6 世界を見て回ろう エルフの国2
魔王はまずエルフの国へ向かってほしいと言った
ユグドラシオンではなく、ルーノリアという純粋なエルフのみの国だ
その国は、混血や、亜種型のダークエルフの侵入を許さず、傲慢な性格のものが多い
それでも、以前よりだいぶましになった
ダークエルフの国、ソリュドとにらみ合っていたルーノリアは王女を人質にソリュドを攻め、滅ぼした
そのとき、魔王の力添えによって奴隷にされそうになっていたダークエルフたちは救助され
処刑されようとしていた王女も保護されたわけだが
それ以来エルフの国も魔王の同盟国として手を組んでいる。表向きはだが
その実、いつかは魔王に復讐しようとたくらんでいるはず、とのこと
正直、僕はそう言うごたごたは苦手だ
ユグドラシオンのエルフはみんな優しかった
でも、本来のエルフは高慢なものが多いらしいし
あぁあ、行きたくないなぁ
そんなことを思っていると、魔王が、エルフは妖精族には敬意を払うから大丈夫と言ってきた
なんでも、同じ高潔な存在として尊敬しているらしい
ただ、獣人族やヒュームなど、亜人種はかなり見下しているらしいので、ミューは守らないといけない
そんなこんなで飛んでルーノリア
国にはあっさり入れた(羽はしまってある)
おそらく、妖精族だからだろう
エルフたちは大手を振って歓迎してくれたが、ミューのことはまるで道端のごみのように見ていた
待遇も明らかに違う
料理は僕が豪華な野菜類(この体は肉が食べれない)なのに対し
ミューはくず肉を煮込んだだけのものだった
こっそり僕の野菜をあげたけど、ミューは野菜が苦手だったのを忘れていた
ご飯を食べ終わったと、さっそくエルフの国のギルドへ向かった
ギルドの受付にはエルフとヒュームがいる
エルフの方にはエルフの冒険者、ヒュームの方にはヒュームやほんの少しの亜人が並んでいる
ルーノリアのギルドはエルフとほかの人種を明確に分けているらしい
その方がトラブルが少ないからだ
いまだに多種族を見下すものはたくさんいる
それでも、少しずつ、少しずつ、市民の方には受け入れられてきている
後で聞いた話だが、エルフの受付嬢チェラさんは外で生まれたエルフらしい
そのため、多種族にも理解があるそうだ
例によって僕はエルフたちに歓迎されている
いや、過ごしやすいっちゃ過ごしやすいんだけどね
その、ミューに向けるやばい目をやめてよ
そろそろキレるよ?
そんなオーラを感じ取ったのか、ちょっとたじろぐエルフたちだった
さて、まずは依頼を見よう
いい依頼があったら受けて、そのあと宿探しかな
で、時間に余裕があったら依頼をこなそう
受付嬢の前に立つ
もちろん、ヒュームの方だ
エルフたちは、なかなか見れない妖精族である僕を自分たちの列に並ばせたかったようだけど...
うっとうしいからこっちに来た
「お待たせいたしました~、冒険者ギルド、ルーノリア支部へようこそ~です」
「わたくし~、受付嬢のリエルです~、よろしくです~」
フワッとした感じの受付嬢リエルに依頼を受けたい旨を伝える
「はい~、それではそちらの~、ボードをご覧ください~です」
「右から~、Fランク~、左に行くにつれて~、ランクが上がります~です」
「あなたは~、Fランクですので~、一番左の~、ボードから~、選んでください~です」
「はい」
Fランクのボードを見ると、薬草採集や、建物の修理、木の伐採など、危険性の低い依頼ばかりがあった
まずはコツコツやってランクを上げるしかないか
「ミュー、どれがいいと思う?」
「ん~と...」
「これ!」
「えーっと、やくそう、さいしゅう?」
「薬になる葉っぱを探すんだよね?」
「そうそう、じゃ、それにしよっか」
ボードから紙をはがすと、受付に持っていった
依頼を受注し、街へと向かう
街は、いい意味で洗練されており、そこに木々がうまい具合に重なって、美しい景観になっていた
しばらく景色を楽しみながらゆっくり歩いていると、宿の文字が見えた
中に入ると、きれいに掃除がいきわたっており
エルフ含め、複数の冒険者が酒を飲んだり料理をつついたりしている
下の階が定食屋で、その上、二階がが宿泊施設になっているらしい
さっそく尋ねてみると、目の細い、優し気なエルフの女性が迎えてくれた
「まぁ、妖精さんがうちに?それに、可愛らしい獣人族のお嬢ちゃんまで」
年上のお姉さんの包容力がすごい
身をゆだねてしまいそうになる
名前は、ティモリアさんというらしい
「あの、宿に泊まりたいんですが、二人、泊まれますか?」
「えぇ、大丈夫よ、妖精さんがうちに泊まってくれるなんて、いいことがありそうだわぁ」
ニコニコと接客するティモリア
大人な落ち着いた雰囲気、周りにいる冒険者もほっこりしているようだ
「じゃぁ、二人で一部屋お願いします」
「はい、じゃぁ一人分一晩銅貨2枚ね食事付きなら3枚よ」
この世界のお金事情は魔王に教えてもらった
銅貨10枚で銀貨一枚、銀貨20枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚らしい
まぁ、白金貨なんてめったなことでは使わないので
魔王は生活資金として、白金貨50枚、金貨100枚、銀貨200枚、銅貨500枚をくれた(多い多い...)
空間収納袋にそれらを入れている
空間収納袋、異空間にモノを収納できるマジックアイテムで、家一軒入れることもできるそうだ
とりあえず5日分、そこから、銅貨30枚をティモリアに渡す
「はい、5日分ね」
「二階の奥の部屋を使ってちょうだい」
「荷物は鍵付きの収納棚があるからそこにどうぞ」
二階に行くと、廊下は木のいい香りに包まれている
元ワームとしてはちょっと食べてみtなんでもない
部屋に入ると、二人でも広いベッドと、鍵付きの棚、机、その上に飾られた一輪の花
そして、窓からは優しい陽光が差し込んでいる
ベッドはふかふか、ミューがダイブしている
「すっごいふかふかだよシェイナちゃん!」
「うん、ふかふかだ、気持ちいいね」
「あー、このまま寝ちゃいそう」
「だめだよ、これから薬草取りに行くんだから」
「うーんちょっとだけ~」
「だめだってば、日が暮れたら危ないから、ほら、行くよ」
ミューを抱っこ、はできなかったので、手を引いて下に降りた
「あら、お出かけ?」
ティモリアさんが話しかけてきた
「はい、これから薬草をとりに行こうと思ってます」
「あ、この辺りに薬草が取れそうなところってありますか?」
「う~ん、そうねぇ」
「街を出て東に行ったところに、薬草の群生地があるわ」
「私も料理に使うハーブをとりに行ったりしているのよ」
「危険な魔物もいないから安心よ」
「わかりました、ありがとうございます」
「いいえ~、じゃぁ、私はお料理作って待ってるわね」
「やったー!」
ミューは喜んでいる
それを見てティモリアさんもニコニコしていた
街を出て、10分ほど歩くと、本当にたくさんの薬草が生えた場所があった
依頼にあったヒール草と毒消し草、それと、ティモリアさんへのお土産にハーブも摘んだ
見たことのない薬草もあったので、それは食べてみる
すると、魔法を覚えれた
“ウォーム” 体を温める魔法だそうだ
雪山へ行くことがあれば使ってみよう
あっさりと依頼を終えた僕たちは、街へと戻った
ギルドにより、依頼の完了報告と、薬草の受け渡しを終えると、報酬として、銅貨10枚をもらった
本当は7枚だったけど、多めにとってきたのでその分上乗せしてくれた
たぶんだけど、僕が妖精族なのも幸いしているのかもしれない
宿屋に戻ると、ティモリアさんが料理とともに出迎えてくれた
植物以外食べれない僕にはサラダと野菜のスープを出してくれた
ミューには鶏肉を使った香草焼きと、同じく野菜のスープ
とてもおいしそうだ
僕も、肉は食べたい、でも、この体は一切肉を受け付けてくれなかった
食べると猛烈な吐き気に襲われてしまう
体自体が完全に肉を拒絶するのだ
「いただきます」
「いただきま~す」
二人はモリモリと食べ進めた
ドレッシングがうまい
チーズっぽい味?酸味と甘みが絶妙な感じ
ミューもおいしそうにぱくついている
「あ、そうだ、ティモリアさん」
「はい、どうしました?」
「これを」
僕は取ってきた香草を渡した
「まぁ!ちょうどきれかかっていたんです」
「ありがとうございますね」
「おいくらですか?」
「あ、いいですよ」
「ついでに採ってきただけなので」
「まぁ、それは悪いです」
「あ、じゃぁこうしましょう」
「料理代はいただきませんわ」
「この香草はそれだけの値はありますからね」
「いいんですか?」
「えぇ、こちらも助かりましたし」
「ありがとうございます、じゃぁお言葉に甘えさせていただきますね」
ティモリアさんは食事代銅貨10枚を返してくれた
実質買取?みたいな気がするけど好意には甘えたい
「あなたがここに来てからすぐにうわさが広がったみたいでね」
「お客さんがすごいの」
「やっぱり妖精さんは幸運を呼び込んでくれるのね」
言われてみれば、食事をしている人が増えていた
そのみんなが僕を見ている
は、恥ずかしいんだけど...
僕とミューはすぐ部屋へと引っ込んだ
後ろからあぁ~と残念そうな声が聞こえたが、気にしない
そのままこの日は就寝した
明日の朝またギルドに行って、依頼を受けなきゃな
冒険は、思ったより楽しい、かも
ちゃんとした冒険を書きたいです
冒険は探探求求ですからね
未知を探して旅をするのが冒険ですよこれ