハノラは指示を出す必要がないほど優秀なのが分かった
「すごいよ、初めてなのにあそこまで動けるなんて思わなかった」
「わ、私も無我夢中で」
「お役に、たてましたでしょうか?」
「うんうん、すごかったよ~」
ミューはハノラに抱き着きながらなぜか頭をなでなでしていた
ハノラは恥ずかしがっているが、悪い気はしないようで、笑顔だった
リモットも、どうやらハノラを信頼できたようで
握手を交わしていた
これで、依頼は完了した
ストーンジャイアントの死体を回収すると、ギルドへ戻る
受付のアッチェマインは
「速すぎない?ほんとに倒したの?」
と聞いてきたが、死体を見て納得していた
「ま、なんにせよ、優秀な仲間が見つかってよかったね」
「これからも精進しなよ」
笑顔でそうシェイナの肩をポンポンと叩いた
明日にはここを旅立つ
また、来たいなぁ
野菜おいしいし
そんなことを考えながら、シェイナたちは宿へ帰った
仲間は4人がベストって思っちゃうのはドラクエのせい
増やす予定は少しあり