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6 世界を見て回ろう エルフの国4

 リモットのレンジャーとしての実力は確かなもので

明らかに見えないよう設置されている罠も解除し、マッピングという専用スキルで道にも迷わない

さらにすごいのが、隠れているゴブリンを正確に発見するのだ

レンジャー職は奴隷になる前から持っていたらしく、父親が死ぬまでにいろいろ教わったらしい


「すごいね、リモットさん」

「剣の腕はいまいちって言ってたけど、一撃でゴブリンを倒してるじゃない」


「あ、いえ、これは、スキルで殴っているみたいなもので」

「剣士としての動きとは程遠いです」


「そうなの?僕にはちょっとわからないや」

「ミューは分かるの?」


「うん、少しは」

「でも、すごくいい動きだと思うよ」

「ちゃんと鍛えたらもっと強くなれそう」


「そ、そうですか?」

「ありがとうございます」


罠を解除しながら話していると、洞窟の奥からゴブリンが数匹出てきた

ここのゴブリンは以前ユグドラシルで見たユグドラシルゴブリンよりも一回り小さいし弱い

下位魔法であるファイアボールを最小限に抑えてもぽっくり逝ってしまう

すでに十数体倒した

おかげで下位魔法を手に入れた

ストーンウォールという防御魔法だ

ちょっとした盾くらいにはなるので全員にかけておくことにした


そこからさらに奥に進むと50体ほどのゴブリンが待ち構えていた

少数で立ち向かっても勝ち目はないと見たのか、どうやら総勢力で来ているようだ

リモットのマッピングと気配感知の二重発動でもこの洞窟内のゴブリンはこれですべてだと告げている


「このゴブリンたちで最後みたいです」


「オッケー、ちょっと数が多いから戦力を増やすよ」

「サモン!」


召喚によって蜂が三体召喚された

蜂はシェイナを守るように飛んでいる

一体はただスリスリと懐き寄っていただけだが


「攻撃指令!」


その掛け声とともに蜂が動き始める

タクトの指示に従ってゴブリンを尻から飛び出る針で攻撃していく

ニードルランスという針を射出するスキルだ

みるみる数が半減していく


「召喚、なんてできるんですね」


「うん、彼?らには感謝してるよ」

「すごく懐いてくれてるし、可愛いよ」


「か、可愛い、ですか...」


「うん」

あれ?変なこと言ったかな?


そのとき、蜂の攻撃をすり抜けてゴブリンの数匹がこちらに襲い掛かってきた


「危ない!」

「防御指令!」

が、間に合わない


シュッという空気を斬る音とともに矢がゴブリンの急所に吸い込まれるように刺さる

倒れ込んだゴブリンにミューがとどめを刺した


「あ、ありがとう、助かったよ」


リモットの弓の腕は達人と言ってもいいくらい正確だった

寸分たがわず急所を貫いていく

さらに、スキルで矢をつがえる速度が尋常じゃない

まるで手が幾本も生えたかのようだ

そこで、矢が切れる

リモットは弓から剣に持ち替えると、襲ってくるゴブリンに切りつけた


「よし、このまま一気にいくよ!」

「召喚解除!」

蜂たちが帰還する

「トルネード!」


洞窟内に小型の竜巻が巻き起こる

タクトから放ったのでこの程度で済んでいるが

本来は洞窟ごとふっとばってしまう

竜巻に巻き込まれたゴブリンはなすすべなくばらばらになっていく

竜巻が吹き終わったそのあとには、ゴブリンの死体が連なっていた


「よし、これで依頼完了かな?」


「そうですね、もうこの辺りにゴブリンの気配は」

そう言いかけて口ごもるリモット

「ま、待ってください!」

「何かが近づいてきます!」

「これは、ゴブリン?の、反応ですが...」

「もっと、邪悪な」


邪悪、そう聞いてシェイナは思い出す

かつて、自分を飲み込んだモノを


「来ます!気を付けてください!」


ゴブリンの死体を踏み越え、そこに立ったのは小柄なゴブリンだった

ただ、その姿は異様だった

真っ黒に染まった体に、赤い目が光っている

手は異様に大きく膨れ上がり、凶悪な爪を携えていた


「ギギ」


少しうなったかと思うと、一瞬で姿が消えた


「ど、どこに!」

慌てて周囲を見渡すと、リモットの後ろに現れていた


「リモットさん!後ろ!」

ドスッ

声をかけるのが遅かった

いや、相手が早すぎた

リモットの胸元から黒い爪が飛び出ている


「あっ、カフッ」


大量に吐血するリモット

爪を引き抜いた傷口はぽっかりと穴を開け、向こう側の景色を移していた

どさりと倒れ込み、痙攣するリモット


速く治癒魔法をかけなければ死んでしまう


だが、黒いゴブリンがそれをさせてくれない

ミューは驚きですくんでいた


「く、サモン!」

もう一度蜂を呼び出す

「攻撃指令!」

「フレイム!」


蜂に攻撃で翻弄してもらうと、フレイムを放って牽制しつつ、リモットのもとまで駆け寄った


「ヒール!」

しかし、その程度の魔法では治癒しないほど傷が深い

自分の手持ちの魔法では助けれない

その時、残っていた世界樹の枝を思い出す

袋からそれを取り出すと、口に含み、噛んで柔らかくしてからリモットに口移しで飲ませた

何とか飲み込んでくれるリモット

胸の穴はみるみるふさがったが、意識はいまだに戻らない

そっとリモットを床に寝かせると


「ミュー、リモットさんをお願い!」

「ここは僕が引き留める!」


それですくんでいたミューの体が動いた


「う、うん!」

ミューはリモットの体を背負い、洞窟の出口へと走り出した

蜂たちが翻弄してくれているが、長くはもちそうにない

黒いゴブリンの攻撃が体をかすめ、すでにボロボロになっている


「撤退指令!」

蜂を自分の後ろに退避させると続けざまに

「ストーンエッジ!」

とがった岩が周囲に浮かび、黒いゴブリンに向かって飛んでいく

シェイナは黒いゴブリンを目でとらえて“みた”


 アンノウンゴブリン


闇にのまれたゴブリン

通常のゴブリンの数十倍のスピードを誇る

詳しくは不明


「やっぱり、闇か!」

「それが飲まれてしまった姿なのか!」


予想は当たっていた

自分が飲まれた時と似ていたから

記憶をたどる

闇にのまれた者は得てして身体能力が飛躍的に高まり、暴力性を増す

まさに、すべてを滅ぼさんと暴れまわるのだ


「く、ストーンエッジじゃ当たらない」

シェイナはタクトをしまうと、本気で魔法を撃つため、体制を整えた


そして、魔法を合成し始めた


「スパーク!トルネード!」

トルネードの魔法が電撃を帯びる

トルネードはタクトを通さずに発せられたことで、先ほどより巨大なものになった

洞窟内が崩壊し始めている

魔法が合成し終わった

「サンダーストーム!」


激しい雷撃が嵐とともに巻き起こる

黒いゴブリンは逃げる間もなく嵐に巻き込まれ、体を雷に貫かれ続け、絶命した

その威力たるや、大魔法に匹敵していた


「ふぅ、な、何とかなった」


「リモットさん!」


急いでミューの逃げた出口に向かう

出口付近でミューに追いついた


「よ、よかったよぉ~シェイナちゃ~ん」

ミューは涙を浮かべながら僕の無事を喜んでくれた


リモットは気を失っているが、一命はとりとめたようだ

そのままリモットを背負ってミューとともに帰路についた


早く、このことをギルドとサクラに報告しなきゃ!


その足は自然と急ぎ足になった


うっさぎーみみ~

うっさぎ~みみ~

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