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奪還 白の鬼姫

 ハクラ姫が攫われてから数時間

魔王サクラはその身を鎧に包んでいた

背後にはアドライト、ゴート、ペーヨードを連れている

魔王の配下で単純な力においてトップに位置する三人だ


 魔王の顔は憤怒に満ちている

そのびりびりとした空気は配下の三人を震え上がらせるほどだ


こんなに怒りをあらわにした魔王様見たことない

私の知らない魔王様、あぁ、なんて美しいのでしょう


アドライトはうっとりと魔王を見つめる


「皆さん、行きますよ」


静かだが、今刺激すれば一気に爆発するだろう

そんな危うさが読み取れた


魔王が闇の扉を開く

目標はヒュームの国、グランドルの目の前

魔王はたった四人で国を落とそうとしていた


闇の扉を通ると

すぐに魔法を放った

究極の闇魔法、クロスエンド

その一撃で、正面にあった街を取り囲む頑丈な壁は崩れ去った

逃げ惑う市民

そんな市民には目もくれず、真っ先に城へと向かった


向かってくる兵士を薙ぎ払う

怒りに満ち溢れながらも、冷静に、殺さぬように

どこまでも優しい魔王は、ヒュームですら救いたいと思っているから...


城にたどり着くと、巨人二体が城門を守っていた

ゴーレム

魔法で作られた人形だ


それが、魔王を捕捉する

巨大な剣を背中から抜き、手に構えると、そのまま振り下ろした

魔王に直撃

とはいかず、ごとが左手だけで受け止めていた

竜人族の彼は腕力だけでも全種族の中で最も優れている

もう片方の拳で剣を叩き折ると、自由になった左手で掌手を撃ち込んだ

一体目のゴーレムはそれだけで粉々に砕け散った

二体目、アドライトが鞭で拘束している

その鞭を引く

二体目もバラバラになり、壊れた


あっという間にゴーレムを突破されたことでヒューム達に焦りが見える


中からわらわらとアリのように出てくる兵士たち


「ここは私が」

前に出るペーヨード


「戦闘は得意ではないんですがね」

そういいながら魔法を発動

簡易式移動魔法、ムーブ

向かってきていた兵たちは一気に城の堀へと落ちた


「兵は殺しませんよ」

「あなた方もあんな愚王ではなく我らが敬愛する魔王様のもとで働きませんか?」


「ペーヨード、引き抜きはあとにしろ」

ゴートが諫める


 魔王はそのまま城内へと進む

そこにいたのはグランドルで名をとどろかせていた騎士団だった

騎士長のカドラ・ハイデントは魔王の大きすぎる力と対峙し、少ししり込みした

いままで戦ったことのない強大な敵

それに立ち向かわなければならない

王を守るが騎士の務め

あんな、愚王でもだ

カドラは内心では早く王子であるデュルクに仕えたいと思っていた

かの王子こそ、最も自分が仕えるのにふさわしい王になると信じているから


いつか王子に仕えることを夢見ながら、その槍を魔王へ突き出した

しかし、槍は刺さることなく魔王の前でグニャグニャと曲がった

魔王のスキルの一つ、“拒絶”

敵意ある攻撃を通さない無敵の盾


どれだけ槍でつつかれようが、すべての槍をはじき、その進撃を止めれるものはいなかった

騎士達は完全に戦意を喪失する


進むにつれて兵は強くなる

強くはなっているのだが、魔王の力の前にはどれも有象無象

成すすべなく蹂躙されていく


そのさなか、ようやく王のもとへと通達が行く


「なんじゃと!?魔王が攻めてきた!?」


「はい、どうやら逆鱗に触れつぃまったみたいですねぇ」

宰相、ソロストイはニヤリと笑う


「何を笑っておる!」

「すぐに騎士を出さんか!」


「あぁ、彼らなら全滅しましたよ」


「はぁ!?」


「な、ならばボルドーを!」

王国で最強と呼ばれる男の名を呼ぶ


「あぁ、彼ならアークロの復興のために街にとどまっています」

「呼びましょうか?呼んでいる間にこの城は落とされるでしょうが」


「ぐぬぬ、ならばお前が行け!」

「わしを守れ!」

「ほれ、奴隷ども!貴様らも行かんか!」


呪いの首輪のスイッチに手をかけるダーストン王

それを見て奴隷たちは震えながら魔王のもとへと向かった



「あぁ、醜い」


「なんじゃと!?」

「今何と言った!ソロストイ!」


「もう、お前に価値はない」

「魔王に縊り殺されるのを待っていろ」


そう、ソロストイが言葉を発すると、ダーストン王は動けなくなった

指一本動かない

呼吸すらままならない


「さて、時間稼ぎは、ふむ、まだ足りぬか」

「まぁいい、戻るか」


ソロストイは球体を掲げる

その球体がソロストイを飲み込み、球体ごと消えた


魔王が王のもとにたどり着くと、そこには窒息し、苦しむ王の姿と

おびえる奴隷たちがいた

部屋の隅には死なない程度に電流を流され続け、悲鳴を上げるマーメイドたち

そして、幾度も殴られ、顔ははれ上がり、体はあざと火傷、手足の詰めをすべてはがされ

瀕死で息も絶え絶えのハクラ姫が転がっていた

ダーストン王は他の奴隷たちに拷問させ、泣き叫ぶハクラ姫を見て笑っていたのだ


もはや、魔王を止める者はいない

魔王はダーストン王を掴むと、いままで誰にも見せたことないほど冷たい目で見つめる


「ぐ、ひゅ、た、たひゅけ」


呼吸を最小限まで規制され、苦しむダーストン


「あなたは、私の大切なものをうばい、壊そうとしました」

「覚悟は、できていますよね?」

うっすらと笑っている

そこには、今まで優しく、愛に満ち溢れていた笑顔はない

魔王はゆっくりと手をダーストンにかざすと

魔法を発動した

闇魔法、エターナルペイン

死が訪れようともその苦痛から逃れることはできない魔法

無慈悲な魔法がダーストンを包み込み、消し去った


魔王は全ての奴隷、マーメイドに治癒をかけ、呪いの首輪を解除した

そして、ハクラ姫にヒーリングを施す

みるみる傷は癒え、そのまま眠りにつくハクラ姫

その自分より小さな体を抱きしめ、羽織っていたマントをかぶせ、国へと連れ帰った

キガシマで待つ、鬼人族の民たちのもとへ


数日後、世界中にヒュームの国が魔王によって滅ぼされたことが知れ渡った

被害者は、魔王と宰相、そう伝えられている

ヒュームの国はすぐに王子を王へと就任させた


就任した王子はすぐにキガシマへ謝罪と同盟を申し入れた

誠意のため、国から多額の寄付金を送り、それを応じ自らがハクラ姫のもとへと運んだ


ハクラ姫は後遺症なく回復している

傷もきれいに癒え、以前の美貌を取り戻していた


そのハクラ姫の前に、深々と土下座をする現王、デュルクがいる


「もういいぞ、デュルク王よ」

「わらわももう思い出したくない」

「そうやって頭まで下げてくれたのだ」

「わらわは気にせんぞ」


「いえ、そう言うわけには!」

「姫様さえよろしければ、我が首で我が国民を許してほしい!」

「王子の身で王を止められなかった私の不甲斐ない首一つで...」

「許されるとは、思わない」

「だが、なにとぞ、なにとぞ!」


「だから、許すと言っておる」

「わらわもくどい男は好かん」

「こうして同盟もなされたのじゃ」

「それで、いいではないか」


「しかし、それでは私の気が」


「くどいのぉ...」

「なら、そちらの国の特産をよこすのじゃ」

「たしか、桃とか言ったかの」


「は、はい、うちの領土でとれる果実ですね」


「それを、そうじゃの、優先的にこちらに回してくれ」

「わらわはあれが大好物じゃ」


それにより、有効と同盟はなされた

と同時に、魔族とキガシマ、そしてヒュームの国は同盟をなした

その出来事は世界に衝撃を与える

そして、一つの声明がヒュームの王と魔王から発せられる


「闇は、動き出した」

「今こそ全種族よ、一つになれ!」

「かつて、世界を救った勇者と!」

「世界に希望を託した妖精女王の願いとともに!」





大いなる闇、そのリーダーであるソロストイは世界の外側から見る

その配下であり、友である者たちとともに

彼らの目的はただ一つ

世界を壊し、新たに創造すること


あれ?主人公たちいねぇ

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