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6 世界を見て回ろう エルフの国1

 シェイナが魔王国デュミノイテへ帰り着くと、魔王国はあわただしくなっていた

ヒュームの国、鬼人の国と同盟を組んだらしかった

その同盟により、魔王国にも冒険者ギルドができることとなった

今まで魔族が冒険者になったことはない。むしろ冒険者に狩られる側だったからだ


 それでも、冒険者ギルドを魔王国に設備したのには理由がある

一つは大いなる闇を探すため

もう一つは世界に魔族の友好を示すため


 冒険者ギルドにはヒュームの受付、ヒュームのギルドマスターが派遣された

受付嬢は最初こそ魔族に恐怖していたものの、接しているうちに気のいい者ばかりとわかり

すぐに打ち解けた



 シェイナが魔王城に戻ると、ミューが先に帰っていた

そのミューの姿に驚く

進化して一回り大きくなり、美しくなっていたからだ


「えと、ミュー、さん?」


「あ、シェイナちゃん、お帰り~」

「見てみて~、進化したんだよ」


くるりと回るミュー

ふわりと甘い臭いが鼻腔をついた


かわいい、もふりたい

シェイナは衝動を抑えることなくその身をゆだねた


「うおおおおおおお!モフモフモフモフ」

尻尾の先から頭のてっぺんまで堪能堪能

はたから見ると蝶のような昆虫に捕食されているように見える


「うー、頭に手が届かない」

「ナデナデできない!」


ミューは少し困った顔をしていたが、撫でられるのは嫌いじゃない

そっと頭を差し出した


「ナデナデナデナデナデナデ...」


たっぷり堪能したシェイナはほっこりしている


「そうだ、シェイナちゃん」

「魔王様が呼んでるよ」

「一緒に行こう」


「うん」


連れ立って魔王のもとへ行く

部屋で待っていた魔王サクラ

開口一番突拍子もないことを言い始めた


「守護者様、勇者様、あなた方にはこれから冒険者として旅に出てもらおうと思います!」


「へ?」

「え?」


二人同時にポカンとしている


「今大いなる闇は鳴りを潜めましたが、必ず世界のどこかで動いているはずです」


大いなる闇

シェイナの記憶にある自分を覆った謎の敵

飲み込まれ、意識を吸い取られ、体を奪われる前世の自分を思い出す

あの時は恐怖しかなかった

友人、家族、大切なものをすべて奪われて、一人で戦い続けたあの時

もう、あの時のように失いたくない

元、勇者として

現、守護者として


「僕たちにそれを見つけてほしいんですね?」


「そうです、危険なこともあるかもしれませんが、私もできうる限りのことをします」

「ともに行くことはできませんが...」


「わかりました、僕たちも魔王様のおかげでかなり強くなることができました」

「自分たちの身は自分たちで守れるくらいに」

ミューもコクコクうなずいている


「ありがとうございます」

「守護者様、勇者様」


「ああ、それと、僕たちのこと、名前で呼んでもらえませんか?」

「なんだか様付されると変な感じで」


「えぇ、そうしますね、シェイナさん、ミューさん」

「では、私のこともサクラと呼んでください」

「私たちはもう、お友達ですもの」


「うん、サクラ...さん」


「呼び捨てでお願いします」

「お友達でしょ?」


「サクラ」


「シェイナ、ミュー」

「素晴らしいです、あぁ、愛があふれてきます」


ちょっと危ないことを言うサクラを後にし、その足でギルドへと向かった


 すでにあった使われていなかった建物を改装したギルド

中はきれいに掃除されており、数人のヒュームがせわしなく動いていた

そこにはすでに、依頼やら冒険者の登録やらで魔族や亜人種がごった返していたからだ


しばらくしてようやく自分たちの番がくる


「お待たせしました!冒険者ギルドへようこそ!」

「わたくし、受付担当のマリア・ソリアです」

「本日はどういったご用件でしょう?」


元気よく挨拶するヒュームのマリア

その笑顔はまるで太陽の輝きだった


「あ、僕たち、冒険者として登録したいんですが」


「はい、登録ですね」

「ではこちらの用紙にまず記入をお願いいたします」


渡された紙には名前を書く欄と、注意事項が書いてあった

スラスラと名前を書き終えると、マリアに渡す


「えーっと、あ!シェイナさんにミューさんですね」

「お待ちしてました!」

「ギルド長からお話があるそうですのでこちらにどうぞ!」

「登録はこちらで済ませておきますね!」

「お話が終わりましたらもう一度こちらにお越しください!」


ギルド長の話?何だろう?


ミューもクエスチョンが浮いているのがわかる


案内されたのは二階にあるギルド長の部屋

そこに、歴戦と言った風貌の男が立っている


「お、来たか」

「まずは自己紹介を」

「俺はこのギルドを任された元冒険者のボルドー・シャルタスだ」


「あ、初めまして、僕はシェイナです」


「私はミューロラル!ミューって呼んでね」


「よろしく頼む」

握手を交わした

「さて、君たちを呼んだのは、勇者と守護者だからだ」


少し、そんな気がしていた


「魔王様から話は聞いた」

「君たちには冒険者として働いてもらいながら、大いなる闇の調査もしてもらいたい」

「一応こちらでも調べて入るのだが、足取りがつかめん」

「だが、ヒュームの国に何かしていたのは分かる」

「恐らくだが、行方不明の宰相ソロストイ」

「やつが何らかのカギを握っていると思う」


「宰相?ですか?」

「すいません、僕もミューも故郷を出てそんなに経っていないもので」

「いまいち世界のことがわかってないんです」

「ただ、大いなる闇は、倒さなきゃいけない」

「それだけははっきりとわかっています」


「では世界を知るのにも役に立つぞ」

「冒険者ギルドは世界各国にあるからな」

「登録すればその各国にあるギルドで依頼を受けれるようになる」

「当面はギルドに寄せられた依頼を受けてカモフラージュするんだ」

「守護者と勇者だということを知られるな」


「?」

「どうして知られちゃいけないんですか?」


「ややこしいことになるからな」

「宗教がらみやら、君たちのことを利用しようとする輩やら」


「あぁ、それは、なんかややこしそうですね」


「だろ?」

「まぁ、君たちのような子供がそうだとわかるものはいないだろう」

「だが、用心するに越したことはない」

「闇に知られるというのも面倒だしな」


「そうですね、わかりました」


ミューはまだわかっていないようだけど、後でしっかり教えとこう


「話は終わりだ」

「時間をとらせてすまなかったな」

「冒険、大いに楽しんでくれ」


「はい!ありがとうございました!」


話を終え、マリアのもとへ戻ると、ギルドカードが出来上がっていた

どこで撮ったのか、なぜか顔写真のようなものがついている

まるで免許証のようなカードだ


「こちらがギルドカードでして、これを提示していただくことで依頼を受けれるようになります」

「それと、こちらに書いてあるランクなのですが」

角についてあるFの文字を指さす

恐らく、英字ではなくこの世界の文字で書かれているのだろうが

僕には翻訳されて見えた


「このランクを上げることでより難しい依頼を受けれるようになります」

「ランクはある程度の依頼をこなし、貢献することでアップします」

「頑張ってくださいね!」


おそらく、今日何度も同じ説明をしているだろう

それでも元気よく、大きな声で対応しているマリアに感心した


かくして僕たちは冒険者になった

やっと、僕たちの冒険が始まるというわけだ

長かった?

しかたないよ、魔王との出会いがイレギュラーだもん


だって信じれるかい?

友好的な魔王なんて

世界平和を願う魔王なんて


第一部完、みたいな?

やっと本格的な冒険させます

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