アルラウネの旅
とある場所、ドライアドの森
一人のアルラウネの少女が歩いている
緑色の葉っぱのような髪に、真っ赤な花の髪飾り
植物の花びらのような動きやすいドレスにその身を包む
彼女はアルラウネのコープライ
魔王の忠臣アドライトの配下
アドライトの配下は、シャーズロット、バニエイラ、キムタム、コープライの四人しかいない
それゆえ四人は自ら四天王を自称する
わたくしはアルラウネのコープライであります
魔王様におっしゃられてドライアド族に同盟を申し込みにきたでございます
正直交渉は苦手だよ
わたくしはしゃべり方の使い方がおかしいですらしい
そんなことないと思っているだけど
ドライアドたちのいる森までやってきたのです
存在しません
どこいったのですよ?
以前はここにいました確かに
この目で見たから間違いないのですのことよ
どうしよう、いませんの情報を持って帰ってもアドライト様の四天王としての名折れです
こうなれば、仲間たちに頼むのだ
草花、木、植物全てが教えてくれるのね
スーーっと息を吸い、吐き出す
口からピンクの霧が出る
霧が木々と草花にかかると、それらはまるで動物のように動き出した
種族スキル“植物の躍動”だ
「どこ行ったか見てる?ドライアド族、どっちに?」
ドライアドとつながりの強い木々が矢印を指すかのように方向を示す
「そう、そっちの東ね、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げた
木々は手を振るように動くと、しばらくして動かなくなった
あっちか、なぜドライアド、いなくなったの?わからないことです
コープライは東へとひた進んだ
数日して、ヒュームの領地内に入った
入ってすぐのこと、コープライは狩り用の罠にかかったしまった
脚を挟む虎ばさみ
痛い、痛すぎるます
あまりの痛さに泣いたコープライ
自分の手では全く外れる気配がない
このままでは足が切断されてしまう
そのまま1時間ほどが過ぎ、どんどん食い込む虎ばさみ
脚を使って地面から栄養素を吸い上げるアルラウネ族からすれば
脚の切断となると死活問題だ
何度も何度も外そうともがく
そこに、猟師らしき若いヒュームの男がやって来た
男はコープライの姿に驚いて矢をつがえた
「う、うあぁあ」
その姿を見てわんわん泣き叫ぶコープライ
かつて、ヒュームに滅ぼされた自分の村を思い出す
あのとき、コープライはまだ子供だった
ヒュームの兵団になすすべなく焼かれ、死んでいく両親や仲間たち
その情景が脳裏に焼き付いている
ヒュームの男が自分を殺そうと迫る兵士に重なった
「あなたも、グス、わた、くしを、ヒック、殺そうとするです?」
泣きながら、嗚咽を混じらせながら、男に聞いた
男は動揺している
つがえていた矢を外し、コープライのもとへ来ると、虎ばさみを外した
「へ?」
とっさのことでコープライは固まった
「すまない、矢を向けたりして」
「え?そ、の...」
男はコープライの脚の傷に消毒液と傷薬を塗り、包帯を巻いた
コープライはおとなしくその様子を見る
「これで大丈夫だよ」
わけがわからなかった
コープライにとってヒュームはみな恐怖の対象でしかなかった
そのヒュームが自分を助けている
頭の中は疑問でいっぱいだった
「あ、あの、ありがとます」
「ます?」
「あ、いや、わたくし、しゃべるの、変にですので」
認めたくないが、認めた
ヒュームの男に嫌われたくない。なぜかそう思った
コープライの心臓に当たる機関が脈打つのを感じる
「そうなの」
「この辺りは罠がいっぱい仕掛けてあるから気を付けなよ」
「あ、待ってくださいませ」
自分でもなぜ引き留めたのか分からない
でも、男に行ってほしくなかった
「ん?どうしたの?」
「あ、歩けないのかい?」
「すぐそこに僕が住んでる小屋があるから一緒に行こう」
「ほら」
そういうと、背をこちらに向けてしゃがんだ
乗れということらしい
足を引きずりながら彼の背中におぶさる
コープライは彼に小屋まで運ばれた
「よし、着いた」
「ねぇきみ、おなかすいてない?」
首を振って否定する
「そっか」
「あ、僕はマーロー、君は?」
「コープライ」
「そう、コープライっていうの」
「君みたいな魔族があんなとこで何してたの?」
「ここらはヒュームの領土だから見つかったら危ないよ?」
「言え、ないます」
「そう、それは、僕たちヒュームに何か悪いことするため?」
「違う!です!」
はっきりと否定した
嫌われたくない
「そか、じゃぁ僕からはもう何も聞かない」
「傷が治るまでいていいからね」
正直、大地から栄養素を吸い取れば傷の治りは早い
でも、やらなかった
ちょっとでも長くマーローといたいから
数日すると、コープライは歩けるくらいに回復した
マーローは狩人だった
一人でここに暮らしているらしい
午前中は狩りに行っている
そんなマーローを手伝いたく、コープライは家の家事をすべてこなした
炊事、洗濯、掃除、これでも村にいた頃は亡くなった母親から様々なことを教えてもらっていた
マーローが家に帰り着くころには料理ができ、部屋もピカピカの状態だった
「うわ!すごいね」
「君がやってくれたの?」
「う、うん」
頬を赤く染め、コープライはうなずいた
そんな二人が恋に落ちるのに時間はかからなかった
しかし、コープライには任がある
ドライアドたちと同盟を結ぶという任が
怪我が完全に癒えた頃、コープライはマーローに切り出した
「わたくし、行かなきゃダメ」
「マーロー今までありがとう」
突如、コープライにつげられるマーロー
「どうしたの?急に」
「もしかして、前に言ってた目的のため?」
「うん」
「...僕も、一緒に行くよ」
「え?」
「僕も君と一緒に行くよコープライ」
コープライは困惑した
自分が行く場所はヒュームにとって危険な場所だから
「ダメ、危ないです」
「マーロー、行けば死んじゃうかもです」
「大丈夫、僕、これでも強いからね」
その言葉は嘘ではない
単独でこの周辺最強の魔物を狩るくらいの実力はある
だが、魔法や幻術を使う高位精霊ドライアドには負けるだろう
「危ない、マーロー死ぬの悲しいのです、です」
「いや、ついていくよ」
「危なっかしい君を守るのは僕の使命になった」
「だから一緒に行くよ」
コープライはうれしかった
だから、マーローは命を懸けても守ると決めた
コープライとマーロー
種族を超えた恋人たちは旅に出た
この話、続けます?
気が向いたら続けよっかな?